「夢を持ちなさい」
「夢が実現出来るようなキャリアを考えなさい」
「自分が本当にやりたいことをみつけなさい」
キャリア教育の現場で、
こんなことを聞いたことがある方は多いのではないでしょうか?
確かに、夢も希望もない生活よりも、夢や希望がある生活の方が幸せだとは思います。目標がないより、目標があったほうが生活が充実するのもわかります。しかし、そのために、「やりたいことをみつけなくてはいけない病」になってしまっている人をよく見かけます。
今の自分の仕事が夢につながっていると実感出来れば、多少つらいことでも我慢できるでしょう。「これが自分の本当にやりたかったことだ」と思いながら仕事ができれば毎日働くのが楽しいかもしれません。しかし、それはずっと続くのでしょうか?
私は100名へのインタビューを通じて、早期離職白書を作成しました。その中で「他にやりたいことが見つかった」という理由で退職を決意した方々にはある共通点がありました。それは、「前職での仕事の満足度が高いこと」です。
前職での仕事の満足度が高いイメージを持って退職された方々は、自分自身の変化によって、「やりたいことが変わった」もしくは「新たに見つかった」というのです。ここに会社への不満という退職理由はありませんでした。さらに、この共通点をもつ多くの方々には一つの特徴があります。それは、第一志望または、志望順位の高い会社に入社していることです。
例えば、私がインタビューをした中で、こんな女性がいました。
「将来はグローバルな活躍をしたいと思っていたので、そのフィールドがある企業を志望しました。内定時に配属先も決まるのですが、配属先も希望通りだったのでその会社に決めました。でも入社一年目くらいで「違うな」と思うようになったんです。なんていうか、企業が求めている人材にはなれないし、なりたくないなと。そのタイミングで東日本大震災が起きて、これは自分の目で事実を確かめないといけないと思い、現地のボランティアに参加しました。直接誰かのためになる仕事がしたいと思ったんです。そこからNPO業界に興味を持ち、現在はNPOで週5でインターンシップをしています。来月からカナダに留学し、ソーシャルビジネスワーカーという資格の勉強をしてきます。」
※インタビュー内容より要約
彼女は当初、「グローバルで働く」という軸で就職活動を行い、希望の企業に内定しました。彼女が働いていたのは、誰もが知っている有名企業です。しかも彼女は配属先も希望通りで、当初の希望をほとんど果たしています。しかし、実際に仕事を続ける中で違和感を覚え、さらには東日本大震災が引き金となり、彼女の価値観は「グローバル」から「直接誰かのためになる」ことへと変わっていきます。そして、大企業の正社員という地位を捨て、自分の夢のためにNPOで無給のインターンシップをしながら留学の準備を進めています。
この事例から知っていただきたいことは、
「やりたいことなんて、変わって当然だ」ということです。
「初志貫徹」 「首尾一貫」 「徹頭徹尾」 「一意専心」
最初に立てた目標に向け、他のことは気にせずにまっすぐ向かっていくことを賞賛する言葉は沢山あります。また、社会からは「初志貫徹」の方が高く評価されがちです。確かにそれは、素晴らしいことだと思います。
しかし、目標を再設定することは悪いことなのでしょうか。むしろ、その都度軌道修正する能力が高いことは、大変な長所となるのではないでしょうか。
「やりたいことは変わって当然」
「やりたいことが変わったときに、それを実現する力があることが素晴らしい」
一度決めた「やりたいこと」に固執せず、柔軟にやりたいことを変えていくことが社会としてもっと受け入れられれば、生きづらさを感じる人は減っていくはずです。