ストレスを嫌なヤツにしているのはあなた自身。ストレスってないと死んじゃうの。

皆さん、こんにちは。心の健康を守るナースこと杉本九実です。
 

楽しかったゴールデンウィークも終わり、徐々に日常生活が戻ってきた今日この頃。そろそろ5月病の季節がやってきました。仕事や家庭生活になんとなくストレスを感じ始め、憂鬱な気分が波のようにおそってくるこの時期、実は今こそ「ストレス」について根本から考え直すいいチャンスです。今回は、皆さんが思うストレスの常識を真っ向からひっくり返したいと思います。
 

ストレスは私たちの生活そのもの

 

私たち日本人はストレスが多い人種と言われています。学校生活や家庭、職場などでの様々な人間関係や環境の変化、ライフステージでの出来事(恋愛、結婚、出産、子育て、離婚、死別など)といった具合に、毎日の生活上にはたくさんのストレス因子がころがっています。生きてるだけでストレスだらけ。ストレスがゼロのときってないんじゃないの?と思いがちです。
 

そうなんです・人間が生きていく上でストレスがない状態はないのです。いわば、ストレスは私たちの生活そのものであると言っても過言ではありません。
 

ストレス2
 

そもそもストレスってナニモノ?

 

では、さっきからストレス、ストレスって言っていますが、「ストレス」っていったいナニモノなんでしょうか。
 

ここできちんと整理しておかなければならないのは「ストレス」というものの定義です。一般的に私たちが日常生活の中で”ストレスがたまっている”と言っている「ストレス」とは、ストレスだと感じる出来事や対象のことを指していることがほとんどです。
 

正しくは、ストレスの原因となる出来事や対象のことを「ストレッサー」と呼び、そのストレッサーに対処しようとする心や体の様々な反応のことを「ストレス(ストレス反応)」と呼びます。たとえば、上司に怒られて(=ストレッサー)イライラするから、いつもよりタバコを多く吸った(=ストレス反応)というように、「ストレス」という現象には、必ずストレッサーに対してストレス反応が起こるというメカニズムが存在しています。
 

生きていればストレッサーなんて山ほどあって、それにいちいち反応しようとするメカニズムってわずらわしいし、反応しなけりゃいいのに、って思いますよね?いやいや実はこのストレス反応、人間が生きていく上でとっても重要なんです。
 

なぜ重要なのか、その答えを知るために有史前の人間がまだサルだった頃まで、ちょっとタイムスリップしてみます。想像して下さい、あなたは太古の昔に生きるサルです。獲物を探すために広い草原を歩いています。やっとのことで獲物を狩って食していると、そこに大型の肉食動物が現れました。獲物を横取りしようとこちらに近づいてきます。さあ、サルのあなたはどうしますか?「自分がせっかく捕まえた獲物なんだから横取りされてたまるか!闘ってやる!」もしくは「これは自分よりも強い相手だ。負ける可能性のほうが高いから逃げよう」とこの二つの感情が湧くはずです。実はこれこそがストレス反応の原点なのです。
 

闘うか逃げるか。さぁどっち?
闘うか逃げるか。さぁどっち?

 

専門的にはこの反応のことを、闘争か逃走かの反応(fight-or-flight response)と呼び、ストレス反応の正体であると言われています。ストレッサーとなる肉食動物からの脅威に対して闘うのか逃げるのか、その判断をするシステムがストレス反応であり、これがあることによって有史前の人間は、非常に危険な環境を生き延びることができたのです。
 

つまり、「ストレス」という一連の現象は、私たちが生き延びるための手助けをしているものであり、遺伝子に組み込まれた生命を維持するための重要なシステムなのです。「ストレス」は決していやなヤツではありません。むしろ、これがないと人間はすぐに死んでしまいます。
 

ストレスを飼いならすために必要なこと

 

しかし、こんなすばらしいシステムを持っている私たちがなぜ今、「ストレス」にとりつかれ、襲われてしまうのでしょうか?
 

その答えは、私たち自身がストレッサーを多く作り出したことで、ストレス反応システムの許容範囲を超えてしまったからです。現代における多くのストレッサーと、先祖が直面したような生命や体に対する脅威、その両者の差について、私たちの体は完璧に理解しているわけではありません。
 

どんな些細な出来事でも、脳や体にとって危険と認識したものに対しては、命の危険に曝された時に先祖が呈したのと同じような反応をしてしまいます。そのため、日常生活上どこにでもころがっているストレッサーから身を守るために常にストレス反応システムを作動させ続けている結果、機能オーバーになり身体的精神的不調をきたして病気や障害を引き起こしてしまうのです。
 

勘のいい方ならもうお分かりのはず。「ストレス」をいやなヤツにしているのは、まぎれもなく私たち自身なんです。
 

では、どうすれば機能オーバーを防げるのか。それはストレスを上手に飼いならす「術」を身に付けることです。ストレスに操られるのではなく、手綱は自分がしっかりと持って、上手に操ること。それができたら、ストレスでいちいち悩まなくて済みます。
 

この「術」をすぐに身に付けることは確かに難しいかもしれませんが、まず、第一歩として、自分のバランスを乱したり、脅威に感じたりするような出来事や状況に対する自分の体の反応について観察してみてください。どんなことにストレスを感じるのか、それに対して自分はどんな反応をするのか。「ストレス」の原因と結果を客観的な視点で分析してみましょう。自分では分からなかったら、家族や友人、恋人に観察してもらうのもいいです。
 

「ストレス」という視点で、自分の心と体を知ることから始めてみる。案外、ストレスっていいヤツじゃん、ちょっとうまく飼いならしてみようかなと思えるようになるかもしれません。

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この記事を書いた人

杉本九実

1985年生まれ。順天堂大学卒の看護師・保健師。憧れだったICU看護師となるが、理想と現実のギャップ、過労、ストレスにより心身のバランスを崩し、バーンアウト状態と診断され休職。休職中に訪れた旅で自然の「ありのままに生きる」姿に感化された経験を活かし、2013年PONOプロジェクトを設立。「ストレスやこころの病気を自然の中で楽しく予防しよう!」をコンセプトに、自然の力と看護スキルを活かした今までにない新しいメンタルヘルス事業を行う。