この連載は「ワカラナイケドビョウキ」という不思議な病気になり障害をもった私が、ノーマライゼーション発祥の国デンマークに留学する1年間の放浪記です。デンマークでゴロンゴロンでんぐり返しをしながら「障害ってなんだろう」と考えます。
フォルケホイスコーレって、知っていますか?
日本にいるとなかなか聞きなれない言葉だけど、約150年前にデンマークで生まれた「大人のためのフリースクール」のことです。北欧ではポピュラーな教育制度だと聞いていたけれど、私もここに来るまでどんな学校か、どんな授業があるのか、はっきりと説明できませんでした。ぽかん。
わかりやすく言えば「対話を通して人生を学ぶ学校」。
18歳以上、という年齢制限をクリアすれば基本的に誰でも入学できます。
そんな中で、私の通う学校はデンマークのフォルケホイスコーレのなかでも異色と言われています。それはたぶん、3つの役割を担っているからじゃないかな。
①学校としての役割
毎日8時30分~15時30分まで授業があります。科目は、アートから心理学、スポーツ、料理まで様々。みんな思い思いの授業を履修しており、先生も生徒も「障害があってもなくても、できる、楽しむ」ことを大事にしています。
障害のある学生には授業中に必ずアシスタントティーチャーがついて、その子にあった参加の仕方を考えながら隣でサポートしています。
手伝ってくれるアシスタントティーチャーは99%同校の卒業生。20代前後の子が多く、みんな学生生活を通して障害者学生の介助の仕方について学びました。ガハガハと笑いながら楽しそうに仕事をしています。
②施設としての役割
ここに通う学生の半数は、知的・身体的な障害を持っています。そのため、その全員が学生生活を楽しめるように、学校内もいたるところに工夫がされています。多くの入り口が自動扉、フルフラットで廊下も広く、車椅子でも自由に行き来可能。たまに車椅子が猛スピードで廊下を過ぎ去っていくほど……。
また、併設されているトレーニングジムやプールも車椅子のまま使えるようになっており、寮の部屋も必要な人にはリフトやシャワーチェアがついています。
夜間に何かあったときにすぐ対応してもらえるようなヘルパー(HHAと呼ぶ)が常駐しており、人的ケアも完璧!
③ラボとしての役割
授業中はアシスタントティーチャーがつき、就寝後になにかあった際は専門のヘルパー(HHA)が対応してくれるけど、日常生活の基本は学生同士の思いやり。
障害があってもなくても、みんな得意なことや苦手なことがあります。それを褒めたり笑いあったりしながら、じゃあどうしたら一人一人の人生が充実するかを考えるのが友人としての役割。
ベッドから車椅子への移乗ボードがない!!!となれば、みんなで作ったり、歌が上手な車椅子の学生は毎週末ダンスパーティーのステージで歌を歌ったり。ここにいると「障害があるからできない」というと「え?」「なんで?」「じゃあ、やれる方法を一緒に考えよう」となります。
また、この学校の大きな特徴として、障害のない学生は障害者学生のヘルパーとして働くことができます。デンマークでは資格がなくてもヘルパーができ、また障害者が雇用主となって自由にヘルパーを雇うことができます(オーフス制度)。多くの学生は、そのヘルパーをする代わりにお給料をもらったり、雇用主である障害者学生に授業料の一部を支払ってもらったりしています。
そんな仕組みもあり、障害のない学生の8割は学生兼ヘルパー。朝や、授業が終わってから就寝までしっかりお仕事をしながら学生生活を送っています。
私は自分も障害があるため誰かの専属のヘルパーはしていないし、できない!って思っていたけど……今では友人としてたま~にゆるっとお手伝いをしています。人生初お風呂介助をしたり、友達の爪を切ってみたり。
ヘルパーというお仕事を超えて、友達として何かしたい!と思わせてくれるのが、この学校の素敵なところ。
だから、私の通っているエグモントホイスコーレはちょっと変わっている。
なぜならば、ここをただの”学校”と呼ぶのには社会的にも、学生の人生においても、役割が大きすぎる気がするから。
“自分の人生を考える”のがフォルケホイスコーレだとしたら、”自分の人生を考えるために隣にいる人の人生も考える”のがエグモントホイスコーレなのかもしれない。
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この留学は、ダスキン障害者リーダー育成海外研修派遣事業第36期研修生として行きます。ミスタードーナツに行くとレジの横に置いてある募金箱。全国の皆様の応援で行かせて頂きます。