皆さん、ごきげんよう。矢辺です。
今日は、「特例子会社」について書きます。
Wikipediaによると、特例子会社とは、
特例として、会社の事業主が障害者のための特別な配慮をした子会社を設立し、一定の要件を満たす場合には、その子会社に雇用されている障害者を親会社や企業グループ全体で雇用されているものとして算定できる。このようにして設立、経営されている子会社が、特例子会社である。
ってことですが、わかりにくいと思うので具体例で説明すると、
例えば、親会社、子会社含めて、1000人のグループ企業があったとします。法定雇用率によって障害者を2%雇用しなくてはいけないので、雇用すべき障害者数は20名です。ここで、特例子会社を作って、その特例子会社で20名雇用してしまえば、親会社、その他子会社の障害者雇用が0名でも、各社雇用率達成とします
ということなんですね。だから、”特例”子会社な訳です。どんな会社が特例子会社を作っているかというと、下記の資料を参考にしてください。
有名どころでは、イオン、ソニー、オリエンタルランド、リクルートなんかも特例子会社を作っています。私がこんなことを書いても「なかなか知らないリアル」にならない訳ですから、なかなか知らないリアルを今日はお伝えしましょう。
この特例子会社ですが、実は公表されていない(というか、公表の義務がない)ものの赤字の会社がほとんどとなっています(じゃあなぜわかるのかというと、聞いてまわるとほとんどの特例子会社の方々が赤字だと仰るのです)。
それもそのはず、特例子会社自体が、雇用率を達成するために作られた会社であるからです。したがって、黒字を出す意識がない。なぜ設立されるかと言えば、本社の経営陣にとってみれば、雇用率が改善するのであれば…と思って設立を許可する訳ですね。ですから、年間の特例子会社用の予算が決まっていて、「この予算の中で特例子会社を運営してね」という命令が親会社から下り、あまり努力・改善もできないという嘆き節を、先日聞きました。
このように設立時のスタンスによって、特例子会社は赤字になってしまうのです。しかし、特例子会社の存在により「雇用率達成できている」という名目が親会社にとってある限り、特例子会社はなくならないでしょう。この考え方が「障害者雇用はCSR・法律を守るためのコストである」という考え方につながります。ですから、いつも言っているように、障害のある人が働きがいを感じることが難しくなっている訳です。
閑話休題。
特例子会社の設立スタンスによって、赤字になってしまう理由をお伝えしましたが、それ以外にも赤字になる理由があるのです。それは、コスト面です。障害がある人がそのまま、健常者と勝負してしまえば、工数が掛かりがちになるからです。例えば、健常者1人ができる仕事でも、障害者がやろうとすれば、それをフォローする人が必要になる。それは障害が重ければ重いほどです。そのため、健常者1人分のコストで仕事を請け負い、結局2名で仕事をするようになるのです。そのため、赤字になりやすいのです。
しかし、黒字を達成している特例子会社は考え方が違います。まず業務を細分化します。例えば、「名刺を作る」という仕事であれば、その仕事をそのまま誰かに丸投げせず、細分化させます。名前の確認、印刷、チェック、発送などに細分化する訳です(もっと細分化できますが書き始めると長くなるので)。
細分化した仕事を、それぞれできる人、得意な人に任せていくのです。細かく見ると、名前のチェックは身体障害の人、発送の封筒を入れることは知的障害の人(もちろん、障害特性だけではないですが)などといったように、適材適所の発想で振り分けられます。結果として、健常者と同じ工数で勝負ができるそうです。
特例子会社が黒字達成するためには、仕事の設計者がとても大事であるということです。業務を細分化し、各人の特性を見極め、仕事量を見極めながら、適切に業務配分を行う。これは簡単にできることではありません。仕事の設計者が特例子会社の赤字脱却にとても重要な役割を果たしていると思います。
そして、これは健常者でも同じではないでしょうか。現在、多くの人が過労、ストレス過多に陥り、うつ病、過労死が社会問題化しています。にも関わらず、働けない人も増えています。
もし、黒字を達成している特例子会社の「業務の細分化と得意な人に仕事を任せる」というワークシェアリングの考えが企業で当たり前になれば、前述の社会問題も、雇用問題も解決していくのではないでしょうか。
私は常々こう言っています。
障害者が活躍できる組織は、誰もが活躍できる
特例子会社の赤字は、日本企業の働き方の表れでもあり、特例子会社の黒字化が、実は日本の労働の未来を担っているかもしれません。