障害者スポーツって実は誰でもできちゃう。障害者限定ではないシッティングバレーの世界。

「TOKYO 2020」というカードをIOC(国際オリンピック委員会)のロゲ会長が見せたとき、私の心の中に浮かんだことは「東京パラリンピックに出たい。見るのではなく出たい。」というものでした。そんな途方もない夢を叶えるべく始めたシッティングバレー。2014年2月22日23日と明石市で開催されたシッティングバレーの大会に参加してきました。結果は5位。ちなみに昨年末に行われた日本選手権では、うちのチームは準優勝でした(ほとんど出場していませんが:笑)。
 

6人制のバレーボールを体育館の上に座ったまま行うのです。
6人制のバレーボールを体育館の上に座ったまま行うのです。

 

シッティングバレーは、「座ったまま行う」バレーボール。床に臀部の一部が着いた状態(お尻や背中が地面に着いていればOK)で行われること以外は、皆さんが知っているバレーボールとほぼ同じルールです。立ち上がることや飛び跳ねることは禁じられており、移動する時は手のひらや足の裏で地面を押して移動します。座ったまま高速で地面を移動するためにはどうすればいいか考えると競技のタフさを感じることができるかもしれません。
 

ネットの高さは男子が1m15cm、女子が1m5cm。テニスのネットの高さと女子のネットの高さが同じくらいです。バレーコートの中で座ったまま、テニスのネットの高さを超えて、上半身の力を主に使いながらスパイクを打つ。したがって、皆さんがテレビで見るようなスパイクをビシバシ決めて得点を取るというよりは、必至に繋いで繋いでミスをせずに点を取っていく競技です。
 

 

ロンドンパラリンピックの動画をご覧頂ければ分かると思いますが、座ったままの移動スピードは速く、スパイクの力強さも想像以上です。
 

この競技の醍醐味は、俊敏さと球を拾いまくる泥臭さ。スパイクを打つ高さ(床の上に座って手を上に伸ばした高さ)と球を拾う高さ(床上ギリギリの高さ)が短い分、瞬間的な読みを重ねた上で、球を拾うまでの移動を俊敏に行わなければならず、また、日本人のパワーと高さだとスパイク1本ではなかなか得点が決まらないため、必死に繋いでいくしかありません。だからこそ、会場で特に体育館2階から試合を見ると、細かい移動の連続とコースを狙った攻めが見られるので、見応え十分です。
 

シッティングバレーは障害者スポーツのひとつとなっていますし、パラリンピックの正式種目です。ただ、発祥はレクリエーションスポーツの一環であり、障害の有無に関わらず楽しむことができます。実際、競技人口は健常者のほうが多いですし、日本選手権等の大会では、コート内に障害者が1名いれば、チームとして競技に参加できます。バレーボール経験者がケガのリスクを抑えるために、飛ばずに済むシッティングバレーを楽しんでいる方も非常に多いです。
 

障害者スポーツは、言い換えれば障害者でもできるスポーツということ。特に身体に障害があってもできるスポーツ。すなわち、子供や高齢者であっても気楽に楽しむことができるものなのです。誰でも楽しくプレイでき、ケガのリスクも少ないのが障害者スポーツ。実はちょっとスポーツやってみたいなという方々にとっては理想的なものなのではないでしょうか。
 

「障害者」という切り口に惑わされず、ぜひ一度障害者スポーツの世界を覗いてみてください。できるかも!面白いかも!という発見がたくさんあるはずです。2020年のパラリンピック東京開催が控えている今、障害者スポーツの存在を知ってもらう、競技を体験してもらうことが、障害者アスリート界の至上命題となっているのです。

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この記事を書いた人

佐々木 一成

1985年福岡市生まれ。生まれつき両足と右手に障害がある。障害者でありながら、健常者の世界でずっと生きてきた経験を生かし、「健常者の世界と障害者の世界を翻訳する」ことがミッション。過去は水泳でパラリンピックを目指し、今はシッティングバレーで目指している。障害者目線からの障害者雇用支援、障害者アスリート目線からの障害者スポーツ広報活動に力を入れるなど、当事者を意識した活動を行っている。2013年3月、Plus-handicapを立ち上げ、精力的に取材を行うなど、生きづらさの研究に余念がない。