聴覚障害者からの救急要請を誤報と判断

神奈川県小田原市の消防本部が7月8日午前、聴覚障害を持つ男性からのFAXによる救急要請を誤報と勘違いし、救急車を出動させなかったというニュースが飛び込んできました。指令担当者がFAXの受信音を電話の誤報(間違い電話のようなもの)と認識し、通信を終了させてしまったことが一因となって起こった事故です。結果的には親類からの電話による119番通報で事なきを得たとのことですが、聴覚障害者の救急対応という観点での難しさを伝える事故だと思います。
 

20150710ニュース
 

「聴覚障害者 緊急通報」とgoogleで検索すると、最上位に東京都の「緊急メール通報のご案内」がヒットします。その項目を確認すると、
 

携帯電話及びPHSから電子メールを利用して火災や救急などの緊急通報を行い、消防車や救急車の要請ができるよう、緊急メール通報システムを開設している(東京消防庁)

 

とあり、メールを用いた手法で緊急メールが通報できる仕組みになっているようです。政令指定都市で言えば、広島市は市のホームページからFAXのフォーマットがダウンロードできるようになっており、こちらはFAXでのやりとりが主になっているようです。ホームページを確認する限りにおいては市町村単位で統一されているわけではなさそうです。自分の命に関わることなので、自分で調べないとダメという意見はあるでしょうが、引っ越す度に確認しなくてはいけないというのは、なかなかな手間だなと思うと同時に、話せる・聞けるというのはそれだけで便利なんだなと感じます。
 

それにしても、いくつかの市町村のトップページを開きましたが、どこに書いてあるか全然分からないというのは難儀な話です。電話したほうが早いのでしょうが、そもそも電話できないからWEB上で調べたいのに、という堂々巡り感があります。窓口に行くのが一番なんですね。
 

筆者はandroid端末のスマホを使っており、googleのplayストアで「聴覚障害者 救急」で検索すると「緊急通報システムweb119」というアプリが出てきました。聴覚障害者の方々がandroidのアプリを用いて簡単に119番通報できるというシステムのようですが、スマホアプリで簡単に通報できる仕組みが浸透すれば便利になるだろうなということは想像できます。スマホであればGPSとの連動で通報位置も認識しやすいはずなので、メールを打つ・FAXを書くというより余程使いやすいと思います。
 

「緊急通報WEB119」アプリのダウンロードページのスクリーンショット
「緊急通報WEB119」アプリのダウンロードページのスクリーンショット

 

障害者はその障害故に煩わしさを感じることが多く、また社会側の障壁を感じることも非常に多いです。今回の救急車出動における勘違いは聴覚障害者(発語に障害をもつひとも同様でしょう)に起こり得るものであり、健聴者には起こり得ない問題だと思います。それはまぎれもない障壁です。通報を受ける側のシステム改善も然ることながら、当事者側のサービス改善に対する提案をすり合わせることで、今回のような問題が起こらないような仕組みが出来上がればと感じます。先日の弊メディアのコラム(2015年夏、独断で選んだ注目の障害者便利アイテム5選)にもありましたが、そのヒントはスマホアプリにありそうな気がします。
 

(参照)
FAXでの救急要請、誤報と勘違い 救急車出動させず|テレ朝ニュース(2015.7.8)
http://news.tv-asahi.co.jp/news_society/articles/000054306.html

「緊急メール通報」利用のご案内|東京消防庁
http://www.tfd.metro.tokyo.jp/lfe/topics/mail_sys.htm

「聴覚障害者等緊急通報用ファクス」からの通報について|広島市
http://www.city.hiroshima.lg.jp/www/contents/1111011494775/index.html

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