日本人に見られたくないというプライド【ハーフの方へのインタビュー】

自身の生い立ちから、いつも「ハーフ・外国人」について書かせていただいているケイヒルです。
 

「○○さんって、まるで日本人みたいだね」――外国人の方に対するこんな言葉、漠然と褒め言葉だと思っている方、いらっしゃいませんか?元来、日本社会では「外国人」、さらには「ハーフ」の方々は、受け入れられず、孤立しがちであるとされています。現実に「日本社会は排他的だ」との声は、外国人やハーフの方からもよくきかれます。先日インタビューさせていただいたKさんも、日本では、ハーフや外国人の方は「どこまで行ってもヨソモノ」とお話していました。
 

このようなことを踏まえると、前述の「まるで日本人みたいだね」という発言は、外国人の方が日本社会に馴染み、生活している状況を思い起こさせ、ポジティブに響くのかもしれません。しかし、今回インタビューさせていただいた、父がイギリス人、母が韓国人の女性、Sさん(※個人情報保護のため、イニシャルを使用)は、「日本人に見られたくない」と語ります。
 

ライター自身、「ハーフ」「外国人」であることもあり、世に出ている「ハーフ」「外国人」の意見って、ワンボイスすぎやしないか?「ハーフ」「外国人」とひとくくりにすることで、個々人の考え方・感じ方・生き方の多種多様さが表に出ていないのではないか?と疑問を感じて始めたこのインタビュー企画。インタビュー第二弾をお送りします。(Sさんは筆者と同年代であるため、インタビューでは敬語を使用しておりません。)
 

by Luxt Design
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ケイヒル(以下C):本日はよろしくね。まず、ご本人の生い立ちについて教えてもらえますか。
 

Sさん(以下S):お父さんがイギリス人で、お母さんが韓国人。両親は日本で出会って結婚したので、日本生まれ、日本育ちです。そのあと、一旦家族でイギリスに拠点を移したんだけど、数年して、また家族で日本に戻ってきました。日本では、小・中・高と公立学校に通って、今はファッション系の専門学校に通いつつ、アパレル関係の会社でアルバイトしています。現在喋れるのは、日本語と英語。韓国語は、第二外国語として習ったレベルです。
 

C:唐突な質問なんだけど、Sさんって自分を何人だと思っているの?
 

S:私は、自分のことを、「イギリス人」だと思ってる。でも、イギリスに帰るとみんなに「やっぱりアジア系とのハーフだね」って言われたりもする。それでも、日本で過ごしている限り、自分はイギリス人だって思って生きてます。
 

C:イギリスでは、どういうところをみて「アジア系とのハーフだね」って言われるの?
 

S:見た目。あとは、いかにもなんだけど、クセで会釈することだとか、イギリスの親戚に久しぶりに会うときのノリとか(笑)。親戚とかは腕を広げてハグしてきてくれたりするんだけど、私はそれに比べると控えめ。よく言われることだけど、住んでる国の文化とか習慣って、本当に染みつくもんなんだなって思う。
 

C:ちなみに、韓国に対してはどう思ってる?
 

S:韓国は、言葉も喋れないから、つながってる感覚が薄いかも。韓国のいとこも、見た目において自分との血のつながりが見えなさすぎるし、言葉に関しても通じないから、共通点が何も見つからない。外も中も通じるものが見つけられなくて、お母さんの知り合いに会ってる感覚。
 

C:なるほどね。先ほど、「日本にいる限りはイギリス人だ」って言ってたけれど、日本で生活していて、「自分ってイギリス人だなあ」って実感することって多いの?
 

S:どちらかというと、プライドの問題なんです。例えば、友達に「Sってめっちゃ日本人だよね」って言われると、「いやだ!」って思うのね。「いや、私はイギリス人だから、そう言われたくない」って思っちゃう。
 

あと、元々お喋りで社交的な性格だけど、その性格も「みんながもっている外国人のイメージに一致しているから崩したくない」って意識している部分もあって。「そういう社交的なとことかマジ”ガイジン”だよね」とか言われると、なんかしっくりくる、っていうか。
 

C:なるほど。あまり日本人だと思われたくない、イギリス人に見られたい、っていう気持ちがあるんだ。その気持ちはどこから来てると思う?
 

S:うーん――。こんなこと言っていいのかわからないけど、お父さんがニュースとかを見て、日本人を批判しているのを聞いてきたから、日本人っぽくなっちゃいけないのかな、って思っている部分も少しあると思う。私はイギリス人なんだし、お父さんの子どもなんだから、日本人っぽくなっちゃいけないって思っちゃう。
 

「日本人に見られたくない」っていう気持ちは最近特に強くなっていて、例えば、中学校のときは、仲のいい子がたまたまアメリカ人で、「外国人同士仲良しだよね」みたいな空気が周りで出来上がっていたから、自分が外国人だ、っていうことを、誰かに向けて伝えたい、って思ったことは特になかったのね。それに対して、今のアルバイト先は外国人が多くて、そこで「Sって外国人の割にこういうところあるよね」って言われることが増えて。「遊び好き」とかっていう外国人のステレオタイプに当てはまらないときとかに、「日本人」にされちゃうことが結構多い。外国人みんながみんな、パーティー・ピープル、ってわけじゃないのに。
 

「日本人っぽいね」「日本語うまいね」って言われるほど、「でも、私、あくまでもイギリス人だから」「でも、私、イギリス人だけどうまいんだ」って思うんだ。もしかしたら、イギリス人としてのプライドが強いのは、「日本人っぽいね」って言われることへの反動なのかもしれない。
 


 

C:ちなみに、日本で生活している「ハーフ」「外国人」で良かったなあ、と思って思うことはある?
 

