支援する側もされる側もモチベーションが保てる支援を考えるーなんとカンファレンスゴールデンレポートその2ー

2016年8月28日(日)に畿央大学(奈良県)で行われた『なんとカンファレンスゴールデン』のイベントレポートの第2弾です。昨日公開した第1弾とセットで読んでいただければと思います。
 

筆者のカフェのポスターです。
筆者のカフェのポスターです。

 

『笑ってゆるして』という名の分科会

 

午後からはカフェ形式で分科会が始まりました。分科会といっても、机と黒板、そして議長とにらめっこしてというような堅苦しいものではありませんでした。お茶を飲みながらまったりゆるゆると障害支援について話し合っていました。
 

今回は私もカフェマスターとして分科会を取り仕切っていたので、他のカフェを覗くことはできませんでした。ですので、記事の中では私が取り仕切っていたカフェについて紹介させていただきますことをご了承ください。
 

私がやっていたカフェのコンセプトは「どうすれば支援する側もされる側もお互いに笑って過ごせるかを考える」というものでした。介護職や自助会のスタッフとして支援する側にいる一方で、発達障害者として支援される側にもいる私がいつも思うことがあったのです。それは「支援においてどちらか一方が笑えない状態に陥ってないか」ということです。
 

支援する側は時折、精神的・肉体的負担を強いられる状況に陥ることが現実としてあります。支援される側(ここでは障害者を指します)は「助けてもらってるから」と思って、希望やちょっとした不満を言えずに苦しくなり、支援を遠ざけてしまうこともあったりします。そういった状況をどうすれば解消していけるか、またお互いの失敗をどうすれば笑いあえる環境ができるのかを参加者とともに模索していきました。
 

写真上:カフェの様子 写真下:ふせんワークの様子
写真上:カフェの様子
写真下:ふせんワークの様子

 

前半は『実録!!笑える失敗談!!』と題して支援に関する「あちゃー」と思ったことを上げていきました。全体的に和やかだと思える失敗談を上げていただけたことで、お互いに笑って過ごせる要素が見つけ出せました。ところが後半の『笑える支援を真面目に考えよう!!』では、日本の障害支援の現状が浮き彫りとなりました。
 

・役所へ行けばたらい回しにされて支援に繋がるまでに時間がかかる
・支援が一本化されていない
・どこへ何を頼めばいいのかわからない
 

支援を受けるまでにたくさんの障壁があって、適切な支援が受けられないことが起こっていました。支援する側もされる側も笑いあって過ごすには、個人の資質だけでなく支援制度のシステムにもう少し切り込んでいかないと実現できない部分があるのだと思い知らされた1時間50分でした。ゆるくまったりと語り合うつもりでプログラムを組みましたが、思った以上に熱く語り合うことになりました。
 

グダグダだけど真剣。それがなんとカンファレンス。

 

クロージングのアンケート。
クロージングのアンケート。

 

クロージングは、ふせんに自分の言葉を書きながら、模造紙に貼り付けていくものでした。私はアンケート用紙を渡されて、回答したら主催者側に渡して後日統計をもらうスタイルを想像していましたが、これだとその場で他の参加者さんが考えていることを見られる上に、イベントの全体像をその日その場で参加者全員が把握できるので、とてもいいアイデアだなと思いました。このアンケートの回答の中から印象に残ったキーワードを2つ上げて、私が思うことを書きます。
 

個々に合った支援が求められてます。
個々に合った支援が求められてます。

 

デザインする発想。人もモノも生き方も。

 

障害支援のあり方について問う質問です。個々に合わせた支援を計画するのは、デザイナーが服を作る感覚に似てるなと私は思います。何かを生み出すときは試行錯誤を繰り返しながら模索していきます。「支援計画立てなくちゃ…」では支援者もモチベーションが保ちにくいけど、「あ、デザインしようか」だったらウキウキできる部分も出てモチベーションが保てるかなと思います。
 

時には肩の力抜いて考える場所があってもいいのでは?
時には肩の力抜いて考える場所があってもいいのでは?

