児童養護施設出身の若者のスピーチコンテスト

全国に約600ある児童養護施設。そこで暮らすおよそ3万人の子どもたちが抱える「進学格差」という問題はあまり知られていません。高校卒業後、大学・専門学校への進学率は全国平均の3分の1以下(全国平均75%、施設退所者20%)であり、進学後の中退率は3倍という数字が出ています(全国平均10%、施設退所者30%)。
 

経済的に頼ることができる大人がいない、学費に生活費にすべて自力で稼がなくてはいけない、いざというときに心の内を開示できる大人がいないといったことが「進学格差」を生み出す背景。苦学生と呼ばれる方々と状況は似ているかもしれませんが、ネグレクトや虐待、両親との死別など子どもの頃から積み重なってきたタフな道のりに加え、未来を作っていく道まで自力で開拓しなくてはいけないという環境は、児童養護施設を巣立つ若者が抱える独自の生きづらさです。自分が夢を抱いていても、高校卒業後に働くという選択肢をとることは避けられないことなのかもしれません。
 

カナエールホームページのスクリーンショット
カナエールホームページのスクリーンショット

 

児童養護施設の子どもたちの自立支援を行うNPO法人ブリッジフォースマイルが開催するスピーチコンテスト「カナエール」は、コンテスト出場者に対して進学から卒業までをサポートする奨学金支援プログラム。1年に1回だけ開催されるスピーチコンテストという大舞台で、自分自身の夢を高らかに語ることが、奨学金を得るためのチケットとなります。奨学金は一時金として30万円、卒業まで毎月3万円支払われ、返済義務はありません。
 

「カナエール」は今年で5回目。昨年は東京・横浜・福岡という3拠点で、1200人を超える観衆が集まりました。今年も同じ3拠点で22人の若者が自身の夢を語ります(東京10名、横浜6名、福岡6名)。コンテストのチケットは5000円(福岡は3000円)でそのほとんどが奨学金に充てられます。
 

昨年のスピーチコンテストの様子
昨年のスピーチコンテストの様子

 

スピーチで語られる夢は様々ですが、ひとりひとりが歩んできた道から発せられる言葉は強く、また重みがあります。多くの人が経験していない20年ほどの人生は、聞く私たちに、自分自身の今と向き合う機会を与えてくれます。ぜひ一度、足を運んでみてください。価値観を揺さぶられる時間を体験し、その費用で多くの若者の未来に機会を与えることができる、なかなかない機会だと思います。
 

●カナエール2015
・東京会場 6月20日(土)13時〜16時半 四谷区民ホール
・横浜会場 6月28日(日)13時〜16時半 横浜市開港記念会館
・福岡会場 7月5日(日)13時〜16時 都久志会館
 

詳しくはカナエールホームページより
http://www.canayell.jp/

記事をシェア