S:うーん――。とりあえず、嫌だなあ、って思ったことはまだない。よかったなあ、って思ったことは、例えば、今のアルバイト先での仕事が手に入ったこと。今働いているアルバイト先では、「ハーフ」「外国人」の人は、ブランドイメージに合っているから、という理由で、採用率が高くなるの。「ハーフ」「外国人」だからこそチャンスが与えられたときはよかったな、って思ったし、もし私が普通の日本人だったら、今の会社に入りたくても採用されてなかったのかな、って思う。
 

ただ、「ハーフだからいいね」みたいなことを周りに言われることはそんなになくて。「鼻が高い」とか言われるけど、お父さんとかと比べれば、自分の鼻、明らかにそんなに高くもなく(笑)。日本社会では、ハーフや外国人の見た目に対して先入観があると思っているから、「ハーフだからこの見た目ゲッツ、ラッキー」みたいな気持ちはない。
 

C:自分が「ハーフ」「外国人」であることが、自分のこういう価値観とか関心をつくってきたかなあ、と感じることってあった?
 

S:高校までは、そう感じることが多かったかな。いろいろな言語が飛び交う自分の家庭環境は、人のそれとは全然違うことを実感していたから、外国人に日本語を教えるボランティアに興味があった。高校時代のカリキュラムに自己研究があって、入国管理法をベースに3年間研究したことがある。そのときは、自分が外国人だからこそ気付けたテーマとして、結構大事にしてた。
 

でも、進路を決めるときには、自分が「外国人だ」っていうことを生かさなきゃいけないのかな、って疑問に思って。ちょうど当時、第一志望の大学にも落ちちゃったから、「外国人」っていうことは関係なくなるけど、自分が好きなものを普通にやっていこう、って思って、ファッションに進むことにした。
 

ただ、周りには、「バイリンガルなら、通訳になればいいじゃん」、とか、「(入国管理法をテーマに)論文まで書いたのに、もったいない」みたいなことも言われたな。
 

C:すごく力を入れた研究だったんだね。ちなみに、入国管理法には、どういう経緯で興味を持ったの?
 

S:自己研究を始めたときには、ちょうど永住権をとったばかりだったのね。でも、実は、うちの家族ってそれまでに永住権の審査を2回とか3回とか落ちてて。審査に落ち続けていたから、持ち家を買いたかったのに住宅ローンが下りなくて、ずっと借り家暮らしだったりだとか、色々苦労をしてて。
 

こんなに日本に長く住んでいて、素直に学校に通っていて、普通に生きていても、永住権一つだけでこんなに変わっちゃうんだ、って思ったから、もうちょっと知っておいてもいいんじゃないかな、と思って、調べ始めたことがきっかけ。永住権をとった今、それこそアルバイトも無制限でできるし、日本の出入りもラクになったし、やっぱり永住権って大きいよね。
 

C:そんなことがあったのか。将来的には、日本に住み続けるの?
 

S:これまで人生のほとんどを日本で過ごしていて、日本のことしか知らないから、これからの進路は、イギリスでファッション関連に進むことを考えてる。イギリスに帰ると、やっぱり嬉しいし、「ここで観光客じゃない気分になりたいな」って思うし、本当は普通にここに住める身分なんだから、住みたいなあ、って思う。
 

お母さんにこんなこと言われたこともあるんだ。私が、タトゥーを入れるかどうか迷っていて、そのときに「(タトゥーを)入れたら、日本社会で生きにくいよね」って相談したら、お母さんが「私はあなたにずっと日本で生きていてほしいなんて思ってないよ。好きな国に行きな」って。「だからタトゥー入れろよ」って。「入れて、自分でどこにでも行ける体制作れよ」って。(笑)
 

by Paul Hardy
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C:素敵なお母さんだね。じゃあ、最後に二つ。まず、日本以外のルーツを持っている人に対して、なにか感じていることがあれば。
 

S:私本人は、自分のイギリス人としてのプライドが、ちょっと強い気がするのね。イギリス人だって思われたいし、周りに「日本人っぽい」って言われることに対して、否定するのに頑張っちゃうときがある。でも、それは、自分の可能性を広げることにつながったのね。
 

私が、周りに「イギリスのことが好きなんだ」だとか、「私、イギリス人なんだ」っていうことを積極的に話すようにしていたら、周りもそう思ってくれるようになったし、私自身も、自分がイギリス人だっていう感覚が深まった。そういうふうにイギリス人としての自覚ができたときに、「日本にずっと住んでいるからって、私の将来が日本だけにあるとは限らないよね」って思うようになった。
 

ほかの外国人の人も、日本社会で暮らしていたら、日本人みたいになることもあると思うけれど、それに対して、「いやだな、私は○○人だから!」って思えるのは、自分の祖国とのつながりを消さない気持ちになるのかなって、思います。
 

C:それでは最後、もし日本社会に対して何か言いたいことがあれば。
 

S:両親が永住権で苦労したけれど、私自身は外国人として特に辛い思いをしたことがありません。外国人だからっていじめられたこともなかったし、外国人だからこそ与えられた機会も多かった。だから、日本社会って住みやすいなって思うし、言いたいことは特にないかな。
 

C: Sさん、ありがとうございました!

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この記事を書いた人

ケイヒル エミ

米韓ハーフ。日本で生まれ、小・中・高と日本の公立学校に通ったのち、アメリカの大学に直接入学。現在公共政策学部で、貧困・格差問題やジャーナリズムについて勉強している。「ハーフ」「外国人」の観点から情報発信をしたいと思ったのは、憧れの国だったアメリカで人種問題や移民問題に直面し、そこでの問題意識を、日本での自分の体験と照らし合わせるようになったことがきっかけ。今年中国への交換留学を控えており、大気汚染の影響を心配しつつもわくわく中。