当事者が考える保険適用の意義【脳脊髄液減少症】

先週末から脳脊髄液減少症の治療法への保険適用に関する話題がニュースになっています。折角なので当事者の目線から、このニュースについて考えてみたいと思います。
 

SNS上でも話題になっており、当事者の期待の声は大きく、また、脳脊髄液減少症に縁のない方への認識も広がっているようです。ただ、過去には保険適用が見送られたこともあるので、私はあまり期待しないようにしています。
 

これまでタイミングが合えば関連学会や勉強会に参加してきました。先週、札幌市内で開催された日本脳神経外科学会も気になっていましたが、時間、距離、費用的に見送りました。その学会にて、厚労省の研究班より「来春、脳脊髄液減少症の治療法の保険適用を目指している」という言及があり、そこでの発言が今回のニュースの背景となっています。
 

私は保険適用の意義を次のように考えます。
 

・脳脊髄液減少症の存在を国が認めた
・ブラッドパッチ治療が有効であると国が認めた
・診断及び治療を行える病院や医師が増える
・検査及び治療が自費治療から保険治療となる
 

国が脳脊髄液減少症とその治療を認めるのは画期的で、交通事故起因の外傷性で脳脊髄液減少症を発症した人には朗報になるでしょう。
 

三回目のブラッドパッチを受ける前日に行った画像診断のために脊髄へ造影剤を注入している様子
三回目のブラッドパッチを受ける前日に行った画像診断のために脊髄へ造影剤を注入している様子

 

脳脊髄液減少症とは?
何らかの要因により脳脊髄から髄液が漏出し、慢性的な疼痛、目まいや吐き気、しびれ、高次脳機能障害などを様々な諸症状を引き起こす病気というか、脊髄の物理的な問題。10年を越えて治療を続け、諸症状のため社会活動ができず自宅で寝たきりの患者も多数。外傷性と突発性の両方で発症する可能性があり、患者数は数十万人ともいわれるが正確な数は不明。交通事故でむち打ち症を発症した一部の患者も該当し、体育の授業や運動で激しい衝撃を受けたり、出産でいきみ過ぎた影響により脊髄に穴が開き発症する例もある。発見・治療が遅れるほど治療を受けても回復は難しくなるとされる。また外見上、病気や怪我と分かる症状や状態が見えないため、周囲の理解を得られず苦労する患者も多数いる。

 

脳脊髄液減少症の歴史をざっくり振り返ると次の通りです。
 

・2000年頃
平塚共済病院篠永医師により脳脊髄液減少症の症状や治療法の模索がはじまる

・2007年
厚生労働科学研究費補助金「脳脊髄液減少症の診断・治療法の確立に関する研究」開始

・2010年
上記研究より脳脊髄液減少症(病名や検査法及び治療法)がないこともないので、先進医療にしてもいいのでは?と厚労省へ報告(経緯を詳しく書くと長くなるので割愛)

・2012年
先進医療が承認。現在全国四十数カ所の病院にて先進医療としてブラッドパッチ治療が保険適用(画像診断で漏出が認められた場合のみ)

・2014年
保険適用延期

 

リンク先に、先進医療を行っている病院一覧があります。
厚生労働省 先進医療を実施している医療機関の一覧
番号:49
先進医療技術名:硬膜外自家血注入療法参照
 

ブラッドパッチとは?
自らの血液を脊髄へ注入し、穴が開いている箇所へ血液でコーティングし、穴が塞がるのを期待する治療法。治療自体は正味20-30分。その後、注入した血液が安定するまで数日~一月程度の安静が必要。現時点では治療=完治に至っておらず、治療回数が多過ぎても弊害があるとされ、最近は上限4回が目途となっている。

 

脳脊髄液減少症の研究が始まった当初から最近まで、低髄液圧症候群(病気のメカニズムの捉え方で病名が変わる)とも呼ばれ、脳脊髄液減少症の存在そのものを疑問視する声は医学界に多数あり、現在も賛否両論あります。実際、2007年に私も目黒区内にある医大の麻酔科にて、「脳脊髄液減少症という病気はない」と言われ、治療を拒否されました。二度ブラッドパッチ治療を受け、医師の紹介状を持参してもそのような状況でした。
 

また、画像上漏出が見られない場合にも、ブラッドパッチ治療を受け、症状が緩和する患者も多数います。その際、治療はすべて自己負担となります。費用は、病院、検査方法や治療内容、入院期間で異なりますが、ざっくり30万円~です。
 

脳脊髄液減少症は、早目に治療を受けるほど完治また改善の確率が高くなるとされています。保険適用は当事者の治療もさることながら、認知の向上により将来の当事者の早期発見・早期治療に繋がります。なんだかんだと来春よい便りがあったらいいなと思ってしまいます。
 

記事をシェア

この記事を書いた人

重光喬之

10年来、脳脊髄液減少症と向き合い、日本一元気な脳脊髄液減少症者として生きていこうと全力疾走をしてきたが、ここ最近の疼痛の悪化で二番手でもいいかなと思い始める。言葉と写真で、私のテーマを社会へ発信したいと思った矢先、plus-handicapのライターへ潜り込むことに成功。記事は、当事者目線での脳脊髄液減少症と、社会起業の対象である知的・発達障害児の育成現場での相互の学び(両育)、可能性や課題について取り上げる。趣味は、写真と蕎麦打ち。クラブミュージックをこよなく愛す。