職場で分かる10個の心のSOSサインと7つの上手な接し方

職場でわかる心のSOSサインというものがあります。これは部下や後輩などといった当事者が気づくものではなく、上司や同僚などのまわりの人が気づくためのサインです。
 

5月病のように、一時的な感情の浮き沈みや体調不良によって、大半は1か月もすれば通常の状態に戻るものの、2~3か月症状が続いてしまう場合が稀にあります。その症状が発端となり、うつや気分障害、適応障害に移行していきます。「ほっとけば治るでしょ」と侮るなかれ、実は危険なのです。
 

マネジメントを担う方々には、5月から8月あたりまで、部下の心の状態を特に注意したほうがいいと保健師の観点では感じています。心のSOSとして現れる10個のサインをまずはお伝えします。
 

内緒
 

①やたらと異動を希望する

具体的な悩みや異動したい理由は言わず、やたらと部署を変わりたがる要求がみられたときは注意が必要です。
 

②仕事にのめり込みすぎている

悩みがあるようにみえるけれども、妙に仕事に集中していて弱音をはかなかったり、無口になったりする場合は、仕事に夢中になることで不安や悩みをわざと忘れるように仕向けている可能性があります。
 

③机や服装が乱れている

身だしなみへの気遣いができなくなったり、机まわりや服装の乱れが続いたりするときは、悩みや不安のことしかみえていない状態です。まわりからの視線はどうでもよく、自分への関心もまったくない状況なので無表情なことが多いです。
 

④休み明けの遅刻、欠勤が増える

これは明らかに仕事への拒否反応で、意欲が低下している状態です。特に休み明けに多くみられるのが特徴です。
 

⑤自分の評価ばかりを気にする

自分の仕事のパフォーマンスや過程に集中せず、成績や評価ばかり気にすることが多いときは、他者からの視線を過剰に意識していて自分に自信がない状態です。仕事が雑になったりミスが目立ったりしてきます。
 

⑥外出を避ける

上司や同僚との接触を嫌がるようになったり、商談や会議になると体調不良を訴えるようになったりと、とにかく人と関わることを極端に避ける態度がみられるときは要注意です。
 

⑦何でもない話にムキになる

仕事以外の雑談中に突然むきになり、特に自分の意見を通すことにこだわる傾向は、自分自身をコントロールできていない不満感や怒りを他人にぶつけている状態です。
 

⑧小さなミスをいつまでも気にやんでいる

まわりが気にしていないようなたわいもないミスをいつまでも引きずって、落ち込んだり自分を責め続けたりしていると情緒不安定に陥りやすくなります。
 

⑨頭痛、腹痛が続いている

毎日どこかの体の調子が悪く、健康で仕事をする日が少ない状況は、かなりストレスレベルが高く危険な状態です。
 

⑩決定したはずの話をむし返す

全員で結論づけた話を納得できずに後になってから不満をもらすなど、わざと事を大きくしたり問題を起こしたりしやすくなります。
 

これらが10のSOSサインになります。当てはまる項目が0~3個の場合は、さほど早急な対応が必要なわけではないので、体調や行動に変化がみられないか、しばらく様子をみるとよいでしょう。4~6個は、危険信号を発しているので要注意です。たわいもない軽い声かけをして、部下の仕事の悩みや休日の様子などを把握してみてください。7個以上の場合は、うつや気分障害、適応障害へ移行する一歩手前か、すでに移行している可能性が高いです。産業医や保健師、衛生管理者などの専門家に相談することを強くおすすめします。
 

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しかし、何とか力になりたいと思っていても、いざ行動しようとするとどう接すればいいのか分からないという方は多くいらっしゃると思います。部下への上手な接し方としては次の7つが考えられます。
 

①聞き役に徹する

心が弱っているひとに対してまず必要なことは、話を聞き、苦しみを理解しようとすることです。上司であるあなたは「リスナー(傾聴者)」となることを心がけましょう。
 

ただ、心が弱っているひとの場合は、自分を守るためのバリアを張って、本音を話してくれないことがあります。「最近仕事の調子はどう?」や「ちゃんと休めている?」などといった日常的な会話から始めてみましょう。また、上司と部下の関係は一旦脇に置き、一個人として同じ立場に立って話を聞く姿勢を意識することも大切です。
 

②受け入れる

上手な接し方の中で重要なことは、「受け入れる」ということ。上司の立場だと、口を出したくなる気持ちも分かりますが、ただただ相手の気持ちを受け入れ、その悩みや苦しみを理解したいという姿勢を示すことがとても大切です。話を途中でさえぎったり、批判や評価をしたりすることは絶対にNGです。
 

③共感を示す

相手と話をしていて多少つじつまが合わなかったり、明らかに誤解していたりするような場合でも、否定したり自分の考えを押し付けたりせずに、一緒に問題を解決していくような共感の姿勢を示すことも大切です。
 

④励まさない

心が弱っている部下や同僚に対して、「元気を出して」や「いつまでもそんなことでどうするの」などという励ましの言葉は、本人を追いつめるだけなので避けましょう。
 

⑤叱咤激励やなぐさめはしない

励まさないことにも通じますが、「がんばって」や「しっかりしろ」などといった叱咤激励も絶対に禁物です。本人はがんばりたくてもがんばれずに悩んでいるのですから、かえって本人を追いつめることになります。また、なぐさめは自尊心を低下させ、哀れみを受けていると捉えられる可能性があることも注意が必要です。
 

⑥気晴らしに連れ出さない

気分転換になるからと、気晴らしに飲み会や休日のお誘いをすることは本人にとってありがた迷惑です。心が弱っているときは、にぎやかな場所や慣れない環境は逆に精神的な負担になってしまうので、勤務時間内に話をする機会を設けるようにしてください。
 

⑦回復をあせらない

早く元気になってほしいと願う気持ちも分かりますが、じっと我慢することが大切です。周囲が焦ると、本人も気兼ねをして無理をしてしまうことが多く、なかなか回復できません。十分に回復するまで根気よく、温かく見守る姿勢を心がけましょう。
 

SOSサインとサインを読み取ってからの上手な接し方をお伝えしてきましたが、部下の心の健康をいい状態に保てるように関わりをもつことも、上司の大切な仕事です。ただ私が考えるキーポイントは「努力したい」という気持ちです。気づく努力と関わる努力。どうやって声をかけるべきか、何を話すべきか、どう配慮すればいいか、上司の皆さんも接し方に悩むことがあるでしょう。しかし最も重要なことは、「あなたの悩みや苦しみを理解できるように“努力”したいから、話を聞かせてほしい」という姿勢をみせることではないでしょうか。

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この記事を書いた人

杉本九実

1985年生まれ。順天堂大学卒の看護師・保健師。憧れだったICU看護師となるが、理想と現実のギャップ、過労、ストレスにより心身のバランスを崩し、バーンアウト状態と診断され休職。休職中に訪れた旅で自然の「ありのままに生きる」姿に感化された経験を活かし、2013年PONOプロジェクトを設立。「ストレスやこころの病気を自然の中で楽しく予防しよう!」をコンセプトに、自然の力と看護スキルを活かした今までにない新しいメンタルヘルス事業を行う。