聴こえない中でのチームワークが見どころ。デフフットサルの世界。

先日、デフフットサル女子日本代表の合宿練習に伺ってきました。聴覚障害者のことを指す「デフ」。聴こえにハンディキャップを持ちながら、フットサルでメダル獲得を目指す女子代表チームの様子をお届けします。
 

デフフットサル①
 

デフスポーツの世界大会は「デフリンピック」。次回は2017年にトルコで行われる予定です。ちなみに、日本と世界(デフリンピック)の聴覚障害に関する基準は違い、世界基準は比較的緩く、日本では障害認定を受けていない人(一般よりは聴こえが悪い健常者)も大会に出場ができるそうです。「デフリンピック」については、その成り立ちや「パラリンピック」との関係性などがまとめられたサイトがあります。

・デフリンピック啓発サイト
https://www.jfd.or.jp/deaflympics/games/about.php
 

4年に1度の「デフリンピック」の他にも、様々なデフスポーツ競技の世界大会が行われています。デフフットサル日本女子チームは、今年11月にタイで行われる「デフフットサルワールドカップ(16ヶ国が参加)」に出場します。2011年のスウェーデン大会では、12ヶ国中9位という成績。今回は前回順位を超えて、メダルの獲得を狙っています。今回の合宿は、それに向けた強化合宿です(男子チームもワールドカップに参加しますが、今回の取材対象は女子チームです)。
 

デフフットサルは、健常者のフットサルと違いが分かりづらいと言われていますが、実際のところ、大きな違いはなく、ルールについても、FIFA(国際サッカー連盟)が定めたものを採用しており、違いといえば、主審のホイッスルが聴こえない代わりに旗で試合進行を行っていることです。
 

デフフットサル②
 

今回の合宿練習の見学やスウェーデン大会などの動画を見た私の素人視点から感じた、デフフットサルならではのおもしろさを3つご紹介したいと思います。
 

●聴こえない中でのチームワーク
 

デフスポーツ(団体競技)の魅力として必ず挙げられているようですが、聴こえない中でのチームプレイは非常に「見応え」がありました。通常の団体スポーツでは、周囲の選手が声を掛け合ってプレイを進めていきますが、その「声」が無い状態で、アイコンタクトや身振り手振りなどを使い、常に仲間の位置を把握しながら、ピタッとボールがつながっていくことは、衝撃的です。また、「声」はチームや個人のモチベーション維持にも必要とされますが、その「声」を使わずにテンションを保つ選手たちのメンタルの強さは、相当なものではないかと推測できます。
 

●代表選手は中学生から30歳以上まで!幅広い年齢層
 

デフフットサルの競技人口は、男女合わせて200人程と言われています。決して、多い数字ではありませんが、女子チームは30歳を超える成人選手もいれば、高校生や中学生も在籍しています。年齢の制限がなく、幅広い世代でチームが成り立っていることは、なかなか興味深いなと感じました。
 

●健常のフットサル(サッカー)と照らし合わせてみる
 

ゴール前の攻防、一対一の局面、パス回しなど、仲間と声を出し合いながら進めていくフットサルです。もちろん、デフフットサルでも同様にコミュニケーションはあるでしょうが、声が無い分、その動きの一つ一つが違っているように見えました。自分が知っているフットサル(サッカー)と違う動きがある、というのは発見ですし、また違う面白さがあると感じました。
 

デフフットサル③
 

デフフットサルは、聴こえないのにプレイできるなんてすごいという発見が、試合を見た多くのひとが残す感想です。しかし、聴こえないことを当たり前としたとき、プレイのひとつひとつの工夫に気づきながら見るのも、なかなか面白いのではないでしょうか。
 

チーム力の向上のみならず、競技の知名度向上、スポンサー集めについてなど、課題は山積みだとオッ者ていました。しかし、11月のワールドカップ、そしてそれ以降の大会でのメダル獲得も目指して、突き進んでほしいです。
 

最後に、監督・選手のコメントをご紹介します。
 

デフフットサル④
 

山本典城監督
選手時代には、数々のチームでプレイし、2度のブラジル遠征も経験。ブラジルサンパウロ州公認フットサル指導者ライセンスを取得しており、2013年、ろう者フットサル女子日本代表監督に就任。

「障害を持つ彼女たちですが、世の中にはたくさんのチャンスがあり、そういったものを是非経験してもらいたいと思っています。目標は、もちろん今年のワールドカップでのメダル獲得ですが、常に、その次を見据えていきたいと考えています。」
 

デフフットサル⑤
 

折橋菜奈 選手(キャプテン)
「デフフットサルでは、聴こえる人と違って声で指示や判断が出来ない分、ジェスチャーやアイコンタクトで指示をしたり判断したりします。そのなかでゴレイロ(ゴールキーパー)を含め、5人の考えが一致し、攻撃のスタートからゴールまで決めることが出来た時はもう最高です!試合で最低限1ゴールは決めること、常に冷静でいること、この2つを目標にしています。」
 

デフフットサル⑥
 

野崎陽子 選手(キャプテン)
「聴者フットサルにはなくてデフフットサルにはあるもの。それは、音のないピッチ内で、より広く視野をもち、収集できる情報が少ない分、思考力を高めてプレイすることの面白さかなと思います。結局は、聴者もデフも関係なく、フットサルそのものが、五感豊かで楽しいです!「今後は」ではなく、「今後も」将来の子供たちに夢を与えられるように世界大会でメダルを獲得し、聴者たちに『障害者でも出来るで!』と驚かせることをしたいです!」
 

デフフットサル⑦
 

吉原和香奈 選手
「聴者フットサルは競技志向になればなるほど声を出す事を求められます。一方で、デフフットサルは、「声以外の手段」でコミュニケーションをとって、プレイするところが面白いです。チームメンバーと自分が思い描くプレイのイメージを共有できるまではなかなかもどかしくもありますが、イメージが合って良いプレイが生まれた時の喜びや楽しさは格別です。このメンバーで、世界の強豪国相手に勝利の喜びを味わいたいです。」

※吉原選手がPlus-handicapのイベントに遊びに来てくれたことが今回の取材のきっかけとなりました。
 

デフフットサル委員会オフィシャルサイト
http://deaffutsal.grupo.jp/
日本ろう者サッカー協会HP
http://jdfa.jp/
日本ろう者サッカー協会Facebook
https://www.facebook.com/jdfa.soccer

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この記事を書いた人

堀雄太

野球少年だった小学4年生の11月「骨腫瘍」と診断され、生きるために右足を切断する。幼少期の発熱の影響で左耳の聴力はゼロ。27歳の時には、脳出血を発症する。過去勤めていた会社は過酷な職場環境であり、また前職では障害が理由で仕事を干されたことがあるなど、数多くの「生きづらさ」を経験している。「自分自身=後天性障害者」の視点で、記事を書いていきたいと意気込む。