新入社員に告ぐ。こんな時はさっさと会社を辞めなさい。

4月といえば新入社員の入社シーズン。もしかしたら、この記事を読みながら入社式から帰ってきている新入社員の方もいるかもしれません。
 

私の本業は早期離職防止コンサルティングですので、新入社員が辞めないように企業のお手伝いをするのが仕事ですが、そんな私でも「こんなときはさっさと会社を辞めたほうがいいよ」と思うこともあります。これは、コンサルティング業務を通じてというより、早期離職者への100人インタビューをしてみての感想ですが、今回は敢えて入社シーズンのこの時期に私の考えをお伝えします。
 

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まず、誤解なきように説明しておくと、私は新卒入社から3年以内の退職は、基本的にあまりおすすめしていません。なぜなら、日本の労働市場においては、3年以内での退職経験はネガティブな要素としてとらえられることが多いからです(個別ではもちろんそうではない事例もたくさんありますが、あくまで全体傾向としての話です)。
 

また、新卒でないと入社するのが極めて困難な会社というのも実在します。一部のエリートの方々が「会社なんて3年で辞めろ」と言っていますが、マッ〇ンゼーとか入れる人たちが一般的な学生の現状を正しく理解できているとは到底思えません。ですから、多くの日本人にとっては企業は3年以上勤めたほうがリスクが少ないというのが私の考えです。しかし、それでも辞めたほうがいいと思う場合があります。それが以下の3つです。
 

【1】しばらくの間、仕事がなくても生活できるだけの資金的余裕がある

【2】仕事がつらくて自殺を考えたことがある

【3】明らかに身体に変調が起きている

 

【1】は現実問題としてかなり重要な条件です。資金的余裕というのは預貯金があるというだけでなく、実家暮らしなので衣食住の最低限は保障されているなどの場合も含みます。また、アルバイトで食いつなぐという意思があるのならそれでもOKです。いずれにしても、生きていくためのお金は必要です。金額ですが、正社員として雇用されていれば個人都合の退職でも3か月後から雇用保険が支給されます(支給要件があるので要チェック)ので、最低限3か月分の生活費だと考えます。
 

資金的な面が克服できたとして、次に考えるのが【2】と【3】です。
 

【2】は「現時点で自殺願望がある」というよりも、もう少しハードルが低く「一度でも自殺したいと本気で思ったことがある」とでも言った方がいいでしょうか。私もコンサルティング会社時代に同期と冗談で「明日、クライアントの工場で火事起きないかな?」とか「死なない程度に飛行機落ちないかな?」などと言っていたこともありますが、こんなレベルは含みません。
 

ただ、自殺願望とまではいかないまでも、数か月間「現実逃避」ばかり考えているようなら退職を考えて良いでしょう。私も辞める3か月前頃から「交通事故で骨折したらプロジェクト休ませてもらえるかな?」なんてことを毎日考えていたことがあります。最終的には打ち合わせ中に突然涙がとまらなくなる程に自律神経がやられてしまい、退職することになりました。
 

また、【3】のような身体的な変調も見逃すことはできません。私がインタビューをした中では、女性に多かった印象があります。そして、女性の方が頑張りすぎる傾向にある気もします。朝起きることができない日が続く、通勤途中に吐き気がする、などの場合は一度仕事を休むことが必要です。そのうえで仕事の継続が難しいと考えれば退職するのもアリです。
 

理想を言えば、上記の【2】や【3】の状態になる前に辞めた方がいいのですが、それは非常に判断が難しいところです。ただ、うつ病なども重度のものになると、その後の転職活動などに支障をきたす可能性が高いため、早めに見切りをつけられるかどうかは重要です。私の場合は、涙が止まらなくなった状態が2回続いた時点で「もう辞めます」と部長に伝えました。翌月末での退職となったので、傷があまり大きくならないうちに転職活動をはじめ、週に2~3回面接に行くのがいいリハビリとなって、1か月程で無事に転職先も決まりました。
 

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一方、以下のような理由で辞めることを考えている場合は、少し周囲に相談して視野を広げてみることをおすすめします。
 

・会社の将来性が見えない ・上司とうまがあわない ・配属先が希望と違う ・仕事内容がイメージとちがう
 

・給料が安い ・社内でのキャリアが見えない ・仕事がおもしろくない ・社会に貢献する仕事がしたい
 

個別の理由については割愛しますが、納得いかない!という場合にはTwitterで@yoichiro_i宛にご意見ください。
 

いずれにしても、私は命や心身の健康は仕事よりも優先しなくてはならないと考えています。ですから、自殺を考えたり、体調がおかしい場合には迷わず辞めて良いのです。でも、それ以外の理由であるなら、大抵の場合は目の前の仕事に取り組んでいると自然と辞めたい気持ちは消えていきます。
 

特に、入社直後と3年目になった直後の時期は、環境変化や周囲に転職する人が増えてくる時期のため「転職処女」の方々は転職をしてみたくてたまらない気持ちになることがありますが、自分を安売りしない方がいいでしょう。転職ヴァージンは失ったら二度と戻ってこないのですから。自分の大切なものを捧げる相手は真剣に考えましょう。
 

入社式が終わって「社長の言葉に心が震えなかったから辞めます!」というのもカッコイイ生き方ですよね。それもアリだと思います。きっと成功している人もいることでしょう。でも忘れてはいけません。成功者の陰には同じような行動をして失敗していった名もなき人たちがいることを。
 

それでも、どうしても無理だ辞めたい、いや辞めなくてはならないと思ったのなら、胸を張って辞めましょう。誰にも文句を言われる筋合いなどないのです。
 

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この記事を書いた人

井上洋市朗

「なんか格好良さそうだし、給料もいいから」という理由でコンサルティング会社へ入社するも、リストラの手伝いをしてお金をもらうことに嫌気が差し2年足らずで退職。自分と同じように3年以内で辞める若者100人へ直接インタビューを行い、その結果を「早期離職白書」にまとめ発表。現在は株式会社カイラボ代表として組織・人事コンサルティングを行う傍ら、「生きづらい、働きづらい環境を変える方法」についての情報発信を行っている。