私が最初にやったドラクエは「Ⅴ」でした。ハマりにハマって何回も遊んだドラクエⅤ。今、思い出してみると、ドラクエⅤの主人公はなんて不遇な人生なんだと思います。母と生き別れ、父は目の前で敵に殺され、10年以上に渡る奴隷生活。この時点で、生きづらさフラグはビンビンに立っています。「愛着障害」の本を持ち出せば、解説は容易にできるでしょう。奴隷生活を抜け出し、妻子に恵まれたのも束の間、石化され離ればなれに。その後石化が解かれるまで8年間を石像として過ごすなんて、ウツになってもおかしくないですし、自死を選んでも仕方ないよねと許してしまいそうです。
ゲームじゃないですか?石化とか実際にはあり得ないじゃないですか?と言われれば、その通りですねとしか言えません。ただ、自分の過去や状況に囚われず、自分がやりたいこと・やるべきことをやり続け、楽しいなあ・幸せだなあと言えるひとの人生は、ドラクエの主人公のようなたくましさがあるのかもしれません。
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「定価5,500円のTVゲームに面白さで負ける人生を送ってどうする!」というキャッチコピーが使われている本書。そのグサッとくるメッセージ、そして「ドラクエ」って所詮ゲームだよね?という偏見から、手に取って読むことを躊躇ってしまいそうですが、侮るなかれ、ドラッカーの難しい文章が『もしドラ』によって分かりやすくなったのと同じように、自己啓発本にありがちな胡散臭さのようなものが、ドラクエというフィルターを通すだけで、シンプルかつ納得度の高いものになるから驚きです。ここ最近読んだ自己啓発系の本で断トツに面白く、短時間でサクサク読み進めることができました。
人生にゲームの三大理論(目的、敵、ルール)を投入すれば、人生はゲーム化できる。
これが著者のベースとなる考え方です。ドラクエで言えば、シリーズどの作品にも必ず目的があります。ゲームのクリア条件とも言えるでしょう。その目的に向かって、ゲームの世界のルールに従いながら、敵を倒し、経験値とお金を貯め、魔法やスキルを身につけ、武器やアイテムを買い、目的達成に向けて前進していきます。ただ、よくよく考えてみると、これって実際の人生も同じだよね?アクシデントやピンチをそれこそゲームのようにわくわくしながら乗り越えていけば、人生楽しいものになるんじゃないの?というのが本全体から伝わってくるメッセージです。
さて「ドラクエの敵」と「人生ゲームでの敵」を対応させた時、何かに気付かないだろうか?そう、現実世界では、落ち込む要因となるものが、なぜか、ドラクエの世界では、必ずしも、そうはならないのだ(アナタはドラクエのモンスターと出会った時、現実世界の敵と遭遇した時のように落ち込んではいないはずだ)。(本書81頁)
これはこの本の中で一番好きな文章。ドラクエでは敵が出てくる度に、経験値が上がる!お金お金!仲間にならないかな?などとわくわくします。でも現実世界では驚くほどに嫌で、厭で、本当にイヤ。この捉え方の違いが、人生を楽しめるか楽しめないかの分かれ道であり、人生を謳歌するためのスパイスのように思えます。
現実世界でも、目的は簡単に達成できないところに存在しています。達成までの道のりの中で現れる障壁を打ち破れば、実際の人生でも経験値が蓄積されたり、お金を得ることができたりします。どんな苦境が訪れても、解釈や捉え方を変えるだけで、絶望感を味わうことなく、人生を前進していくことができるのかもしれません。本書では「置換力」という言葉が使われていますが、人生を楽しめるか否かはここに尽きるような気がします。
ちなみに本の中では目的の見つけ方、敵と遭遇したときの気の持ち様、ルールに対する捉え方なども細かく記されています。過去の偉人をゲーマー(人生というゲームの)と捉え、マザーテレサやスティーブ・ジョブズの言葉を散りばめてるあたりは、巧い構成だなと感じました。
Plus-handicapが扱っている「生きづらさ」は、順風満帆な人生を送っていきたいという想いに対する敵キャラです。障害や病気、事故や精神的トラブル。生きづらさを生み出す原因はたくさんありますし、ひとつでもありません。それこそ百者百様でしょう。しかし、現実世界で生まれた敵に、ドラクエのような「にげる」というコマンドは使えません。うまく「にげる」が使えたとしても追いかけられ続けます。結局、倒すか仲間にするかしか方法がないのです(これもまたドラクエに似ています)。
倒せるものならば倒せばいいことですし、仲間にするなら仲間にすればいいことです(生きづらさを解消するのか受容するのかと似ています)。感情の向くままに、逃げたり、恨み節を言ったり、嘆いたりしていても何も始まりません。ゲームのように「楽しい」や「わくわくする」と置換できなくても、状況を整理して、次の一手を考えるほうが効果的です。その整理と対策に時間がかかることは必然でしょうし、焦る必要はありません。ただ、感情の向くままの行動は、何も現実を変えられないのです。
ちょっとハンディがあるくらいが人生は楽しい。平坦な道を歩いたって面白くもなんともない。人生の豊かさなんて味わうことはできない。(2013年3月1日〜12月14日に掲載されていたPlus-handicapのコンセプトより)
Plus-handicapを立ち上げた頃に掲げていたメッセージですが、偉そうなことを言ってしまえば、人生をドラクエ化するという発想は、なんとなく私たちと似ているものなのかもしれず、なんだか嬉しい気持ちになりました。
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