 

ぐだぐだだけど真剣。

 

“なんとカンファレンス”がどういう場所かを問う質問です。福祉職だけでなく、福祉に関係しない職業の方もごっちゃ混ぜで、幅広い年齢層が集まる福祉のイベントはなかなかないように思います。私もカフェマスターとして参加させていただきましたが、カフェを進めていくなかでも私自身がグダグダな状態であるにも関わらず、参加者さんがフォローをしてくださって無事に進行ができました。”なんとカンファレンス”は参加者さんがデザインしていく福祉のイベントかなと思います。
 

つながれば楽しくなる。でも…。

 

『なんとカンファレンスゴールデン』に参加して、いろいろな立場の方と繋がることができたので、いい刺激になりました。カフェマスターとして2ヶ月間準備に携わり、イベントが無事に終わって晴れ晴れな気持ちになったのも束の間、私は夏休みがもう一年続くような気分に襲われました。
 

“なんとカンファレンス”の中で潜在的な問題を気楽に見つけていったはずが、支援のあり方についての宿題が私の頭の中で残りました。恐らく数年単位で取り組まないといけない宿題ですが、来年の夏までには一つでも障害支援に対する答えが出せたらと思いました。
 

おまけ:筆者いち押しの支援グッズー楽しいうれしいをつなげるグッズー

 

『なんとカンファレンスゴールデン』では、支援グッズを作っている企業や団体の展示・販売もありました。当日は10団体展示されていましたが、記事のスペースに限りがあることもあり、私自身が興味をもったグッズを厳選して紹介します。
 

●もこもこアート®【製造:株式会社一歩(はじめ)・販売:株式会社のぎす
 

手に持っているのがシートの一部です。
手に持っているのがシートの一部です。

 

もこもこアート®はスポンジ製のシート。EVA樹脂で出来たシートの裏に粘着剤が貼られていて、シートから剥がして組み立てることで手先の巧緻性を養うとともに、造形能力も養われます。私が勧めるポイントは、スポンジ自体が肉厚であるため、視覚障害者の支援に使えるということです。テレビのリモコンはスイッチの大きさが違いますが(電源ボタンは大きいとか)、もこもこアート®を使えば同じような特徴を作り出せます。
 

また、他の利用例として、小学生がリコーダーの一番下を押さえるときに指が届かず、うまく押さえることができなかったのが、もこもこアート®を指に貼ることで、軽い力できっちり音を出せるようになったという話を参加者さんから聞きました。
 

後日、シートを使って大仏を作ってみました。
後日、シートを使って大仏を作ってみました。

 

貼り合わせることができるので、上の写真のように立体的な作品を作ることもできます。私は発達障害が原因で、手先がものすごく不器用ですが、貼るだけで作品が出来上がるので小さなお子様でも簡単に作ることができます。
 

いーリーダー【開発・販売:シナノケンシ株式会社
 

タブレットに入れて読み上げもできます。
タブレットに入れて読み上げもできます。

 

読むことに困難のある子どもを支援するためのアプリです。文部科学省の平成26年度「学習上の支援機器等教材研究開発支援事業」を受託し、教育委員会や学校等と実証研究をすすめて開発されました。
 

私が勧めるポイントは、ハイライトによってどこを読んでいるかわかること、画面のコントラストを簡単に変えられることの2点です。私も視覚過敏があり、教科書体が読めずに困っていたので、小学生の時にこれがあれば一人で勉強できたのにと思いました。
 

現在はiPadのみ対応しており、アプリの価格が3000円するので家庭で導入するには気軽ではないかもしれませんが、障害のある子どもに対しては補助がついて、無料でダウンロードが出来ればと切に願います。アプリの詳細についてはタイトルのリンクよりご確認ください。
 

他にもたくさん支援に使えるグッズが展示されていましたが、この記事の中でだけでは紹介しきれないので別の機会に紹介できればと考えています。
 

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この記事を書いた人

東田愛子