2月9日に開催された、ワークライフバランスフェスタ2016のトークセッションに登壇しました。トークセッションの相手はサイボウズ株式会社社長の青野さん。ワークライフバランス推進企業としては非常に有名で、青野さんご自身も育休をとるなど「イクメン」として注目されている方です。一方の私自身はワークライフバランスの専門家ではありません。むしろこれまでのいくつかの記事でも書いている通り、世間一般でいわれるワークライフバランスに対しては懐疑的な見方もしていました。
そんな二人のトークセッションは、私からのこんな問題提起から始まりました。
ワークライフバランスが整いすぎていることで「残業したくてもできない」「バリバリ働けない」ことが原因で辞める若手社員も実在します。若手社員はワークライフバランスを求めているのでしょうか?
これに対して青野さんからは「ワークライフバランス企業だからという理由でサイボウズを希望するのは新卒よりも中途が多い」というお話とともに、サイボウズの面白い働き方もご紹介いただきました。バリバリ働きたいコースとワークライフバランス重視コースなど、全9つの働き方コースを準備し、社員自身に選んでもらうというものです。20代のうちはバリバリ働くコースを選ぶ方が多く、その後、結婚・出産などで別のコースを選ぶ社員の方が多いのだとか。
やっぱりそうなのかと改めて感じるとともに、9つのコースを準備しているサイボウズのすごさを感じました。働き方選択制がスタンダードになればいいのになぁ。
ワークライフバランス反対派の黙らせ方
話はいろいろと脱線しながら「企業内でのワークライフバランス推進について」という真面目な話題に入っていきました。
サイボウズでは「こんな働き方を試してみたい」という案がでたら、案を出した人の部署だけで実験をしてみることがあるそうです。そこで私が疑問に思ったのは「その部署のマネージャーが拒否したらどうするんだろう?」ということ。その疑問をそのまま青野さんにぶつけてみたところ「ちょっとエグイ話をしますよ」と前置きしたうえで「マネージャーを交代させることもある」というリアルな話をしてくださいました。同時に「ワークライフバランスは社員のためじゃない」とも言い切ったのが非常に印象的でした。
サイボウズの目標は「グループウェアで世界一になる」ことであり、そのためには多様な働き方を認める必要がある。だから、多様な働き方の阻害要因になるマネージャーに対しては厳しい対応を取ることもあるのだと。
社長が多様な働き方を認めると言いながら、阻害要因になるマネージャーを放置していたのでは「結局何もしてくれない」と思われてしまう。そうならないためには厳しい対応もすると話す青野さんは口調は穏やかでしたが、1時間のセッションの中で一番真剣な表情でした。
ワークライフバランスのキーワードは「副業」?
もはやどこが話の本線なのかわからないくらい話が盛り上がり(錯綜し?)、セッションの最後は「ワークライフバランス実現のために企業がすべきこと」というテーマでした。ここで青野さんからでたキーワードが「副業」。このキーワードは当日の控室での雑談の中でも青野さんからお話があったので、本当に重要なキーワードとして認識されているのだと思います。
日本企業の多くは就業規則で副業はNGにしていると思いますが、サイボウズは副業OK、しかも特に申請も必要ないのだそうです。申請不要というのは、私も驚きました。副業の効果は早期離職防止という観点でも大きいと思います。先に紹介したような「バリバリ働けないから」という理由で辞める層の人間を引き留める理由にもなり得るからです。むしろ今の日本社会であれば「副業を認めてくれている」こと自体が大きなインセンティブになり得ます。
サイボウズの会社としての副業活用の例としては、副業で農業をやっていた社員の農場にセンサーをつけてIoTのテストをやったことがあるそうです。普通のIT企業は農場を持っていませんが、副業を認めていたからこそ、すぐに農場の見当がついたのでしょう。
社員の副業のすべてが会社の事業に直接的につながるわけではないと思いますが、変化が激しく何が次のビジネスチャンスになるかわからない時代だからこそ、社員の副業によって様々な業界との接点ができるメリットの大きさは想像できます。
主催者の方がワークライフバランスの専門家ではない私をゲストとした呼んだ意図は、これまでとは違う視点を提供して欲しいというものだったと思います。今までと違う視点と言えば聞こえはいいですが、これまで漠然と信じられていたことに対して反論することになり得るため、拒否反応を起こす人がいる可能性も考えられます。いざ始まってみると、会場全体の反応が良かったので調子に乗って結局いろいろと言いたい放題言ってしまいました。
本当に考え方を広めていきたいのであれば、同質の人たちだけで集まって盛り上がるのではなく、違う意見、反対意見の人たちも交えながら「具体的にどうしていくのか」を考えながら進めていくことが重要だということを認識させてもらえる、楽しい1時間のトークセッションでした。
また機会があればやりたいな。