大学で学ぶ障害のある学生は年々増加傾向にあり、日本学生支援機構の調べでは、平成26年度は14,127人が学んでいるとされています。例えば、足が不自由な学生の場合は通学できるか否か、耳が不自由な学生の場合は聴講できるか否か、発達障害を抱える方の場合は履修計画が立てられるか否か、試験を円滑に受けられるか否かといった困難さを抱える場合があります。障害のある学生が大学で学ぶには、ある程度の合理的配慮が必要となります。
京都大学の障害学生支援窓口として設置されている「障害学生支援ルーム」のサイト上には、障害のある学生をどのようにサポートしていくかということが事細かに記されています。これは「京都大学として」という観点だけでなく「大学としてのあるべき姿」を提案しているように感じられる情報量です。特に「障害学生支援ガイドブック」は大学だけでなく、一般企業などにとっても非常に役立つ優れモノだと感じます。
視覚障害や聴覚障害、肢体不自由に発達障害など各種障害に合わせた基礎知識や支援方法が整理されており、コレを読めば、大学側は何を準備すべきか、学生側はどのような配慮がなされているかということが一目瞭然です。個人的には、一部の障害に記載されている「障害学生支援ルームより」という欄で記載されているコメントが好きで
ハード面の整備は、法令等もあり比較的わかりやすいものですが、一方で、利用するひとの使い勝手を考えずに整備してしまいがちです。法令に従うことは最低限のルールと考えて、実際の利用者を想定した整備を心がけていきたいと思います。仕様や規格の検討、また予算的な都合もあるかと思いますので、当ルームまで気軽にご相談ください。(肢体不自由ページ:部分抜粋)
病弱・虚弱の学生はけして少なくありません。ただ、その全ての人に対して、大学での配慮や支援が必要なわけではありません。見て分かる障害ではないことが多いので、基本的には学生本人からの申し出によって対応を検討することになります。(病弱・虚弱ページ:部分抜粋)
というように「大学側も準備はしているけれど、学生側からの意見もほしい、必要だ」という願いが込められています。合理的配慮は障害者が社会生活を円滑に行うための配慮を準備することですが、一方通行的に準備するものではなく、互いが建設的に意見を交わして最適な配慮を模索するという理想形がこのメッセージには含まれているように感じます。
障害者権利条約に批准し、障害者差別解消法も施行される日本では、今後、大学などの教育機関での合理的配慮が今以上に求められ、準備されていなければ批判されることも当然という状態になります。京都大学のような国内トップクラスの大学の準備は多くの大学や教育機関にとってもヒントとなることが多いと思います。そのヒントを惜しげもなく公開しているこのサイトは、「障害者が教育を受ける機会と合理的配慮」というテーマにおいて、ものすごく有益なものだと思います。
(参照)
京都大学「障害学生支援ルーム」ホームページ
http://www.gssc.kyoto-u.ac.jp/support/