障害者が「超障害者」になる日が来る!?「超福祉展」取材レポート

2014年11月18日まで行われている「2020年、渋谷。超福祉の日常を体験しよう展」(以下、「超福祉展」)に行ってきました。
 

主催は、NPO法人ピープルデザイン研究所。代表理事の須藤氏は、ネクストタイド・エヴォリューションという名義で、障害者にとって使い勝手の良いファッションアイテムのデザインや販売なども行っています。Plus-handicapでも「障害者の便利アイテム5選」という記事で一度取り上げさせていただいたことがあります。
 

参考記事:「独断で選んだ2013年に登場・話題となった障害者便利アイテム5選」
//plus-handicap.com/2014/01/2551/
 

今回は、展示の見学のみでしたが、自分の中での「福祉」のイメージからかけ離れた別世界を見た印象でした。展示の模様は写真をご覧いただくとして、まずは超福祉展の概要を紹介させていただきたいと思います。
 

「福祉や福祉機器と聞いても、なんとなく『自分には関係ない』と感じてしまう人も少なくないと思います。日本では建物や道路の物理的なバリアは年々低くなる一方で、一人ひとりの心の中に存在する『意識のバリア』はまだまだ高いまま。今回の展覧会では、思わず『カッコいい』と着けてみたくなる、『カワイイ』と使ってみたくなるデザイン、また健常者以上の機能を与えてくれる『ヤバイ』テクノロジーの福祉機器や福祉サービスを集めました。同時開催されるシンポジウムでは、先駆的な研究者や実践者、従来の福祉の文脈では登場しない人々にも集まってもらい、福祉の新しい選択肢となる『超福祉』のあり方について語り合ってもらいます。『2020年、超福祉が実現した渋谷の街の日常』を実際に感じて、考えて。ここから日本中に、世界中に超福祉の風をいっしょに起こしていきましょう。(超福祉展HPより引用)」

 

こうした概要(コンセプト)のもと、今まで見たことのない福祉機器(主に車椅子)が展示されていました。私が、個人的におもしろいと感じたものをいくつかご紹介させていただき、最後に見解を述べさせていただきたいと思います。
 

「WHILL Model A」革新的なデザイン、4WDの走破性、全方位タイヤによる機動力で、ユーザーの行動範囲を広げるパーソナルモビリティ。
「WHILL Model A」革新的なデザイン、4WDの走破性、全方位タイヤによる機動力で、ユーザーの行動範囲を広げるパーソナルモビリティ。

 

「02GEN」ヤマハ発動機と日本人デザイナーのコラボによる車椅子。電動アシスト車いすとしての機能性や安全面の視点を織り込みながら、快適性を追求。座った姿勢の美しさ、人と車いすの一体感にこだわる。
「02GEN」ヤマハ発動機と日本人デザイナーのコラボによる車椅子。電動アシスト車いすとしての機能性や安全面の視点を織り込みながら、快適性を追求。座った姿勢の美しさ、人と車いすの一体感にこだわる。

 

「ハンドバイクHBJ-YE20」手でこぐ新感覚の3輪車椅子。
「ハンドバイクHBJ-YE20」手でこぐ新感覚の3輪車椅子。

 

多くの福祉機器が展示されている中、車椅子を中心に数点紹介させていただきました。
 

冒頭で、「別世界」という感想を述べましたが、超福祉の正直な第一印象(特に車椅子)は、失礼ながらに「こんなの実際に使う人いるの?作り手側の遊び心が過ぎるのでは?」でした。写真を見て同じような感想を持たれた方も、少なくないかもしれません。しかしながら、この奇抜な福祉機器を何回も何回も見るうちに、そうした印象は、まだまだ自分の想像力が足りていないという結論に至るようになりました。
 

展示されている福祉機器を当事者の視点に立ってみたときに感じるのは、自分の生活の向上や目標(仕事やスポーツ、その他)達成のため、必要な機能やデザインを盛り込み、具現化したツールなのだということです。自分のありたい姿のために、既成のものではなく、自らがこだわって作り、それを使用することで、毎日をイキイキと暮らし、自分がいるフィールドで活躍していくようになっていくのであれば、その人は、障害者を超えた‟超障害者”なのではないでしょうか。
 

そういう意味で、この超福祉は、機器(ツール)の展示とともに、障害当事者やその家族などの想像力を刺激するためのものであると、私は感じました。ツールが先にあるものなのか、個人の目標が先にあるものなのか、それは人それぞれでしょうし、実際にツールを作れる人はごく一部でしょう。ただ、それでも「(障害者自身が)自分にも何かできる!」と強く感じられる展示会であったと思いました。もちろん、障害の種類や軽重によって状況が違うので、すべての方に同じことが当てはまるとは言えませんが、障害者世界の新しい可能性の一つを感じました。
 

私自身、自分に翻った時、まず出来る行動として、20年来使用している義足をデザインチェンジしたいと思いました。義足の大腿部分辺りで刺繍などを入れていらっしゃる方も多いですが、私はそうしたことに、今まであまり興味がありませんでした。「義足は地味で良い。十分だ。」という固定観念があったのです。ただ、今回の超福祉をきっかけに、私自身も少しずつ変わり、新しい可能性にチャレンジします。2015年前半くらいまでには、実行致しますので、その際はまたご報告させていただきます。
 

私が使用している義足。素っ気ない。
私が使用している義足。素っ気ない。

 

超福祉展HP:http://www.peopledesign.or.jp/fukushi/
 

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この記事を書いた人

堀雄太

野球少年だった小学4年生の11月「骨腫瘍」と診断され、生きるために右足を切断する。幼少期の発熱の影響で左耳の聴力はゼロ。27歳の時には、脳出血を発症する。過去勤めていた会社は過酷な職場環境であり、また前職では障害が理由で仕事を干されたことがあるなど、数多くの「生きづらさ」を経験している。「自分自身=後天性障害者」の視点で、記事を書いていきたいと意気込む。