視覚を奪われた世界で学ぶ「暗ラーニング」

目で見て情報を得る、耳で聞いて情報を得る、手で触って情報を得る。視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚という五感の中で、情報を得るときに一番使うものは視覚と言われています。情報を得るときに五感を使う割合は視覚が83%、次いで聴覚が11%、以下、嗅覚、味覚、触覚の順で活用されます。視覚を奪われてしまうと、得られる情報量は急激に下がってしまうとも言えます。
 

また企業研修やセミナーでよく話される「メラビアンの法則」というものがあり、これはコミュニケーションを交わす中で相手からメッセージを受け取る際、視覚情報から55%、聴覚情報から38%、言語情報から7%の割合で情報を受け取るということが解説されているものです。人は話を聞くときにも、耳以上に目を使っているということです。
 

したがって、視覚を奪われた世界では、得られる情報量が減ってしまうため、行動量も必然的に低下します。まったく見えない世界に放り込まれてしまうと、仕事ができないことはもちろん、食事や排泄、睡眠という生理的な活動でさえ、恐怖と不安の中で行動することになります。
 

暗ラーニング中の風景(ゴールボール)
暗ラーニング中の風景(ゴールボール)

 

視覚を遮断された状態の中で自分自身のコミュニケーションのスタイルを振り返ることができるワークショップが「暗ラーニング」です。障害者スポーツとして有名なゴールボール(目隠し状態で鈴の入ったボールを転がし、ゴールに入れることで得点を競うスポーツ)や暗闇の中でのパーティーのセッティングなど、一風変わったワークを行いながら、自分自身のコミュニケーションの傾向を掴んだり、相手からの指示連絡がどのようにすれば伝わるかを振り返るプログラムで構成されています。
 

私自身、先日行われたワークショップに参加してきましたが、具体的に指示を出す必要性・共通言語で語る意味・指示語(こそあど言葉)を使うリスクなどをずしんと感じてきました。また、文字で伝えることの便利さや気軽さ、表情で伝わることの怖さなども再発見できました。受講者の感想にあった「視覚情報がなくなると世界が小さくなる」という言葉もかなり共感できるものです。
 

視覚を遮断することで学びを得るという形式は、「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」や「ブラインドサッカー」など様々ありますし、どれも近い学びを得ることはできるかもしれません。ただ、全部経験したことがある側から見ると、同じ会社や部署、顔の知れた仲間で受講するにはなかなかいいワークショップだなと思います。障害者スポーツを経験してみるという観点でもなかなかいいもの。機会があればぜひ楽しんでみてください。
 

(参考)
暗ラーニング紹介サイト
http://www.ahc-net.co.jp/unlearning/

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