大阪で開催されていた「バリアフリー2015(正式名称:第21回 高齢者・障がい者の快適な生活を提案する総合福祉展)」(4月16日~18日)に行ってきました。
この展示会は、日本と同様に高齢化が進むアジア各国との連携をしており、併設開催の「慢性期医療展2015」とともに、今年11月には台湾でも開催されます。その背景について、以下、引用文をご覧ください。
人口の高齢化は世界中で進行しており、その流れを食い止めることは大変困難な状況です。人口の高齢化に伴い、病気の種類も変化し、慢性的な疾病がより多く見られるようになります。国連の発表によると、2050年までに世界の65歳以上の高齢者の61%超はアジア太平洋地域に居住すると予測されています。これは2000年から2050年までの50年間で314%の増加率になります。台湾も例外ではなく、65歳以上の高齢者人口が現在は11.5%であるものが、2025年までには20.0%に上昇すると予測されるなど大きな変化に直面しています。このため、台湾では高齢者向けのヘルスケア市場(介護・福祉・医療)への需要が急速に高まっています。(「Geriatric Care Asia 2015/Elder Care Asia 2015」ホームページより)
以前、「国際福祉機器展レポート」でも書きましたが、日本を含めた世界各国で高齢化が進む中で、日本の福祉機器(バリアフリーアイテム)は先端を進んでおり、世界から注目されています。そしてその対象は高齢者だけではなく障害者も含まれています。「福祉は成長産業である」という視点で捉え、私が個人的におもしろいと感じたアイテムや仕組み(システム)をいくつかご紹介したいと思います。
●松永製作所「NEXT CORE くるり(車椅子)」
(http://www.matsunaga-w.co.jp/)
松永製作所は、車椅子シリーズ「NEXT CORE」を数多く生み出しているメーカーとして有名です。今回展示されていたのは、新シリーズ「くるり」。その名の通り、その場でくるりと小回りが出来る性能とコンパクト仕様を兼ね揃えているほか、車椅子の各部の無駄を排し、室内の壁などにぶつかりにくく、快適な車椅子生活を提案しています。さらに、前方への転倒防止機能が搭載されているなど、車椅子ユーザーのニーズを確実に捉えています。このアイテムを見てようやく、車椅子ユーザーの困りごとが分かったように感じました。
●ピップ株式会社「見守りかぼちゃん」
(http://ohs-net.jp/bestselections/selections/pdf/P30.pdf)
認知症高齢者向けのコミュニケーション(うなずき機能搭載)ロボット「うなずきかぼちゃん」の第二弾が「見守りかぼちゃん」です。従来のうなずき機能に加え、ネットワーク接続するための無線ユニット、ワイヤレス給電技術などが追加され、高齢者とコミュニケーションをとりながら、メンタルケアや生活リズムのペースメーカー役になっています。具体的な機能としては、設定した服用時間になると、(かぼちゃんから)アラーム音が鳴るほか、箱を開けた情報をログとしてサーバに送って服用情報の管理を行うなど、多数の役割を果たします。
●大和ハウス工業株式会社「minelet 爽(マインレットさわやか)」
(http://www.daiwahouse.co.jp/robot/minelet/)
寝たきりでも爽やかな排泄ができ、介護する人も労力と時間を大幅に軽減できる全自動の「排泄処理ロボット」です。現在、介護・福祉の世界へのロボット参入が話題になっていますが、こちらもその一つになります。排泄介助は、本当に長い間、人的作業で行われてきましたので、介護する側・される側双方に抵抗があるかもしれません。しかし、実際問題として「排泄処理」が、介護・福祉の大きな負担になっているのであれば、新しいアイテムの導入も検討していくべきではないでしょうか。
●山路製陶工業「セラミック足癒」
(http://www.h2.dion.ne.jp/~touemon/)
多種多様なアイテムが登場していたバリアフリー2015の中で、一際ユニークだったのがこちらの「セラミック足癒」です。「お湯のいらない足湯」(特許出願中)として、美濃焼の特殊セラミックボールを用いた、足湯ならぬ「足癒」アイテムで、経済産業省の認定も受けているそうです。ブース内にあった『足を冷やすとブスになる!?』というキャッチコピーは、来場者の目を引いていました。
●西日本電信電話株式会社(NTT西日本)「介護レク広場」
(http://www.kaigo-rec.com/service/channel/hikari_box/)
NTT西日本が他社と共同で、介護に関する動画コンテンツを配信するサービスです。内容は「介護レクを楽しむ」「介護レクを学ぶ」の2つに分かれており、【楽しむ】では「座ってできる介護予防体操、リズムに合わせて指体操、対戦!カップカーリング」、【学ぶ】では、「レクネタ紹介、施設訪問レポート、介護レクリエーションって??」などが配信される予定です。
今まで、介護用レクレーションは現場のスタッフが対応するのが通例でしたが、練習などの準備や実際の演技など、かなりの時間と労力を要していたようです。専門家による動画配信となれば、その時間と労力は軽減され、他の仕事が出来るようになります。そして、高齢者の方も、自分の好きなコンテンツを一人で楽しむことも出来るようになるわけです。いろいろと可能性が広がりそうなサービスであると感じました。
●つえ屋「LED照明付きステッキなど」
(http://www.e-104.info/)
京都の杖・ステッキ専門店の「つえ屋」では、LED照明が搭載されたステッキや、底が広いステッキの展示を行っていました。LED照明搭載ステッキについて考えてみると、そもそもステッキの役割は「歩行困難者の歩行サポート」であり、日中の歩行だけではなく「夜間の歩行サポート」という視点は、とても納得しました。日本の和柄を取り入れたカラフルな杖も多くあり、とても華やかなブースでした。
●株式会社カナミックネットワーク「カナミッククラウドサービス」
(http://www.kanamic.net/)
在宅治療をする患者(高齢者)の情報を地域の多職種間(主治医-訪問看護師-薬剤師-家族-地域包括支援センター‐ヘルパー‐ケアマネジャー‐在宅主治医)で共有するためのクラウドサービスが話題になっています。今まで、各職の紙媒体によってバラバラに管理されていた患者の情報(薬、診療の進捗、介護記録、ケアプランなど多数)を、クラウドサービスを用いて地域で一元管理・共有することで、より効率的で効果的な医療が可能になります。厚生労働省は「患者(高齢者)を入院させない(退院を促す)」医療費削減政策を進めており、これからは、地域全体で患者をケアする体制が求められています。そのような背景もあり、同社のサービスは大変注目されています。
以上が、私が個人的に面白いなと思ったものになります。進化・発展が目覚ましい日本の福祉分野ですが、すべてが自分の生活に関係があるわけではありません。しかし、こうした産業やアイテム・サービスがあることだけでも知識として蓄えておけば、いざという時の選択肢の一つとなり、自分の生活の豊かさにつながるのではないでしょうか。