『ジェンダー・マリアージュ』 ー世界が変わる瞬間ー

こんにちは。新名庸生です。
今回の映画は『ジェンダー・マリアージュ ~全米を揺るがした同性婚裁判~』です。
 

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【ストーリー】(公式サイトより)

同性婚が合法とされていたアメリカ・カリフォルニア州で、2008年11月、結婚を男女間に限定する州憲法修正案「提案8号」が通過。同性婚が再び禁止されることになった。この「提案8号」を人権侵害であるとして州を提訴したのが二組の同性カップル。クリス&サンディとポール&ジェフ。アメリカ合衆国最高裁判所で婚姻の平等が初めて争われるこの訴訟のもと、かつてブッシュ対ゴアの大統領選で敵同士だった2人の弁護士、テッド・オルソンとデヴィッド・ボイスも手を取り合う。愛とは、家族とは、人権とは……。彼らのかつてない闘いを5年以上に渡って撮影し続けた感動のドキュメンタリー。

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大変興味深く勉強になる作品であり、鑑賞することで世界の見え方も変わってくる作品だと思います。
 

2015年6月、Facebookで多くのアイコンがレインボー柄になった日がありました。世界が「あの日」を迎えるまで、いったい何が起こってきたのかを順を追って知ることができます。ドキュメンタリー作品ですが、話の中身は専門的すぎたり難解すぎることは決してなく、テンポよく展開していくので十分楽しみながら観ることが出来ます。
 

20160330
 

裁判での議論を見る中で非常に印象的だった点がいくつかありました。
 

まず、同性婚反対派に「同性婚を認めることで何か損害があるのか」という質問をした際に、相手の弁護士は「わからない」としか述べられなかった点。次に、同性婚反対派のひとりが主張の理由として「同性愛者は性生活が乱れておりHIVを蔓延させるから」と言うので、何を根拠にそういうのか尋ねたところ、答えが「インターネット」であった点。そして、別の同性婚反対派のひとりで、あらかじめ根拠となる理論を組み立てていたものの、議論を突き詰めてゆくにしたがってやがて同性婚賛成派に転じた参考人がいた点です。
 

これらのことは同性婚に関する議論に限らず、私たちが常に心に留めておかねばならないことを示唆しているように思います。
 

同性婚賛成派は歴史学的視点、発達心理学的視点、政治学敵視点など様々な角度から同性婚が決して「異常」ではないということ、同性婚を認めることが多くの人々を救うことを示していく一方で、同性婚反対派はそもそもなぜ同性婚が反対されなければならないのか、誰も具体的かつ客観的な根拠を提示することができませんでした。反対派の弁護士は「提案8号」が住民投票により可決されたという事実を盾に裁判に臨んでいましたが、「提案8号」の可決は今の価値観や環境を変えたくないマジョリティの票がマイノリティの票を上回った結果にすぎなかったことが窺い知れます。
 

世界は今まで何度も大きなパラダイム・シフトを経験してきました。結婚という制度も今、その存在意義が問われ直そうとしています。変化を受け入れることには苦痛が伴うものですが、それを受け入れることで多くの人々が救われるのならば、変われるときに変わるのが先に生まれてきた世代の役割です。
 

私もテレビやインターネットは好きですが、話題として取り上げられるのは構図がわかりやすく、あるいは構図にはめやすく、批判しやすいものが多いように思います。今回登場するクリス&サンディとポール&ジェフのように、相手と支えあい、子育てもしながら「普通に」暮らす同性カップルは多くいるにもかかわらず、彼らがメディアに登場することはほとんどなく、代わりに「同性愛者は普通ではない」というステレオタイプに合致する人々しか取り上げられないために同性愛者に対する偏見はますます加速するという現状があります。このような事態を忘れ、テレビやインターネットで世界中のことを知った気がしても、実はかなり偏った部分しか見ていないということは起きがちなことです。
 

また、どれだけ情報収集し自分の中で想像して理論を組み立てようと、実物と触れ合った途端にそれらが瓦解していくということもあり得ることです。同性婚反対派から賛成派に転じた参考人は「信念が邪魔になって、他人が見えなくなる事がある」と言います。クリス&サンディ、ポール&ジェフと実際に対面したという経験は、彼の心に大きな影響を及ぼしたに違いありません。
 

私もFacebookのアイコンをレインボー柄にしたひとりですが、正直そこに至るまでの過程を詳しく知っていたわけではありませんでした。その過程を知り、そしてそれ以上に、そこに関わってきた人々のことを知ることができて良かったと心から思えました。できるだけ多くの方に観ていただきたいと思う作品です。
 

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