一昨年、「新入社員に告ぐ、こんな時はさっさと会社を辞めなさい」という記事を書いたところ、大きな反響をいただきました。今回は「新入社員に告ぐ」シリーズ(?)の第二弾として「君たちは無価値だ!」ということをお伝えしたいと思います。
4月1日。期待と不安が入り混じりながら社会人のスタートを切ったばかりの新入社員のみなさんはたくさんいると思います。私も新入社員の頃はそうでした。もともと自信過剰気味の私は、あまり口には出さずとも「バリバリ働いて、出世してやるぜ!」という気持ちを抱いていました。
そんな気持ちは入社3ヶ月目、座学中心の研修期間が終わり、部署に仮配属という形で配属されてすぐにぶち壊されます。先輩たちに比べて、あまりに何もできない自分に愕然とするのです。知識、スキル、体力(考え続けられる意味での)、仕事への熱意、何をとっても自分との間にあまりに大きな差がありました。
私を一番苦しめたのは、力の差があることよりも、力の差があると素直に認められない自分自身でした。「自分の力はこんなものではないはずだ」「環境が変われば、自分の能力は発揮できるはずだ、悪いのは今の環境だ。」そんなことを思いながら仮配属期間が終わることばかり考えていました。
現在私は、早期離職防止コンサルタントという立場から社員研修なども担当しています。対象者はOJT担当や新任管理職の方が多いのですが、新入社員の研修を受け持つ機会もあります。
私の個人的な感想ですが、ここ数年の新入社員のみなさんは総じて優秀だと思います。大学でのキャリア教育や就職活動支援の充実などもあり、スキルもマインドも自分が新入社員のときに比べると数段レベルが高いと感じます。特に、早くから結果を出そうとする姿勢は強いと感じます。大企業でも安泰とは限らない時代にあって、会社の中でゆっくりとキャリアを積んでいくのではなく、少しでも早く結果を残して自立したいという考えを明確に表明する新入社員もいるくらいです。
こんなことを書くと「うちの周りにはそんな優秀な社員はいない」という方がいます。そういう方には「魅力のない人間の周りには、魅力のない人間しか集まらないんですよ。」とお伝えしています。
話がそれてしまったので、本題に戻します。
私が新入社員のみなさんに知っていただきたいのは、現時点でのあなたたちは会社にとって価値がないということです。新入社員のみなさんが優秀だと思うからこそ、これだけは知っておいてほしいのです。
中には「自分は価値がある」とか「他の新入社員とは違う」と思っている方もいるかもしれません。もし、価値があるならば、なぜ他の新入社員と同じように4月1日入社で研修を受けて、他の新卒と同じ扱いを受けているのでしょうか?価値を発揮できるなら、雇われるのではなくて自分で事業をやればいいのではないでしょうか?それができないということは、社会的にはあなたに価値などないのです。
では、会社はなぜあなたに給料を払うのかといえば将来に向けての投資です。ベンチャーキャピタルが聞いたこともないような社員数名の企業に多額の出資をするのと同じです。今は価値がなくても、将来大きな価値を生んでくれると期待しての投資です。投資は必ず成功するわけではないので、何割か投資分が回収できないことも企業側は織り込み済みです。
今の自分が無価値だとしたら、どうすれば良いのか。まずはそう考えることが大切です。今のままでは無価値だと認識しているからこそ、できることが考えられるはずです。正確に言えば、20代のうちは「若い」ということが価値を発揮してくれる場面もあります。ただ、それはあなたの能力に価値を見出しているのではなく、「20代」という属性に価値があるだけです。20代のうちに転職をして失敗する人の中には「属性」の価値と「自分の能力」の価値を勘違いしてしまっている人も見受けられます。
当たり前ですが、若さという価値はいずれなくなります。そのときに問われるのがあなた自身の価値です。極端な話、あなたをいくらで買ってくれるのかということです。今まで年収500万でしたというのは過去のことであり、他の会社が500万出してあなたを雇いたいと思わなければ、あなたに500万の価値はありません。大企業のリストラのタイミングで転職難民が出るのはこのためです。自分の年収を自分の価値だと勘違いしてしまっているのです。
現時点で価値がないことは何の問題もありません。実務経験がないのだから当たり前です。大切なのは、これから自分の価値を高めていけるのかということです。そして、自分の価値を高めるためには、自分は会社に対して、社会に対して価値を発揮しているのか、意味のあることをしているのかと自分自身に問い続けることが重要です。
社会に対しての価値を発揮するのは、会社に属していなくても方法はあります。会社に属しながら、他の活動で価値を高めることもできるでしょう。狭い視野に陥ることなく、社会の中での自分の立ち位置や自分の価値に目を向けるクセを、今から身につけてください。