車いすだと点字ブロックにつまずくの? 風俗って行けるの?どうやって行くの? 障害者から障害者に質問してみた。

2014年1月11日、「障害者の何でも言いたい放題vol.1」というイベントが福岡で開催されました。
 

社会では「障害者」とひとくくりにされがちですが、身体障害者が精神障害者のことを理解できないように、また身体障害者の中であっても義足を履いている人間が目の不自由な方のことを知らないように、「障害者が他の障害者のことを知る」ということを目的に開かれた、ディスカッションイベント。今回はイベントで出てきた「そんなことあるんだ!」という気づきを独断と偏見でまとめてみました。
 

障害者の言いたい放題① 
 

点字ブロックに車いすの前輪がつまずくんです

 

車いすに乗る女性から出てきた「点字ブロックに前輪がつまずくんです」という言葉は、車いすに乗る方にしか分からない視点。目の不自由な方が移動する上で欠かせない点字ブロックが、車いすの方にとってはバリアになってしまう。これは何とも不条理な世界です。
 

「点字ブロックが邪魔だ」なんて言っているわけではなく、都市計画を立てるにあたり、点字ブロックを設けるスペースと車いすが通行できるスペースを両方とも確保できればいいという話です。
 

歩道①
歩道①

 

歩道②
歩道②

 

例えば、この2つの写真を見比べて頂くと分かると思いますが、上の写真の歩道だと、歩道の真ん中に点字ブロックがあることで車いすが点字ブロックに触れることなく移動することは難しくなります。反対に、下の歩道の写真であれば、スペースが確保されているので、車いすでも難なく移動することができます。もちろん、歩道が作れる幅もありますし、全部が全部、ニーズを満たせるかどうかは別の話です。大切なのは、車いすが点字ブロックにつまづく恐れがあるということを知っておくことです。
 

ただ、歩道の空いているスペースに自転車などを駐輪されると途端にスペースがなくなりますので、自転車の方には注意して頂きたいです。目の不自由な方も車いすの方も基本的には自転車に乗れないので、そんな場所に駐輪するなんてあり得ない、と考えていることがそもそもかもしれません。
 

ゲッブに言葉を乗せて、僕は話しているんですよ

 

物を飲み込むことに困難を抱える嚥下(えんげ)障害の方からこぼれ落ちてきた言葉が「ゲップに言葉を乗せて話しているんです」。会場に集まった障害者のほとんどのアタマの上に?マークが灯りました。
 

喉頭気管分離術(気道と食道を切り離すことによって、食べ物や唾液が、気管・肺に流入しなくなるような施術)という処置を受けたことで、自然に発声することができなくなったはずでした。つまり、施術によって声を失ったはずでした。
 

喉頭気管分離術
 

しかし、入院中にゲップに言葉を乗せたときに声が出た(ゲップによって発声するガスに喉を震わせるメカニズム)という経験から、100%とは行かないまでも、コミュニケーションが取れるほどにまで会話できるようになったというのです。
 

私自身、嚥下障害や喉頭気管分離術といったものをほとんど知りませんでした。正確に言えば、障害者が集まる場所で、そんな障害を持ったひとっていたなあ、そんな処置をしたひとっていたなあという記憶があった程度。今回の記事を書くにあたり、いろいろ調べましたが、「言葉を失ってしまう」ということへの恐怖心を知りました。
 

障害者は他の障害者の障害について知りません。これは健常者の障害者のことを知らないという感覚と同じです。ひとつひとつの障害についてすべてに興味を持てとは言いませんが、きっかけがあったときに情報を掴んでおくという意識は大切だと感じます。
 

風俗ってどうやって行ってんの?

 

オトコであれば行きたくもなる「風俗」の世界。目の不自由なひとだとどうやってるのか?車いすやストレッチャーで生活しているひとだとお店に入れるのか?など、お酒の勢いも借りて聞いてみました。障害によって変わるというより、本人の嗜好による部分もありますが。
 

「たしかに目が見えないから指名とかは難しい。だけど、相手の体に触れられたら、相手の体の場所は分かるもんね。」目の不自由な彼は、しょっちゅう風俗に行っていると周囲からヨイショされていましたが、なるほど納得です。相手がどこにいるか分かれば何とかなるし、されるがままの自分でいるときにはそんなに関係ないのかもしれません。「目隠しプレイと似てますよね」と聞いてみましたが、「もともとそんなに目見えないからやったことない」との返答。それはその通りでした。
 

ストレッチャーに乗って風俗の店舗に突撃した彼によれば、「ビルごとNGでした」とのこと。「それだとウチの店舗には入れないなあ。ビルの構造上、上の店舗でも無理だと思うよ。」と言われたときに「あ、デリヘル呼べばいいのか」と、とっさに思考が切り替わったようです。
 

風俗とは少し離れますが、私自身も悪友から「佐々木さんってこんな体位できるの?」と聞かれることがあります。障害を理由にできないこともあれば、障害があっても挑戦したくなるものだってあるのです。性の話は障害の有無は関係ありません。障害者だから聞けないなんて世界ではありません。ただ、当日は女性が少なかったこともあり、女性障害者の性に関して、そこまで突っ込める機会がなかったことが反省点です。
 

障害者の言いたい放題②
 

記事の途中にも書きましたが、障害者と一括りで語られることによって見えなくなってしまっている事実のひとつが「障害者が他の障害の障害者について知らない」ということです。むしろ、健常者以上に興味がない可能性すらあります。健常者も障害者も関係ないというのであれば、障害者に対する知識や興味・関心を、障害者自身が持つ必要性に気づかなくてはなりません。
 

癖になってしまった「障害者の何でも言いたい放題」は、すでに第2回の開催が3月21日に決まっております。今度は何を聞き出すか。今から楽しみです。

記事をシェア

この記事を書いた人

佐々木 一成

1985年福岡市生まれ。生まれつき両足と右手に障害がある。障害者でありながら、健常者の世界でずっと生きてきた経験を生かし、「健常者の世界と障害者の世界を翻訳する」ことがミッション。過去は水泳でパラリンピックを目指し、今はシッティングバレーで目指している。障害者目線からの障害者雇用支援、障害者アスリート目線からの障害者スポーツ広報活動に力を入れるなど、当事者を意識した活動を行っている。2013年3月、Plus-handicapを立ち上げ、精力的に取材を行うなど、生きづらさの研究に余念がない。