皆さん、ごきげんよう。矢辺です。
実家の鳥取県に帰ることになり、東京を離れることになりました(月数回は東京に来ますが)。これからは定期的に記事を書くことはありませんが、プラスハンディキャップには関わっていきます。鳥取から感じたことを書くこともあると思います。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
さて、定期的に記事を書くことは最後ということで、私がここまで何度も書いてきた障害者雇用について、近い未来に起こることをお伝えしていきます。
・障害当事者
障害者差別解消法ができました。今後、合理的配慮の名のもと、障害が理由で採用されないなどの問題は減っていくでしょう。しかし、あくまでこれは「スタートラインに立てた」ということでしかありません。
逆に言えば、企業は合理的配慮をする義務を果たす一方で、言わば、合理的排除も可能になります。つまり、「仕事ができない障害者」は排除されるということです。これは、合理的配慮から健常者と同じスタートラインに立ったのだから、企業からすれば当然のことです。
これからは「障害者は採用で差別される」ということがなくなる代わりに、「障害があるからこの程度でいいや」「障害があるからできない」ということを言えなくなります。入社すれば一生安泰という時代ではないのです。ですから、障害者でもしっかりと健常者と変わらない成果を出すことが必要な時代になります。あなたはその準備ができていますか。
・企業
障害者差別解消法ができましたが、企業が障害者雇用に取り組むことに大きな変化は必要ないでしょう。あるとすれば以下の3点です。
1)障害者雇用をメリットにすること
最近雇用が増えている精神障害者は手帳が2年更新であり、また、特に中小企業は、雇用する1人に対して採用や教育に割ける労力が少ないため、大企業のように障害者を雇用することが簡単にはできません。ですから、障害者を受け入れるのであれば、手帳がなくなってもその人に価値があること、また受け入れることが健常者社員にもメリットにする必要があります。
それは、私がこれまで伝えているように、「障害者が活躍できる組織は誰もが活躍できる」ということを目指すことです。誰もが活躍できる職場環境にしていくことは、少子高齢化により様々な事情を持った人が働く時代になるこれからにとって、企業の一人事戦略として考えてもよいはずです。
2)2018年の精神障害者の雇用義務化による法定雇用率アップ
今から数年近く先の話ですが、採用の取り組みが必要です。
3)障害者からの訴訟リスク
障害者差別解消法ができることによって、これまでの雇用条件ではトラブルが起こる可能性があります。例えば、障害者だから契約社員として雇用しているという会社や障害者専用の給与形態を持っている会社などです。契約社員であればしっかりと「なぜ契約社員なのか」という合理的な理由がなければ訴訟対象になる可能性もあります。
今後、法律の詳細によって、対応が変わる可能性がありますが、雇用条件の見直し・更新が必要になるかもしれません。状況を踏まえながら、社労士さんなど専門家と就業規則等を見直すことも検討していくことが必要になるでしょう。
・社会
社会全体としては、障害者雇用促進法という法律を使ったアメ(調整金)とムチ(法令遵守)で雇用を促進してきた時代は終わったと思います。人が障害者と一緒に働きたいと思う政策、手法が必要でしょう。でなければ、人・金に対する余裕のない中小企業まで雇用が広がりません。
義務ではなく障害者を雇用することが企業(私)にとってどんなメリットになるのか。この答えを1人1人が持つ必要があります。私の答えは、「障害者が活躍できる組織は誰もが活躍できる」です。
また、障害者を「お涙ちょうだい」「感動」という特別なものではなく、個人の一属性として捉えることが大切になるでしょう。義足の人は、ただ足がなく、義足を履いている人です。無条件にかわいそうな人でもなく、無条件にがんばっている人でもありません。もちろんがんばり者もいますし、怠け者もいます。それは障害だけに起因するものではありません。
そういう意味で、「会社をクビになり、かつ借金持ち」と「身体障害」、「バツ3」と「うつ病」、どちらが苦しいか・大変かをあっけからかんに話すことができる社会になる。これが本当の平等であり、障害者と社会のあるべき姿だと思います。それが次の目指すべき姿、障害者と社会の進化した姿だと思います。
・最後に
私は、10年以上、障害者、障害者雇用に関わってきました。障害のある妹も含めると、20年以上は障害者と向き合っていることになります。そうすると、「障害者とはなにか」「障害とはなにか」「障害者は何のために存在しているのか」など、障害者の存在を考えざるを得ません。
と考えると、我々は障害者に試されている気がします。
- お前たちは、私たちを受け入れることができるのか?
- お前たちは、困った人たちに誠実な関心を寄せることができるのか?
- お前たちは、私たちを活かすことができるのか?
その声に少しでも答えられるよう、これからも焦らず、少しずつ、一歩一歩、しかし後悔しないよう進んでいきたいと思います。