ママとパパ、それぞれに必要なサンクスカップルという考え方。

「産後の数か月は、出産時の身体的な傷を治す時期になります。その時期はホルモン量の変化もあり精神的な不調(マタニティブルー)を訴える方もいます。例えば、なんだか悲しくて涙が止まらない、イライラをコントロールできない、そわそわと落ち着かない。そういった症状が出ます。どういう症状がどれくらいの度合いで出るかは個人差があります。」
 

産婦人科の病院や自治体で2013年ごろから行っている両親学級(パパママ教室)で話している内容の一部です。
 


 

「本当は心身ともにゆっくりしたい時期ですが、子どもから目を離せない・家事も育児もやらないといけないといった、慣れない慌ただしさを抱える時期にもなります。この頃は、ママが独りで頑張りすぎないように、パパが支えてあげてください。」
 

最近は何も言わなくても産前産後のママを支えることを当然と考えるパパがどんどん増えていて、こんな話をしなくても大丈夫な雰囲気を感じる時さえあります。ただ、数年前まではここまで言えば良かったのですが、最近は課題が少し変わってきたように感じていて、続けてこんな話をするときがあります。
 

「パパにはもちろんママを支えてほしいのですが、ママにもお願いがあります。パパの大変さも考えてみてください。業種や勤め先にもよるとは思いますが、子どもが産まれる年齢に差し掛かった男性は業務の量も責任も増え、部下や後輩も増え、どんどん忙しくなってくる頃です。平日は朝早くから夜遅くまで働き、休日に『平日子育てを頑張ってくれているママに休んでもらうために、子どもを連れてどこかに行こうかな』と考えてくれる男性も増えています。とてもいいことだと思いますが、平日はずっと働いていて、休日も子どもを連れて稼働する。では男性はいつ休めばいいんでしょうか?家族想いの熱心なパパほど、仕事も家族も全力投球になりやすいですが、それが元で体調を崩してしまっては本末転倒です。冗談抜きにいつかイクメンやって過労死する男性が出るのではないかと心配しています。」
 

産むのはママ、パパはサポーター。ママの方が明らかに大変です。およそ280日お腹の中でわが子を育て、全力を振り絞って出産に臨みます。男性には想像できない、筆舌に尽くしがたい大変さがあります。でも、だからこそ敢えて言わせて下さい。「女性は命を懸けて子どもを産むんです」と言われてしまうと男性は何も言えることがありません。しかしながら、「『女性の方が大変=男性は何も大変ではない』は誤り」です。女性の大変さが100だとしたときに、男性にも70か80くらいの大変さはあるんです。
 


 

やってもらえて当たり前のことなんてない。

 

「パパからしてもらえたことはたくさん思い浮かんだのに、パパのために自分がしたことは何も思いつかなかった。でもそれじゃ相手だって疲れちゃうよね」
 

昨年、両親学級を受講したママが言ってくれました。パパがママを気遣って支えるという価値観は若い夫婦の間で確実に根付いています。けれども、パパも人間です。やっているだけでは疲れてしまいます。時には「ありがとう」というたった一言をかけてもらいたい日もあります。やってもらえて当たり前のことなんてないのですから。もし、当たり前のものに囲まれて日々を送れている人がいるとすれば、その陰には当たり前ではないはずのものを当たり前にしてくれている誰かがいるんです。
 

はっきり言いますが、完全に夫婦二人だけで子育てをするのはけっこう無理ゲーです。お互いいっぱいいっぱいになって相手を怒鳴ってしまうこともあると思います。無い物に目を向けて不満を言い、相手がしてくれなかったことに文句を言うのは簡単です。でも、文句を言っても何も変わりません。
 

それなら、相手がしてくれたことに目を向けて感謝してみてはどうでしょうか。パパだってママだってそれぞれに大変な毎日を送っています。どっちが大変かという「紅白つらい合戦」は止めて「お互いに大変だよね。助け合おうよ。」という方向に行くほうが良いのではないでしょうか。
 

幸運な偶然で出会って、好きだと思って結婚した相手なのですから、いがみ合うより一緒に前を向いて暮らしていける工夫をするほうがいいと思います。パパもママもお互いに相手がしてくれたことに目を向けて感謝してほしいと個人的には思っています。そうできるカップルを「サンクスカップル」と名付けて絶賛広め中です。
 

どうすればハッピーになれるかは二人で見つけるしかない。

 

外での労働と家庭内労働は、夫婦間でどれくらいの割合で分担するのがいいんでしょうか?それは家庭ごとによって違います。イクメンすることは良いこと・しないことは悪いこととも言い切れず、その良し悪しは家庭の実情ごとに異なると思います。
 

「イクメンは良いこと」という意見だけを尊重するのではなく、自分の家庭はどうなったらハッピーなのかを夫婦で考えて決めていくことを何よりも大事にすることで、パパにとってもママにとっても、暮らしの満足度や幸福度が上がるのではないでしょうか。
 

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この記事を書いた人

柳田 正芳

1983年神奈川県生まれ。大学時代に「大学生が大学生に性の知識を届けるインカレ団体」の事務局長。卒業後、一般企業での就業を経て紆余曲折ののち、大学時代の経験をもとに「若者の性のお悩み解決をする団体」を起こす。活動を進める中で「日本の男性の生きづらさ」に気づき「男だって生きづらい」を解決する活動も立ち上げたり、産婦人科の病院や自治体で「夫婦のコミュニケーション」をテーマにしたワークショップの講師業などもおこなっている。