夏になると、パラリンピックを目指して泳いでいた頃を思い出します。もともとは、初めて行ったプールで泳げなかったことが悔しくて、何とかして泳げるようになりたいと思ったことがきっかけでした。長い距離が泳げるようになった、今までより速く泳げるようになった、そんな小さな成功体験が気持ちよく、気がつけば競泳の世界へ没頭。がむしゃらに泳いだ10代でした。
しかし、僕のタイムではパラリンピックへ行くことはもちろん、世界で戦うなんてどう考えても難しいという現実がありました。「自分の実力で障害者スポーツの世界では到底メシは食えない」という確信が就職活動を始めるタイミングと重なったこともあり、20歳できっぱりと水泳を辞めました。
水泳を辞めた後、アスリートだったことが疑われるくらいここまで贅肉を蓄えてきました。このままだと非常にマズい。そこで、義足を履く、両足が不自由な僕が挑戦できるスポーツがないかと思い、自分がやりたいものが3つありましたのでご紹介します。障害者スポーツを知るという観点でも面白いと思います。
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【1】アンプティサッカー
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足や手を切断した(日常生活では義足や義手を身につけている)方向けのサッカーが、このアンプティサッカーです。義足を脱ぎ、クラッチと呼ばれる杖を使ってフィールドを駆け回ります。ゴールキーパーは手を切断した方が担います。ルールは通常のサッカーに準じます。
youtubeの動画で0:45(開始45秒)頃から、実際の試合のシーンを見ることができますが、クラッチを器用に使い移動し、巧くサッカーできるものなのだなと感じました。実は、一度だけ生で観戦したことがあるのですが、クラッチを軸足代わりにフリーキックを蹴った瞬間は鳥肌が立ちました。
2010年に日本に入ってきたという新しいスポーツ。通常のサッカー同様、ワールドカップも行われています。協会サイトはこちらです。
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【2】シッティングバレー
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シッティングバレーは床に臀部の一部が着いた状態で行うバレーボールです。シッティングというだけあり、立ち上がること、飛び跳ねることは禁じられています。この競技での臀部というのは、お尻のことではなく、肩からお尻までのことを言います。
障害者だけのスポーツというわけではなく、健常者も混ざってプレイすることができます。どうしても身長や跳躍力といった高さに左右されがちの通常のバレーボールと比較して、ルールによって動きが制限されますが、より平等な条件でバレーボールとして楽しめるかもしれません。
1950年代に考案され、1980年にはパラリンピックの競技種目となっている、障害者スポーツとしては歴史のあるスポーツです。協会サイトはこちらです。
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【3】ペタンク
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ペタンクは6m〜10m先の的に向かって鉄球を投げ、的に近い鉄球の数が得点となる競技です。個人戦やチーム戦があり、勝敗がつきます。陸上版のカーリングとイメージして頂くといいかもしれません。ルールはこちら。
発祥地のフランスでは600万人近く愛好者がいると言われ、老若男女が楽しめるスポーツとして有名です。障害者スポーツではなく、誰もが楽しめるスポーツです。動画でもありましたが、スピンを利かせて球を投げたり、的に向かって投げるコントロールが求められたりと、テクニックや精神力に左右されるスポーツです。
義足を履いている僕にとって屈む体勢が難しいので、杖をもって投げる・投げ終われば球を投げるサークルから足を出してもいいといったルールが付け加えられれば問題なさそうです。障害者でもストレスなくできるように工夫を考え、障害当事者が提案することは大事だと考えます。協会サイトはこちらです。
私自身、運動が好きなので、障害者でもできる・義足を履いていてもできるスポーツは、自分の情報網の中に入ってきます。ここまで3つのスポーツを取り上げましたが、実はいずれも元々知っているものでした。記事を書くにあたり、さらに調べていくと、やりたい気持ちがウズウズしてきました。
また、過去を振り返れば、自分の装具を作ってくれていた義肢装具士さんが、車いすバスケットボールをやっていたことで、両足が不自由な僕でもチャレンジできるスポーツをたくさん教えて頂きました。自分に合っていたものが水泳だったから、没頭していたのです。
皆さんはパラリンピックで行われている競技をどれだけ知っていますか?パラリンピックという言葉はだいぶ有名になりましたが、その競技はそこまで知られていません。ほとんどの競技を知らない状態、つまり情報を持っていない状態で、自分の子どもに障害があったとしたら、子どもにスポーツを勧めることができるでしょうか。
障害者がスポーツを始めるきっかけは、出会いの運に頼らざるを得ません。試しに「障害者 スポーツ」で検索して頂けると分かりますが、障害者スポーツ協会のサイトばかりです。これは自治体のものであり、競技別ではありません。自分が欲しい情報を見つけるためには、さらに時間がかかります。インターネットが普及した今でさえ情報収集が難しいのに、Wikipediaがない一昔前を考えると、運に頼らざるを得なかったことを忘れてはいけません。今日の記事が誰かがスポーツを取り組むきっかけにつながれば嬉しいです。