義足のジャンパーが世界新記録。五輪に出れるの?

5月16日にスペインのバルセロナで行われた障害者の国際陸上大会にて、走り幅跳びのロンドンパラリンピック金メダリストであるドイツのマルクス・レーム(Markus Rehm)選手が、自身が持つ世界記録を5cm上回る8m29cmという記録で優勝、新しい世界記録が生まれました。
 

この記録は、2012年のロンドンオリンピックに出場するためのA標準記録(8m20cm)を上回っており、パラリンピック選手でありながら、オリンピックに出場したとしても戦える状態であることを意味しており、マルクス・レーム選手自身、健常者選手とともに出場した昨年のドイツ選手権で優勝を果たしています。ちなみにこの記録を日本国内に当てはめて比較すると、1992年に森長正樹選手が出した8m25cmという日本記録を超えていることが明らかになります。
 

 

youtube(2014年の大会動画)を見れば分かりますが、彼はカーボン製の義足を履いて競技を行っており、生足とは異なる推進力が生まれていることは間違いありません。踏み板を義足で踏んでいることからも分かるように、健常者選手とまったく同じ状況下で生まれた記録かといえば、同じだと声を大にして言うことは難しいものがあります。そのような背景から、彼がオリンピックに出場できるのか否かという議論は、記録が伸びれば伸びるほど生まれてきている状況にあります。
 

2012年のロンドンオリンピックでは、南アフリカのオスカー・ピストリウス選手が男子400m、男子4x400mリレーのメンバーとして出場し、オリンピック・パラリンピックの双方に出場した選手として話題に上がりましたが、彼もまた、ロンドンの前開催である北京オリンピックの際には、カーボン製の義足の推進力の問題からオリンピック出場にNOが出たという背景があります。マルクス・レーム選手も同様で、健常者も含めたドイツチャンピオンでありながら、健常者側の代表選出は見送られている過去があります。
 

健常者と障害者を平等に扱うという観点では、同じ試合やレースに出場させるという機会が必要かもしれませんが、競技の公平性という観点で言えば、別々にする必要があるということもまた事実。競技の種類や特徴によって様々ありますが、オリンピックとパラリンピックの意義、違いというものが、技術の発展によって揺らいできていることは間違いないのかもしれません。
 

(参考記事)
World records smashed by European stars | Official website of IPC Athletics(2015.5.18)
http://www.paralympic.org/news/world-records-smashed-european-stars

義足のロングジャンパーが8m29cmの世界新!| yahooニュース(2015.5.18)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150519-00010000-kanpara-spo

走幅跳 | wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%B5%B0%E5%B9%85%E8%B7%B3

技術革新によって障害者が障害者じゃなくなる日。例えば、攻殻機動隊の世界が現実になったら。
//plus-handicap.com/2015/01/4738/
 

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