ソチパラリンピックが開会。競技を何種目知っていますか?

2014年3月7日夜(日本時間)、ソチパラリンピックが開会しました。3月16日までの10日間、熱戦が繰り広げられます。日本からは20名の選手が出場します(役員等を含む選手団は55名)。
 

ソチパラリンピックスペシャルサイト:http://www.jsad.or.jp/paralympic/sochi/about.html
スポーツナビ特設サイト:http://sportsnavi.yahoo.co.jp/special/other/sochi_para/index
 

大会第1日となった今日(3月8日)から日本勢はメダルラッシュとなりました。アルペンスキー男子滑降・座位では狩野亮選手がバンクーバー大会に引き続き金メダルを獲得。冬季大会では、オリンピック・パラリンピックを通じて、初の個人での連覇となりました。また、同種目で鈴木猛史選手が銅メダルを獲得。バイアスロン男子7.5キロ・座位では久保恒造選手が銅メダルを獲得しました。
 

2020年、東京でオリンピック・パラリンピックが開催されることとなり、スポーツファンでなくとも、オリンピックの後にパラリンピックが開催されることは少しずつ知れ渡ってきました。ただ、パラリンピックでどのような競技が開催されるのかという点はほとんどの方が知らないと思います。以前、障害者雇用を支援している方と飲んだ際、障害者スポーツをテーマに山手線ゲーム(古今東西ゲーム)を行ったところ、3競技で終わったという経験があります。パラリンピックという言葉を知っていても、どんな競技があるか知らない。もっと言えば、大して興味がないということが実情でしょう。
 

ということで、今回のソチパラリンピックで開催される競技をご紹介します。ソチでは5競技72種目が行われます。ちなみにオリンピックは15競技98種目です。
 

●アルペンスキー
 

http://youtu.be/by6-ldGgzm0
 

アルペンスキーは斜面を滑り降りるタイムを競う競技です。高速系種目と言われる滑降とスーパーG(スーパー大回転)、技術系種目と言われるジャイアントスラローム(大回転)とスラローム(回転)、そしてスーパーGとスラロームの合計タイムで競われるスーパーコンビ(スーパー複合)という種目があります。立位、座位、視覚障害の3部門に競技が分かれていますが、例えば義足・義手のような方であれば、健常者と同じように立ったままスキーが出来るので立位、車いすの方であればチェアスキーを用いて滑るので座位、目が不自由な方であれば視覚障害の部門、というように障害の状況に合わせてカテゴリーが分けられます。順位は実際のタイムに障害の程度に準じた係数が掛けられ決まります。
 

●クロスカントリー
 

http://youtu.be/oLYkvj1hnu0
 

クロスカントリーは一定の距離を滑るタイムを競う競技です。定められた走法に従って滑るクラシカル、自由な走法で滑るフリー、短い距離を競うスプリント、そしてリレーの4種目があります。これもアルペンスキー同様、立位、座位、視覚障害という3つのカテゴリに分けられています(座位はクラシカル・フリーと分けられていません)。
 

●バイアスロン
 

http://youtu.be/J1nUgYkhyrE
 

バイアスロンはクロスカントリーと射撃がミックスされた競技です。クロスカントリーの最中に射撃があり、射撃の的を外した分のペナルティを受け(例:1回ミスするたびに周回コース1周分滑る)、タイムを競う競技です。ショート、ミドル、ロングという3つの距離があり、これも上記の2種目同様、立位、座位、視覚障害の3カテゴリあります。立位と座位の選手はエアライフル、視覚障害の選手はビームライフルというように、ライフルにも種類があります。クロスカントリーで心拍数が上がっている中で、集中力と正確性が求められる射撃が含まれる部分がこの競技の面白さです。
 

●アイススレッジホッケー
 

http://www.youtube.com/watch?v=Alb_7k2KSb4&feature=share&list=PL69FC61BFBBE9411D&index=11
 

アイススレッジホッケーはスレッジという専用のソリに乗り行うアイスホッケーです。バスケットボールに車いすバスケがあることと似ています。スティックが短く、持ち手の部分に駆動用の刃があることが特徴です。下半身に障害がある人がアイスホッケーを楽しめるように改良されたスポーツなので、必然的に日常生活で車いすを使う、義足を履いているという人向けのスポーツです。アイススレッジホッケーは氷上の格闘技とも言われ、点数を競う競技の部分も然ることながら、体と体、ソリとソリのぶつかり合いの迫力も魅力のひとつです。ソチでは日本チームは最終予選で敗れてしまったため出場していませんが、前回のバンクーバー大会では銀メダルを獲得しています。
 

●車いすカーリング
 

http://youtu.be/XZDZdbw-86E
 

カーリングは、氷上に置かれた目標となる円の中にストーンを滑らせ、中心に近いほうが点数を獲得するというスポーツで、ソチオリンピックで特に注目された競技のひとつです。パラリンピックでは車いすカーリングという競技の名前から分かるように、車いすに乗った方が参加するスポーツとなります。男女は分かれておらず、4人1チームのなかで必ず1名は女性を入れなくてはならないというルールになっています。カーリングでは氷上をブラシでこすり、コースやスピードを調整しますが、車いすカーリングはブラシは使わず、車いすに乗った状態でストーンを滑らせるか、キュー(ビリヤードのキューと似ています)を用いてストーンを押し出すかのどちらかで目標に向けて滑らせます。投げた後は目標に届くまで何も出来ないという点を考えれば、カーリングよりも数段難易度が高いスポーツでしょう。日本チームは残念ながら予選突破できなかったため、ソチで日本チームを見ることは出来ません。
 

これらがソチパラリンピックの種目です。ぜひリンクした動画をご覧頂ければと思います。国外の動画を引っ張ってきているので、英語が聞き取れないことも予測されますが、映像だけでも競技そのものを知ることが出来ると思いますし、その迫力やダイナミックさを味わって頂ければと思います。
 

また、国際オリンピック委員会は、オリンピックという名称を、健常者が中心のオリンピック、身体障害者が中心のパラリンピックの他に、聴覚障害者が中心のデフリンピック、知的障害者が中心のスペシャルオリンピックスという4つに与えています。多くの人が知るオリンピックに加え、パラリンピックという名前は知られてきていますが、あとの2つはまだまだ知られていないことも実状です。興味関心を寄せろと強制することはありませんが、今回の記事で障害者スポーツの競技や4つのオリンピックについて知って頂くことができれば嬉しいなと思います。

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この記事を書いた人

佐々木 一成

1985年福岡市生まれ。生まれつき両足と右手に障害がある。障害者でありながら、健常者の世界でずっと生きてきた経験を生かし、「健常者の世界と障害者の世界を翻訳する」ことがミッション。過去は水泳でパラリンピックを目指し、今はシッティングバレーで目指している。障害者目線からの障害者雇用支援、障害者アスリート目線からの障害者スポーツ広報活動に力を入れるなど、当事者を意識した活動を行っている。2013年3月、Plus-handicapを立ち上げ、精力的に取材を行うなど、生きづらさの研究に余念がない。