どこを見て、誰のために改革するんだろう。

赤字系、青字系、肉食系、草食系など…

人の容姿や性格、特性などにフォーカスして、

○○系というカテゴライズをすることはよくあります。

誰が考えるのかはわかりませんが、言い得て妙だなと思います。

当然すべてがその通りではありませんが、遠からずだなと思います。

 

そういう意味で言うと、容姿の系統と中身の系統が一致しない、

ギャップの大きな女性が好きな私は生きづらいなーと思う今日この頃。

皆様、いかがお過ごしでしょうか。

 

さて本日は「就活4月解禁へ」というニュースについてです。

企業の採用開始が、2011年に12月解禁になったばかりですが、

今度は4月になる動きが出てきているようです。

一体どうなってしまうのでしょうか。

 

20130328どこを見て、誰のために改革するんだろう。

 

2013年3月28日の産経ニュースさんの記事です。

http://sankei.jp.msn.com/politics/news/130328/plc13032810590005-n1.htm

 

どうやら政府が経団連に働きかけ、就職活動の解禁を4年生の4月にし、

選考活動を4年生の8月からに遅らせる動きがあるようです。

はたしてこの動きはどのような影響を与えるのでしょうか。

 

まず就活のスタートを4月にする意図についてです。

記事にもありますが、就活に1年以上の時間を費やしている現状を改善し、

 ・学業に充てる時間を増やし、学力向上を図る

 ・キャリア育成を重視し、即戦力の人材を育成する

 ・留学生に対して採用の間口を広げる

という意図があるようです。

 

確かに学生の本分は学業であるというのはもっともだと思います。

また各大学がキャリア教育に力を注いでいるという風潮や、

留学生の帰国時期、東京大学の秋入学への動きなどを考察しても、

この改革は自然な流れのように思えます。

 

しかし私はこの改革はいかがなものかと考えています。

その理由をいくつかお話ししたいと思います。

 

 

理由1:中小企業の採用難易度の向上

選考の開始が8月になると、必然的に内定のピークが

9月、10月頃にずれ込みます。

そうなると中小企業が新卒採用に取り組む場合、

大きく2つの流れが生まれることが予想されます。

 

——————————————-

① 時期を早め、8月前に選考を行う事で青田買いする。

② 内定のピーク後の11月以降から選考を行う

——————————————-

 

①を選択した場合、大手企業がライバルとしていなくなるため、

一見有利に採用活動が進められるようにも見えます。

しかし実際のところは“試し受験”が殺到して、

非常に多くの人的、時間的、金銭的コストが垂れ流される可能性があります。

 

さらに問題なのは、大手企業から内定の出た学生が、

4年生の年末に中小企業を辞退するのが予想される事です。

そもそも採用人数が少ない中小企業にとって、

1人でも内定辞退が出るというのは致命的です。

ましてそれが残り3か月という時点で起こったならば、

そのダメージは計り知れません。

 

しかし人材戦略上、採用人数は重要な要素の1つであり、

そう簡単には「辞退も仕方ないな」と言えません。

そのため辞退者が出てしまった企業は年末年始にかけて、

採用活動を再開する事を余儀なくされます。

 

勘の良い方は既にお気づきかもしれませんが、

このような状況に陥ってしまった場合、

実質、1年間に2度の採用活動を行う事になるわけです。

これが企業にとってかなりの負担になる事は間違いありません。

 

そしてもう1つ。

それは中小企業の採用担当者さんが採用だけでなく、

他の人事労務系の役割も兼任しているケースが多いことにあります。

そうなると配置転換や転勤、評価などの業務が避けられない年度末は、

ほとんど身動きが取れないのが現実です。

そうなると実質的に残された時間がわずかな事は、

容易に想像できる事と思います。

 

また②を選択した場合、①で想定される一部の懸念は払しょくされます。

しかしその反面で学生からの発見率が下がるという問題が想定されます。

ただでさえ大手企業と比べて発見率が低い企業が多いにも関わらず、

広報期間が短くなり、同じ時期に活動する企業が集まることによって、

ますます状況は厳しくなっていきます。

 

つまりこの改革は中小企業をさらに追い込む危険性を孕んでいると

言えるのではないでしょうか。

 

 

理由2:学生にとっての負担増大

さてここまでは企業側の目線から考えてみましたが、

次は学生の目線から考えてみます。

 

確かに学生から見れば、就活が1年以上の長丁場になるのは、

精神的にも肉体的にも、学業的な側面から見ても辛いことでしょう。

実際に私もそのような様子を多く目の当たりにしてきました。

そう考えると就活の短期化は喜ばしいことと言えます。

しかしそれにも落とし穴があると思えてなりません。

 

これは全ての学生に当てはまるという訳ではありませんが、

現在の動向を見ていると、前期試験や夏休みを境に、

卒論に取られる時間が多くなっていくように見受けられます。

そうなると学生が最も専門性を追求し、学びを深めるタイミングで、

就活に多くの時間を割くという事になりかねません。

これでは学力向上という大義名分を果たすことができず、

本末転倒になってしまう可能性があります。

(専門性を追求しても社会では役に立たないとするならば話は別ですが…。)

 

またそうなると学生にかかる負担が大きくなり、

結果として就職浪人(※)を選択する学生が増えることも予想されます。

(※就職浪人:単位を取得せず卒業を延期して、翌年の就活にのぞむこと)

 

そして私が一番懸念している事は、内定を目的にする学生

増えるだろうという事です。

前回の記事でも書きましたが、

私は就活とは“幸せになるための活動”と考えています。

内定を取ることが目的ではなく、幸せになるためには何が必要かを考え、

それを掴みとる活動である事こそが本質であると。

 

ところが就職が決まらず卒業が近づいてくると、

「とにかく就職する」という事をゴールにする学生が増えることは

間違いありません。

 

もちろん現在もその傾向は否定できません。

問題なのは社会構造として、就活開始から卒業までの期間を短くし、

その状況に陥りやすい環境を作り出すことはないかと思うのです。

 

 

 

さてここまで、このようなことが起こるのでは…?

というお話をさせていただきました。

もしこれが現実となるならば、学生は不安を感じ、

自主的に就職に向けた活動を始めるでしょう。

当然、それをサポートするサービスも続出する事と思います。

一方で企業は一般的な採用活動とは別の動きで、

学生の囲い込みを始めるでしょう。

 

さてこうなってくると学生が就職活動にかける時間は、

本当に短くなるのでしょうか。

短くなったように見えるだけではないでしょうか。

 

そう考えるとこの改革は本質的に何を解決するのか、

私にはよくわからなくなってきます。

果たしてどこを見て、誰のためにこの改革を行うのでしょうか。

 

皆さんはどうお考えになりますか?

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この記事を書いた人

坂本啓介

小学校の恩師に憧れ、教師こそ天職と信じ教員免許を取得するも、学校教育と社会が求める教育に差を覚える。勉強を教えることだけが教師の仕事なのか?人生経験をもとに子どもたちの土台を作ることが仕事ではないのか?伝えたいこと・必要なことを、声を大にして発信することは求められていないという教師の現実に葛藤を覚える。
自分の想いを堂々と、声を大にして発信する学び場を作るべく、2012年2月、神保町大学を設立。「考えるって楽しい」をコンセプトに、通常の教育機関が言わないタブーに挑み続ける。