うつ病になって退職して、また働いてみようともがいていたとき。
平日は異常に緊張していて、週末になるとその糸が切れて、心の底からホッとしていました。
そんな毎日を経て、ようやく人並みには働けるようになったかなと思う今。
あのときの気持ちの波を思うと改めて、復職は難しいことだと思います。
うつ病からの復職のハードルの高さ
うつ病を患ってから退職してしまうと、復職するためのハードルは非常に高いです。
まず、正直にうつ病だと告白してしまうと、どこの職場も採用してくれません。ただでさえうつ病の社員を抱えていることはリスクなのに、新たに採用するのにうつ病の人間を選ぶなんてことは、まずないのです。
そして、仕事をしていなかった状態からいきなり働き始めることは、無理と言ってもいいくらい難しい。日常生活もやっとな状態で、毎日出勤して新しい仕事を覚えるということ、新たなコミュニティに属するということは、心にも大きな負荷となります。
休職後に元の職場へ戻ることも、転職による復職と同じくらいハードルは高いです。長く休んでいたために起こる申し訳なさと「うつ病になった人」と腫れ物に触るように接してくる周囲への戸惑い。以前と同じように働けない自分への苛立ち。そんな感情に、心が支配されます。
元の職場への復帰にはタイムリミットがあることもあり、就業規則上、一定の休職期間を経たら退職となることもあります。休職中にもらうことが多いであろう傷病手当金も1年半という制限があります。その間に復職を果たさなければならないというプレッシャーは、相当なものです。それがまた追い詰められる原因となって、症状が悪化してしまうということもあります。
ただ転職するのとは、わけが違う。それが、うつ病に伴う復職なのです。
復職までの心の波
復職しようとすると、心は揺さぶられます。
月曜日、休み明けの出勤に心臓が飛び出るほど緊張して。
火曜日、なんとか1日を乗り越えたことにホッとして。
水曜日、週の折り返しだと思いながらも、まだ2日残っていることにため息をついて。
木曜日、明日で今週も終わりだと言い聞かせて。
金曜日、やっと休みを迎えられると心の底から安堵して。
週末、次の週を頭の片隅で心配しつつ、心を休めて。
そんなふうにして、毎日を過ごします。
いつになったら、慣れるのか。いつになったら、こんなに苦労せずに働けるのか。そんな仕事ならやめてしまって、また新しい仕事を探せばいいって言われるかもしれません。でも、そういう単純な問題でもなく、「働く」ということそのものがハードルが高いのです。ちゃんと良くなってから働けばいいのかもしれないけれど、この社会は簡単にはそれを許してはくれません。
働かなければ、生きていけない。働かなければ、認められない。そんなプレッシャーが、いろいろな方向からかけられてくるのです。私は何度も、この波にやられてしまいそうになりました。生きるのを諦めようと思ったことも、何度もありました。でも、やっぱり生きていたくて、乗り越えるための方法を自分なりに考えていました。
復職までの紆余曲折
私は当初、元の職場への復帰を考えていました。幸い、職場に病気に対する理解があり、時短勤務からのスタートでした。最初は半日から初めて、少しずつ少しずつ働く時間を延ばしていって…という形。それも、無理に延ばすのではなく、私の調子を最優先に考えてもらいました。
でも、私は元の職場へは戻れませんでした。理由は、職場の人間関係と組織のあり方でした。もともとそのふたつがストレス源になっていたということもあり、同じ場所で働くことにどうしても耐えられなくなってしまったのです。
復職を試みてから約半年後に退職した私は、その後休養を挟みながら、複数の職場を転々としていました。そろそろ安定してきたから、働けるかもしれない。そう思って就職しても、長くは続かない。週に2,3日程度のパートやアルバイトさえ、困難でした。
お金がなくなり、自信もなくなり、焦りと自己嫌悪だけが募る日々。どうしたら、プレッシャーを減らせるのか。どうしたら、私でも働けるのか。
ずっとずっと考えて出した私なりの方法は、
・極力、ルーティンワークでできる仕事に就くこと
・時間が不規則な仕事をしないこと
・通勤時間が長すぎないこと
・残業がないこと
ある程度日常生活が安定したら、これらの条件を満たした職場に就くことでした。金額なんていいから、できるだけ、心の波の原因となるものを排除し、「働く」という行動に慣れること。それができたら、少しずつ自分らしく働ける場所を探そうと割り切りました。
そんな決意からなんとか仕事を始めて2年ほどで、私は苦痛を感じずに働けるようになり、薬も断つことができるようになりました。時間はかかりました。でも、時間をかけたからこそ、無理をし過ぎなかったからこそ、今の状態まで来ることができたのだと思います。
復職は、本当に難しいです。自分が経験して、心の底からそう思います。私がこの方法でうまくいったからといって、今、復職にトライしている人すべてがうまくいくわけではありません。もう一度働けるようになりたいと願う人が、その人なりの方法で復職することができるよう、社会全体でのサポートができるようになればと思います。
※ライターの伊藤さんが主宰する「ココロミル」の原稿を一部加筆し、転載させていただきました。
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