就活に必要なコミュニケーション能力よりも大切なスキル。それは読解力

先月書いた「インターンするくらいなら、マックで4年間バイトしろ!」の記事に対して多くの反響をいただきました。
 

賛同、反対、批判、ご意見、アドバイスなど様々でしたが、SNS上で私が見た限りでは、社会人の方はおおむね賛成の方が多く、学生、特に現在インターンシップをしている大学生からは、不評だったようです。一方、大学生でもこれからインターンシップをしようかどうか迷っている人からは「悩んでいたので大変参考になりました」「飲食のバイトを辞めてインターンをしないといけないのかと悩んでいたのですが、この記事を読んで勇気をもらえました」などの感謝の言葉もいただきました。これはライターとしてはうれしい限りです。
 

私の意見が多くの方に届き、様々な反応が得られることはとてもうれしいのですが、正直、書き手の立場からすると「ちゃんと読んでくださいよ」と言いたくなることもあります。これには当然、私の文章力が低いという原因もあるわけですが、今回は自分のことは棚に上げて、物事を正しく読み解く力「読解力」について考えてみたいと思います。
 

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企業が学生に求める能力として「コミュニケーション能力」が挙げられることはすでに多くの方がご存知でしょう。就活生支援で有名なジョブウェブの佐藤孝治氏はTwitterで「採用試験でコミュニケーション能力を重視する会社が多いのはなぜか。それは仕事で必要なスキルや知識は社内の研修で伸ばしやすいのだけれど、コミュニケーション能力は研修でなかなか伸ばすことができないからです」と述べていました。まさにその通りだと思うのですが、私はコミュニケーション能力以上に重要なのは、実は「読解力」ではないかと感じています。
 

コミュニケーション能力というのは情報を発信するだけではなく、情報を受け取ってから返すという、受信と発信の二つの要素があります。大学生は情報発信の能力には優れている一方で、受信能力が低く、さらには受信能力を高めることをおろそかにしているのではないかと感じます。その受信能力の中の一つに「読解力」が挙げられます。
 

読解力が低い原因の一つとして「コミュニティの狭さ」が挙げられます。学生が所属するコミュニティは社会人のコミュニティに比べれば年齢、学力レベル、出身地などが狭くなりがちです。特にSNSでは、自分に近い考えだけを集めることもできるため、あたかも自分の考えが社会の多数派を構成しているような錯覚に陥ってしまうのです。そのため、自分の考えと違う意見に対して過剰に反応してしまうケースも見受けられます。
 

また、自分の経験と違う意見を見聞きした時にも過剰な反応をしてしまいがちです。私の「インターンするくらいなら、マックで4年間バイトしろ」に対して、インターンをしている大学生からの反対意見が多かったのが典型例です。私は記事の中で「目的もなくインターンするくらいなら飲食店でバイトをした方がいい」とか「IT系の企業ではインターンの学生エンジニアが活躍している企業もありますが、まだまだ主流ではありません。」と前提条件や特定の条件下での例外を認めたうえで意見を述べているのですが、それを知ってか知らずか「私はインターンでこんなに成長できたのに、この記事はおかしい!」「インターンシップの本質を何もわかっていない。ETICのインターンはそんなんじゃない」という反対意見がでてきます。それらは私が書いている前提条件を満たしていなかったり、特別な事例だったりするのですが、前提条件や事例の特殊性を考える前に、感情的に反応してしまっているように思えます。
 

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12月1日から就職活動が本格的にスタートし、就活生はエントリーシートを書く機会も増えるでしょう。年明けからは面接も始まります。そんなときに一つ理解しておいてほしいことは、情報発信だけではなくて情報を受信する能力、読解力も大切だということ。いや、むしろ情報を正しく読み解く力がない状態で情報発信にばかり力を入れることは危険だということです。
 

例えば、面接での質問に対して滞りなくこたえることが良いと思っている大学生は、情報発信を重視するあまり、読解力を疎かにしていると言えるでしょう。もちろん、ある程度事前に内容を考えたうえですぐに説明できるようにしておいた方がいいことはあります(1分間での自己紹介や志望動機など)。しかし、質問に対する受け答えというのは、その人の思考のタイプを見るものでもあるのですから、相手が何を考え、どんな意図で聞いているのかを考えてこたえることも重要です。
 

自分の例で恐縮ですが、私は新卒のとき面接で部活のことしか話さなかったので「部活以外で」という制限をつけて質問をされたことがあります。この時、私は一瞬こたえに窮したものの、部活だけで勉強やアルバイトなどをしていない学生ではないかの確認なのだなと思い、少し考えて大学のゼミとアルバイトでの経験を話して結果的に内定を得たことがあります。入社後に面接を担当した部長に聞いたところ「あの間で、部活を本気でやっていたこと、冷静に考えれば自分を客観的に振り返る思考力はあることがわかった」と言われました。あのとき、とにかくなんでもいいからこたえてしまえと思っていたら、違う結果になっていたかもしれません。
 

読解力を高め、情報を正しく把握するためのコツは「自分と同じ部分と違う部分を意識すること」、そして「どれくらい同じか、どれくらい違うか」を正確でなくてもいいので意識しておくことです。例えば、大学のサークルの先輩が成功した就職活動を参考にする場合、スケジュールはほとんど違いがないので、真似することができそうです。しかし、その先輩と自分との性格の違いや、趣味、考え方の違いがあることは意識しておくべきです。先輩は考えるよりも先に行動するタイプなのに、自分は状況を整理してから慎重に判断してから行動する場合では、いくらスケジュールを真似したところで、思考の違いから面接官の持つ印象は異なるでしょうから、結果も変わる可能性が高いでしょう。
 

この場合「必勝スケジュールがある!」と言われても、スケジュールを実行した人と自分との共通部分と違いを意識して、自分なりに微調整することが重要です。ただし、注意は人との違いをネガティブに捉えないこと。違いは違いであって問題ではありません。違うなら違うなりのやり方をすればいいのです。だから、コミュニケーション能力に自信がない人、自信はあるのにうまくいかない人は読解力に磨きをかけてみてください。コミュニケーション能力を情報発信だけと勘違いしている痛い大学生なんかよりもずっと魅力的になりますよ。
 

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この記事を書いた人

井上洋市朗

「なんか格好良さそうだし、給料もいいから」という理由でコンサルティング会社へ入社するも、リストラの手伝いをしてお金をもらうことに嫌気が差し2年足らずで退職。自分と同じように3年以内で辞める若者100人へ直接インタビューを行い、その結果を「早期離職白書」にまとめ発表。現在は株式会社カイラボ代表として組織・人事コンサルティングを行う傍ら、「生きづらい、働きづらい環境を変える方法」についての情報発信を行っている。