こんにちは。新名庸生です。今回ご紹介する映画は、『AMY エイミー』です。
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【ストーリー】(公式サイトより)
2011年7月23日に急逝したエイミー・ワインハウス。映画『AMY エイミー』は、ローリング・ストーンズのミック・ジャガーやトニー・ベネットらがその歌声を絶賛、レディー・ガガ、ジャスティン・ビーバー、アデルら多くのミュージシャンたちにリスペクトされ、世界中の音楽ファンに愛された彼女の生涯を描いた傑作ドキュメンタリー映画。
複雑な家庭環境や激しい恋愛関係など、自身の人生体験を糧に独自の音楽をつくりあげ、人生をひたむきに駆け抜けたエイミー・ワインハウスの姿は、ビリー・ホリデイ、ジャニス・ジョプリン、カレン・カーペンター、ホイットニー・ヒューストン等、ポピュラー・ミュージックの世界で一時代を築きながら悲劇的な最期を遂げた女性シンガーたちの光と影を想起させます。でもその素顔は、歌うことが大好きで友だちや恋人と人生を楽しむ普通のひとりの女の子。そんな彼女がなぜ”孤高の歌姫”として波乱の道を歩んでいくことになったのか?
アカデミー賞®、グラミー賞をはじめ各国で40以上の賞を受賞し世界中で絶賛された本作。この映画を見れば、彼女のありのままの姿とその歌詞に込められた本当の意味がきっとわかるはず。
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エイミーの名を一躍世界に知らしめた曲「Rehab」は日本でもよく様々なメディアで流れていました。当時のメインストリームとはかけ離れたレトロな曲調で響く、力強くそしてどこか達観した感じのある気だるげな歌声は多くの人を魅了しました。私もこの曲で彼女を知りましたが、歌っているのが20歳ちょっとの小柄な女性と知って驚きました。そして、タイトルの「Rehab」がリハビリテーションのことであると知り、2度驚きました。
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アル中の自分にリハビリに行けとみんなは勧めるけど、そんな必要はないし、私は絶対行かないという内容の歌ですが、これはエイミーの実際の体験であり、この時にリハビリに行っておけば、次のアルバムもつくれたのではというコメントが映画の中で語られます。
スキャンダラスで才能に恵まれた世界的歌姫というイメージが先行し、こうした依存症もスター特有の破天荒なパフォーマンスの一部と早合点してしまいがちですが、そうではありませんでした。この映画を観るとエイミー自身は本当に普通の女の子であったことが分かります。
早くに父親が女をつくって家を出ていき、歌手として有名になる前から鬱病、自傷癖、摂食障害に苛まれていたようです。そして「歌うことは好きだけど有名になりたいとは思わない。有名になると生きていけない気がする」と語っていた彼女はその思いとは裏腹に徐々に世界に名を知られ、逃れるように「まるで双子みたい」な夫ブレイクと、彼から教わったドラッグに依存していきます。おまけに家を出ていた父親が戻ってきてエイミーを利用し始めますが、エイミーはそれでも父親のことを想う気持ちがあり、離れることが出来ません。父親が聴いていた音楽が自分に大きな影響を与えていたからなのかもしれません。後半、薬物に依存しきっている時のエイミーの映像が流れますが、痩せ細り本当に同一人物なのか疑わしくなるほどです。
「Rehab」が収録されたアルバム「Back to Black」のタイトルトラックでは、男に捨てられ沈んでゆく心を「暗闇に戻る(back to black)」と歌います。恐らく彼女にとっては沈んだ心の状態、暗闇こそが常に原点としてあったのだと思います。身の周りに起こったことしか曲に出来ないと語るように、彼女は個人的な経験を独白のように歌います。しかしそういう一方向的な感じもする彼女の歌に多くの人々が引き寄せられるのは、私達も彼女が見つめる暗闇をもともと心の奥底で共有しているからだと思います。
このドキュメンタリーはホームビデオの中でキャンディを舐めながら友達とふざけ合う16歳のエイミーに始まり、遺体袋に入れられ病院に搬送される27歳のエイミーで終わります。もっと上手く生きられたのではないかと思う一方で、予め決められていた27年という時間を全力で走り切った生き方のようにも思われます。
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この「Valerie」という曲はリヴァプールのバンド Zutons のカヴァーだそうです。エイミーのオリジナルの曲とは異なる雰囲気で彼女自身の人生ではなく友達のことを歌う彼女の声を聴くと、逆説的に彼女が背負ってきたものが透けて見えるようで私は聴き入ってしまいます。