8月中旬の入院から早3ヶ月が経過しました。お陰様で写真にあるブラッドパッチ治療(脊髄に自らの血液を注入する治療法)後、一番痛い時に比べ3~4割軽減された感じです。もっとも痛み止めの合成麻薬(トラムセット)も服用中なので、どちらが効いているのかは判断出来かねる面もあります。今は、治療効果の具合の確認と、再びお酒が飲めるようにゆっくり減薬中です。今回は、脳脊髄液減少症への現在唯一の治療法であるブラッドパッチ治療がどのような流れなのかをまとめました。
外傷性または突発性により発症する脳脊髄液の減少による病気。十人十色の症状を引き起こす病気。記憶障害、睡眠障害、免疫異常、全身倦怠、視力低下、光過敏、めまい、吐き気、体中のしびれ等書ききれないほどの症状を示します。詳しくはwikipediaをご覧下さい。私の場合は、これといった要因のない突発性の脳脊髄液減少症で、24時間365日の痛みで数年間熟睡出来ず、ストレスで70%禿げました。
●入院前検査 MRIとCT
ただジッとしていればよいだけのMRI検査。しかし、体が絶えず痛いので、微動だにせずジッとしているだけのことが拷問に感じます。20分の検査時間が、案の定動いてしまったため計30分悶えていました。都合3度目ですがもう二度と…。もしかしたら私は閉所恐怖症なのかもしれません。
一方でCT検査は医療技術の進歩で、これまでは圧迫感漂う15分の検査が今ではX線照射は十数秒、検査台に乗ってから降りるまでも僅か数分間になっていました。このMRIとCT検査の画像を見て、ブラッドパッチ治療のための入院を医師が判断します。
●入院初日
午後 入院手続き
夕方 採血・胸部の心電図・レントゲン
「心電図とレントゲンは必要ないのでは?」と看護師さんに訊ねたところ、苦笑いされながら頷かれていました。
●2日目 ミエログラフィー検査
午前 朝食抜き ミエログラフィー検査(造影剤を用いたMRI検査)詳しくはこちらのwikipediaからどうぞ。仰々しく見えますが大した負担もなく終えられました。先生への信頼が安心に繋がっていたのでしょう。ちなみに7年前の造影剤検査では、違う病院ですが、脊髄への麻酔注射で気絶しました(笑)。
造影剤注入後、治療台を前後に傾け造影剤を脊髄に行き渡らせます。造影剤が脳に入るといろいろ不調になるようで医師が手で私の頭の向きを変え、優しい言葉で的確な対応を頂きました。先生自身、同じ病気にかかられ、第一人者として医学界や世間と渡り合ってきたので、一つ一つの言葉が患者目線なのがとても印象的です。医学界や保険業界、厚労省における脳脊髄液減少症の立ち位置については、以前書いた記事をお読み頂ければと思います。
関連記事:「脳脊髄液減少症に関連する学会にて。患者が感じた違和感その1」
//plus-handicap.com/2014/06/3491/
夜間 担当医より僅かだが頸部に漏れを確認したと伝えられ、翌日のブラッドパッチ治療が決まりました。過去の検査では見つからなかった微小な漏れ、ミエログラフィー検査を受けた甲斐がありました。
●3日目 三度目のブラッドパッチ治療
午前 朝食抜き 7年ぶり三度目のブラッドパッチ治療
手術自体は20分程度で終わります。手術といっても局所麻酔で済む簡単なものです。過去2回に比べ、ブラッドパッチ治療の痛みが比較にならないほど楽でした。適切な麻酔、特注の25ゲージの細い針、症例数と先生の腕と安心感によるものでしょうか。
その後退院5日目まで安静+点滴でした。
●予後
医師からは手術後2週間程度は自宅で安静にと言われました。私は半月を過ぎた頃からヨガを中心に軽くジムを再開し、ひと月弱経過してから仕事も再開しました。他の同病者や医師に言わせると安静期間の短さにビックリなようですが、主治医へ何度も確認し、私自身、体調を見ながら動いていたので問題ないかなと思っています。ちなみに、7年前に初めてブラッドパッチをした頃は3か月間の安静を指示されていました。これも医療技術や症例数、研究の成果による変化だと思います。
ただ、予後直後は、普段と違う痛みが治療後数日続きました。体内で何かが変化していたのでしょうか。いつもの痛みと異なり、これはこれで痛み止めを増やさないとやっていけないレベルでした。
現在は、ブラッドパッチ治療の効果が表れるのは、半年ぐらいと言われています。脊髄からの漏れが収まり、脊髄が脳脊髄液で満たされるまでの期間だそうです。
●脳脊髄液減少症と医療制度
過去2回のブラッドパッチ治療は、病気そのものの存在が医学界で議論されていたため自費治療でした。現在では厚労省の先進医療一覧にある通り、先進医療の対象となり、現時点で全国43カ所で保険適用のもと治療が受けられます。
(項番49参照 硬膜外自家血注入療法)
ただし、画像上脳脊髄液の漏れが確認された場合に限ります。漏れが画像上で確認されなくてもブラッドパッチをして改善する方も多数います。その場合の費用は、保険適用の数万円が20~30万円へと変わります。ここに日本の保険医療の難しさを感じます。
●脳脊髄液減少症治療に関する最近の動向
画像診断で髄液の漏れが確認できるか、できないかで治療費用もさることながら治療の選択肢も変わります。平成23年より新たに始まった人工髄液(アートセレブ)の注入もそのひとつです。また、現在私が服用している医療用合成麻薬のトラムセットによる痛み止めも対処療法としては有効です。
●最後に
これまでと同じことの繰り返しになりますが、体育の授業、追突事故、出産等の身近な要因で誰しもがなり得るポピュラーな病気でありながら、中々診断・治療までたどり着けない脳脊髄液減少症。これは早期発見早期治療が重要です。
同時に、幾度となく治療しても改善せず、歯を食いしばってなんとか生きている方、負い目を感じながら家族の世話になり続けている方、そして自死する方がいることも事実です。生きたくても生きるのが厳しく、働きたくても働けない、自立したくてもできない、生きようとするエネルギーを吸い取り続けるこの病気、外見上分からないということが、他者から理解を得られず、社会の認識と制度の狭間にある病気だと思います。私の発信が少しでも認識の広がりと、当事者とその関係者の希望に繋がれば幸いです。