「ブラジャーの締め付け」と「乳首への視線」からの解放

生きづらさの原因のひとつに、何かに「締め付けられる」ということがあると思う。家族による締め付け。組織による締め付け。社会の常識による締め付け。世に様々な締め付けはあれど、女性にとって最大の締め付けは、ブラジャーによる締め付けではなかろうか。
 

仕事から帰宅した男性がネクタイを緩めながら「ああ疲れた」と一息つくように、女性も家でブラジャーのホックを外してようやく「ああ今日も一日終わったぜ」と一息つけるのである。男性が仕事終わりに立ち寄った居酒屋でネクタイを緩めるように、熱いおしぼりで顔を拭きながらブラジャーのホックを外すわけにはいかず、その点、女性は外出先で常に何かに締め付けられながら密やかな緊張を強いられている(と少なくとも私は思っている)。
 

しかしながら、ブラジャーの締め付けほど解決方法が明らかな締め付けもないのであって、それはつまり、ブラジャーを外してノーブラで生活すればいいのである。しかし、ブラジャーを外した途端に立ち上がるのが「乳首問題」だ。かつて小説家の川上未映子女史が朝日新聞のコラム「求む、ブラジャー革命」で、
 

わたしにとって夏といえばひたすらにブラジャーとの闘いだ。や、正しくは乳首とともに世間と闘う、という構図が正しいのだが、なぜ日本では乳首が透けた状態で外出することにこれほど強力な抑圧がかかっているのだろう。

 

と書いたように、日本においては、例え自分は気にしなくとも、洋服の向こうに透けて見える乳首と相対した他者は乳首の存在を無視することは出来ず、屹立した乳首によって社会的信頼を失うこともあり得なくはない。そうして今日も私は他者との円滑なコミュニケーションのために、ブラジャーのホックを留めるのである。
 

実際のところ、多くの女性がブラジャーを苦しいと感じるのには、ブラジャーの正しい選び方・付け方を知らないという背景があるようで(「実態調査でブラジャーに関する『4つの問題点』が発覚!ブラジャーは“サイズ”だけで選ぶと、がっかりバストに?!」ワコール社 2015年3月5日プレスリリース)、購入時に試着して体にあったブラを買えば、「締め付け問題」はある程度解放されるようだ。とは言っても、常に体の一部がワイヤーに締め付けられていれば、夏は暑いし、食後は苦しいのもまた事実なのだが。
 

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例えば、今度発売されるワコールの『ルンルンブラ』は、「締め付け問題」と「乳首問題」を一挙に解決してくれるかもしれない。
 

ワコール社の調査によれば、回答者の約8割が「ブラジャーによる圧迫感やストレスを感じ、解放されたいと思うことがある」と回答し、シチュエーションによって、「きちんとメイクするブラ」と「ラクなつけごこちのブラ」を使い分けているそう。『ルンルンブラ』の特徴は、胸を締め付けることなく、シルエットは美しく保つこと。後ろホックやワイヤーをなくして、足から着用するステップインタイプの構造。これらが女性を締め付けから解放した。カラーバリエーションも豊富で、ラクでかわいくてシルエットがきれいと、4月中旬より販売開始されるようだが、一石三鳥のブラジャーになりそうである。
 

「ブラジャーの締め付け」と「乳首への視線」からの解放をもって、女性解放運動は完遂されたと言うべきか(どうなのか)。ブラジャーの締め付けと闘う女性の一人として、手にとってみたい。
 

(参考)『ルンルンブラ』サイト
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000124.000009664.html

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この記事を書いた人

木村奈緒

1988年生まれ。上智大学文学部新聞学科でジャーナリズムを専攻。大卒後メーカー勤務等を経て、現在は美学校やプラスハンディキャップで運営を手伝う傍ら、フリーランスとして文章執筆やイベント企画などを行う。美術家やノンフィクション作家に焦点をあてたイベント「〜ナイト」や、2005年に発生したJR福知山線脱線事故に関する展覧会「わたしたちのJR福知山線脱線事故ー事故から10年」展などを企画。行き当たりばったりで生きています。