「One for all, All for one」の精神があれば、障害者雇用ってうまくいくんじゃないか?

「One for all, All for one」
 

この言葉をご存知の方は多いかもしれませんが、元々はヨーロッパに古くからある言い伝えであり、ラグビーのチームプレーの精神として有名になりました。訳すれば「一人はみんなのために、みんなは一人のために」。日本では、スクールウォーズやスラムダンク、ルーキーズといった「スポ根」系の漫画やドラマで用いられており、大きな感動を呼んでいます。ただ、誰しもが「納得しやすい」組織論ではあるものの、企業組織では実現していると言いづらいのではないでしょうか。
 

photo by EJ Hersom
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「One for all」と「All for one」は共存していない?

 

企業という組織に置き換えて「One for all, All for one」を考えると、「One for all」は会社やチームのために自分が貢献できることを考え、実行すること。「All for one」は会社やチームがメンバー(個人)に対して貢献できることを考え、実行することです。
 

前者の「One for all」という精神は、多くの企業に当たり前に浸透しているように見受けられます。今までお会いした経営者の方々を見ていても間違いないと感じます。普段、人事コンサルタントとしてお客様の会社の社員の方々を研修することがありますが、「この会社で何ができるのか、どのように役立てるのかを考えましょう」と話すと、たくさんの回答が出てきます。雇用する側の会社、雇用される側の従業員、それぞれにとって当たり前の常識として捉えられています。
 

一方、「All for one」はどうでしょうか。「◯◯(個人)に対して、弊社ではこのように貢献していきたい」という内容の話を就職・採用の現場や組織作りの現場において耳にすることはなかなかありません。まったくないという訳ではありませんが、「One for all」と比較すると非常に少ない。多くの会社組織は「One for all」ばかりが先行して「All for one」を意識することが薄いのではないでしょうか。
 

「All for one」は必要か?

 

「All for one」という精神が重要か否か。個人のために会社(チーム)ができることを積極的に考え、実行することは重要でしょうか。この問いかけには様々な回答が出てくると思います。各個人が100%の成果を出せる保証がなければ不必要、重要ではない考えることもあるでしょうし、会社・チームとして徹底的にひとりひとりをサポートしていこうという結論にたどりつくこともあるでしょう。
 

上記の2つの回答で言えば「できないこと=コストである」と「できないこと=成長ののびしろ」というどちらの前提に立っているかによって、回答が割れます。そして、会社の規模や理念によって大きく状況が変わってくるため、良い悪いを問えるものではありません。ただ、働く人にとって、どちらが良いのか。どちらを選択するほうが組織として成長を遂げられるのか。企業はスタンスを明確にする必要はあるように感じます。
 

ただ「All for one」の精神は障害者雇用を行っている企業すべてにとって必要であると考えます。そもそも、企業にとって障害者社員は「やむを得ない理由で仕事の一部あるいは全体に配慮が必要な人」です。健常者社員と比較すれば、同じ成果、同じ生産性を求めることは難しい場合がほとんどです。
 

「できないことを念頭に最低限度の仕事を任せる」という方針と「チームがフォローすることを前提に仕事を割り振っていく」という方針。人事の現場で障害者雇用の話題になると、この2つの方針のどちらかを選択していることがほとんどだなと感じます(大きく分けて)。私の聞く限りだと、障害者雇用の組織作りや現場での苦労話をするのは前者の選択をした企業に多い印象があります。チームに負荷をかけながら、目標達成を目指す方がモチベーションも上がりますし、仲間意識の醸成につながります。障害者を雇用し、より強い組織を作るためには、後者の選択である「All for one」が必要です。
 

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なぜ障害者雇用において「One for all, All for one」の精神が浸透しないのか?

 

浸透しない背景には大きく2つの側面があると考えています。第一に「All for one」は短期的な成果に直結しないように受け取っていることが考えられます。目先の結果を追求することを考えると、後回しにしてもいいのではないかという疑問が浮かぶということです。障害者雇用でいえば、障害に対する知識や情報を得て、どう活用するか、フォローしていくかを考えるよりも、その時間を目先の利益追求に充てようという判断が強く現れているということです。働く障害者を全体でフォローし、活躍してもらおうという意識が不足することは想像に難くありません。
 

第二に、働く障害者の方々に「One for all」、つまり、会社にどんな貢献ができるのかと考える意識が弱いことが挙げられます。できること・できないことがあるのは仕方がありません。もちろん、企業への貢献意識が高いひともいらっしゃいます。しかし現実には「障害者だし、この程度でいいんじゃないか」という甘えや「障害者を雇用しないと大変でしょ?」という驕りをもつひとがいることも現場の声を拾えば事実だと言えます。これでは雇用する側にとっても「コスト」という認識が拭い去れないのも無理はありません。
 

なぜ「One for all, All for one」の精神が浸透しないのか。それは「One for all」と「All for one」が両立できていないからに他なりません。働く障害者と受け入れる会社の双方が、ほんの少しだけ意識を変えたとき、障害者雇用の制度と価値は大きく変わるのではないでしょうか。
 

働きづらさを考えるサイト「ONE STEP」に掲載された文章を一部加筆し、転載したものです。
 

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この記事を書いた人

坂本啓介

小学校の恩師に憧れ、教師こそ天職と信じ教員免許を取得するも、学校教育と社会が求める教育に差を覚える。勉強を教えることだけが教師の仕事なのか?人生経験をもとに子どもたちの土台を作ることが仕事ではないのか?伝えたいこと・必要なことを、声を大にして発信することは求められていないという教師の現実に葛藤を覚える。
自分の想いを堂々と、声を大にして発信する学び場を作るべく、2012年2月、神保町大学を設立。「考えるって楽しい」をコンセプトに、通常の教育機関が言わないタブーに挑み続ける。