『ツレがうつになりまして。』ー自分の生き様を誇ることー

こんにちは。新名庸生です。今回ご紹介する映画は『ツレがうつになりまして。』です。

 

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【ストーリー】(DVDパッケージより)

仕事をバリバリこなすサラリーマンの夫、通称ツレ(堺雅人)が、ある日突然、心因性うつ病だと診断される。結婚5年目でありながら、ツレの変化にまったく気付かなかった妻・晴子(宮崎あおい)は、妻としての自分を反省する一方、うつ病の原因が会社にあったことからツレに退職を迫る。会社を辞めたツレは徐々に体調を回復させていくが……。

原作は、著者自身の実体験を描いた細川貂々のベストセラーコミックエッセイ。監督は『陽はまた昇る』『半落ち』の佐々部清。宮崎あおい×堺雅人をはじめとする魅力的なキャストたちによって、珠玉のラブストーリーが誕生した!

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鬱病とは孤独と闘う病気でもあります。今まで当たり前のようにやれていた事ができなくなったり、数倍時間がかかるようになったり。「テキパキ動く」なんてことはまず不可能で、普通に社会生活をこなしている人々がスーパー超人に思えてきます。以前は自分も社会の真っ只中で暮らしていたということが嘘だったように感じます。社会とうまく関われなくなってくると自分自身の存在価値がゼロになったような気がしてきます。
 

それまで社会における自分の価値なんて深く考えたことがなくても、急に社会からつまはじきにされた気分になり「自分はどこかで道を間違えた」「そもそも自分はほかの人たちより劣った人間だったんだ」とそう思わずにはいられなくなります。私自身、そう感じる時期がありました。非常につらい時期でしたが、私のこの経験はそっくりそのまま本作『ツレがうつになりまして。』でも描かれていることに少し驚きました。
 

「自分も同じ経験をした」「気持ちがよくわかる」といったコメントを原作マンガや本作DVDのレビューで多く見かけます。私はこの作品が一度ネット配信された際に他の視聴者のリアルタイムなコメントと一緒に観ていたのですが、そのときも同じような感想が多くありました。「みんな似たような経験をしてたんだなぁ」と改めて気づきました。
 

鬱になった直接の原因を共有するのは難しくても、鬱になって感じる孤独感、無力感、絶望などは共有できるかもしれません。少なくとも自分の想像以上に多くの人が自分と同じような孤独・無力さ・絶望を感じていることを知ることは、「自分だけがこんな境遇にいる」という思いを和らげてくれるのではないでしょうか。
 

20160913
 

原作マンガを著者・細川貂々さんが出版しようと考え出してから出版後に反響を得るまでの経緯が、原作の続編『その後のツレがうつになりまして。』に描かれています。鬱は誰にとっても身近に潜んでいることを知ってもらわなければという使命感から本にすることを考え始めたものの、センシティブなテーマなので出版を断られたり、描いていいのかどうか何度も逡巡したそうです。
 

こんなの自分たちだけなんじゃないか、間違ったことを書いてないか、単なる自分らの苦労話に終わるんじゃないか、きっと多くの不安があったと思います。しかし出版後「他にもこういう人がいたんだって安心しました」という感想メールが多く届いたそうです。自分と同じような孤独と闘っている人々が多くいるということを知ることは、自分が置かれている状況を一歩引いて認識させてくれ、「自分に非がある」という考え方から遠ざかる助けになると思います。
 

『その後のツレがうつになりまして。』のあとがきで「ツレ」さんが『人はどんなときであっても、自分の「生きざま」を誇れるのだとわかった』と記しています。人は自分の生き様を誇っていい。それに気づいたことで細川貂々さんと「ツレ」さんは本を出版する決意をし、そしてその本が多くの人を救うことになりました。
 

決して自分を追い詰める必要はない。今生きているというだけであなたの過去は正しかったと証明されているのだから。今いくら辛くてもその今を生きようとしているだけであなたはとても尊いのだから。三年間の闘病生活を妻の立場で寄り添いながらも俯瞰した「ツレうつ」シリーズは、目先のことばかりに惑わされる日々の生活の中では忘れがちな「自分の生き様を誇る」ということを思い出させてくれます。
 

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