うんこしたい障害者を阻むモノ その②

 
ああ、うんこしたいなあ。
それもちょっと緩めだなあ。やばいなあ。
 

つい今しがた、お尻のほうに危機感を覚えたわたしは
近くのビルの中にある多目的トイレに駆け込みました。
「ふう、間に合った」
ホッとしたのも束の間、ドアの前に絶望的な貼り紙が・・・
 

トイレちゅういがき (1)
 

なるほど。ここでうんこするためには店員さんに
「うんこしたいので、トイレの鍵を開けてもらっていいですか?」
と尋ねなくてはいけないんですね。恥ずかしい。
 

別に「うんこしたい」と正面切って言う必要はありません。
しかし、「トイレを使いたい=大なり小なり何か催しています」
という意思表明を見ず知らずの誰かにしなくてはいけません。
特に私の場合、義足を履いている立ち姿は健常者と変わらないので
基本的に「トイレを使いたい=うんこしたい」なのです。
この羞恥を突破しない限り、私は、多目的トイレを使えないのです。
 

小学校の頃、うんこしたいと言えない男子生徒は大勢いました。
これは男子トイレが小便器と個室に分かれているからです。
いざ個室に入ろうものなら「うんこ」とバカにされるのです。
実は私も言えなかった一人。高校まで学校でうんこしたことがありません。
(私の場合「車いす用トイレに入る=うんこする」です)
そんな私にとって見ず知らずの誰かに「トイレ行きたい」なんて言えません。
 

誤解を起こさないためにお伝えしますが
基本的に多目的トイレは自由に使えるものがほとんどです。
私の知る範囲では、インターホンで警備員さんに空けてもらうタイプの
多目的トイレが渋谷にひとつあるだけです。
ちなみに、このトイレ、私は一度使ったことがありますが、
インターホン越しに「トイレ使いたいんですけど」と話した際に感じた
周囲からの視線は今でも忘れることができません。
今回の遭遇は、あんな経験は二度としないだろうと思っていた私にとって
あまりにも予想外だったので記事にしてしまいました。
先日も書いておりますし
 

私自身、この貼り紙がある背景は納得しています。
それは防犯上の問題です。上記のトイレも同じです。
 

今回の貼り紙があったトイレは店舗の中にあるもの。
店舗やテナント内にある多目的トイレには万引きを誘発する可能性があります。
誰でも入ることができ、かつ広いスペースがあるため、
多目的トイレは犯罪の温床になる背景を有しているのです。
 

しかし、ここで大切なのは誰のための多目的トイレなのか?ということです。
トイレを使う側と管理する側。それぞれに論理はあります。
私は使う側ですので、多目的トイレでしか対応できない障害者にとって
心的なストレスをなぜ余計に感じなくてはいけないのかと思ってしまいます。
とは言え、トイレを管理する側を責めることは筋違いです。
 

トイレで充電してみた

 

多目的トイレにあるコンセントを活用し、
スマホやケータイを充電するという使い方があるらしいと耳にしました。
(アイデアだけ見るとよく気づいたなと思います)
卑猥な話ですが、事を済ませるカップルがいるという話もあります。
(芸能人のゴシップネタでもありました)
往々にして、多目的という言葉をはき違えている実情があります。
 

本当に使いたいときに使えず、違う使われ方をしている側面がある多目的トイレ。
一番使いたい人、使わなくてはいけない人の事を考えて
多目的トイレの扉を開いてもらえればいいなと思います。
だって、誰もが使っていいものですから。
 

トイレの中でホッとしたときに思いついた、この記事でした。
ふう、間に合いました。
 

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この記事を書いた人

佐々木 一成

1985年福岡市生まれ。生まれつき両足と右手に障害がある。障害者でありながら、健常者の世界でずっと生きてきた経験を生かし、「健常者の世界と障害者の世界を翻訳する」ことがミッション。過去は水泳でパラリンピックを目指し、今はシッティングバレーで目指している。障害者目線からの障害者雇用支援、障害者アスリート目線からの障害者スポーツ広報活動に力を入れるなど、当事者を意識した活動を行っている。2013年3月、Plus-handicapを立ち上げ、精力的に取材を行うなど、生きづらさの研究に余念がない。