宇代謙治/高橋裕典/小岩千代子『鈴木さんちの障害年金物語』ー意外と知らない障害年金のイロハを知るー

皆さん、障害年金って知っていますか?年金というと老後の保障というイメージがありますが、自身が障害を負ったときの保障という観点での年金もあります。それが障害年金です。
 

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日本人の多くが、というわけではありませんが、年金に関する知識や情報量が少ない方が一定数いることは事実でしょう。自分たちの世代がもらえる保証がないのになぜ支払う必要があるの?という感覚が増してきている若者世代に対して、年金について知らないことを咎めることは難しいでしょうし、冷静に振り返れば年金について学校で習っていないこともしばしば。そんな状況の中で、障害年金について細かく知っている方は少ないかもしれません。
 

しかし、もし自分が病気や怪我で障害を負ってしまったら?今までと同じ仕事ができず、収入も少なくなる、あるいはなくなるとしたら?そんなときに手を差し伸べてくれる公的な社会保障のひとつが障害年金です。知らないままだと損をする可能性もあり、また障害当事者が意外と知らないことも噂されている障害年金です。
 

「年金に関する本」というと、文字や表だらけのおカタめの本と思いがちですが(この本にも難しい言葉や表は出てきますが)、鈴木さん一家に起こる障害年金がもらえるか否かという物語仕立てになっているので、意外と頭に入ってきやすいのが特徴です。
 

息子が統合失調症になってしまう、身内ががんで入退院を繰り返している、義兄が脳梗塞で左半身麻痺になる、といった鈴木家に降り掛かる病気の数々は、障害年金の受給におけるよくある事例。精神、がん、肢体(身体)不自由と障害の種類もバランスが取れています。
 

そんな制度があるの?障害者手帳は知っていたけど、障害年金は知らなかった。

 

障害者って身体の不自由なひとを指すものだと思っていたよ。精神疾患でも障害年金がもらえるなんてびっくりだ。

 

これらは物語部分の中に出てくる言葉ですが、障害年金の認知の現状を伝える分かりやすい表現だと思います。
 

また、物語の中では、鈴木家の皆さんが社労士の先生、年金事務所の相談員、病院といった障害年金を受給するために協力をしてくれる関係者とのやりとりがリアルに描かれています。書類をもらうために長時間待つ、関係者の中を行き来する、たくさんの書類を記入するなど、「そういうところ面倒くさいよね」という細部とその心情描写まで表現されている点が、個人的に一番心に残った部分です。
 

障害年金の全体像や障害基礎年金と障害厚生年金の概要、障害等級と等級認定の基準(◯◯障害だと◯級になる)などの総論的な知識はもちろん書かれていますが、20歳前傷病による障害について、初診日についてといった障害年金に関する難しく、込み入った話となる部分も物語と連動して解説されています。障害年金について初めて知った、自分も受給者かもしれないといった方には、分かりやすい入門本だと思います。
 

自分自身が障害者になるリスクは低いかもしれません。ただ、自分の家族が障害者になるリスクまで加味すれば、その確率は大きくなるでしょう。親世代になればなおさらです。自分がその状況になれば考えようという観点を否定するつもりはありませんが、知ってて損はしないもの。ご興味がある方はぜひ手に取ってみてください。
 

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