「独断で選んだ注目の障害者便利アイテム」の記事を2014年1月から4半期ごとに書き、3年目を迎えますが、新しいアイテムは日々登場しています。
このシリーズを執筆しながら感じることは、障害者の生活を便利にするアイテムはコンパクトなモノが多いということです。今回の記事でご紹介する5つのアイテムのうち3つがウェアラブル(身に付けて利用する)端末やアプリです。
障害を克服するためのアイテムというと、バリアフリー、ユニバーサルデザインといった言葉が思いつきやすく、どうしても「大きなモノ」をイメージしがちですが、実際はとても小さく利便性の良いモノが主流です。それは目が悪いとコンタクトレンズやメガネを携帯するのと同じ感覚ではないでしょうか。障害者の便利アイテムもそんな時代が訪れているように感じます。それでは、いつものように独断で選んだアイテムをご紹介いたします。
●「DFree(排泄予知ウェアラブルデバイス)」
http://dfree.biz/
排泄の時間を予知するウェアラブルデバイスが日本企業によって開発されました。超音波センサーを内蔵した手のひらサイズのデバイスが、内臓の動きを把握し、排便や排尿の時間を教えてくれます。通知はスマートフォン上に表示され、ユーザーの内臓にある排泄物の状況や排泄までの時間が具体的にわかる仕組みになっています。
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このアイテムは障害者だけではなく介護業界にも革命を起こす予感がします。障害者や要介護者の外出における大きな課題は、排泄の不自由さにあります。車椅子ユーザー、視覚障害者、内臓機能障害者などが移動中に急に用を足したくなった時、トイレを探すことが困難であり、それが原因で外出を控える方も少なくないとか。急な排泄をある程度予測できるようになれば、当事者や介護人の負担は格段に減り、当事者の外出を促すきっかけとなるでしょう。超重要なアイテムです。
●「Halo(補聴器)」
http://trulinkhearing.jp/
スマホとアプリを介することによって、ワイヤレスヘッドフォンのように使える補聴器が「Halo」です。
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参考にした記事(マイナビbooksサイト内 Mac Fanの2015.10.19の記事)を要約すると、補聴器の性能の進化は目覚ましいようですが、それでも、補聴器ユーザーによって音を聞き分けるための最適な周波数は違い、同じ音でも人によって「聞きとりづらい」という現象があるそうです。さらにその日の気温やユーザーの体調などにも左右されるようです。
使い方は補聴器ユーザーがその場の周波数に合わせて調整を行うだけとすごく簡単。調整した音質(周波数)設定が20件まで保存でき、設定した場所に行くと自動的に音質設定を行えます。補聴器の調整は専門店に依頼することが大半で時間もかかるものだったそうですが「Halo」の登場によりこの問題も解決できます。
また、補聴器ユーザーにとって「電話」は周波数の歪みが生じるため、困難を感じるものですが、iPhoneで受けた電話音声はiPhone側で補正され、使用者の聞こえる周波数帯に歪みがなくなるそうです。他者ではなかなか知り得なかった補聴器ユーザーの悩みを解決し、その行動範囲を広げてくれることが予想されます。
●「Guide Glass」
https://pantograph.co.jp/guideglass/
視覚障害者の外出先での場所と周囲の状況を確認しながら、離れた場所にいる家族や支援者(遠隔者)が、会話を通じてサポートやガイドをするアイテムです。遠隔者はスマホと接続した外付け小型カメラが撮影する視野情報と、スマホから発信される位置情報を共有し、ネット上の音声通話で視覚障害者に指示を出します。これにより、視覚障害者は自分の目線による視覚情報での外出が可能になります。
このアイテムは、遠隔者を当事者の家族・知人などに依頼するというよりは、ビジネスとして組織化を視野に入れて開発が進んでいるようです。指示を出すツールなので、実際のトラブルがあった際の対応方法など課題もあると思いますが、今後が楽しみなアイテムです。現在、クラウドファンディングサイトReadyforにて、システムの開発費を集めているようです(やや苦戦中のようですが)。
(参照)
視覚障害者の目になれる遠隔ガイド・サポートシステムを開発!
https://readyfor.jp/projects/guideglass
●「スマートクラッチ(松葉づえ)」
http://www.smartcrutch.jp/product/
腕の角度を変化させることで、手や手首、脇の痛みを軽減する松葉づえが話題になっています。ひじから手首までをエルボーレストに乗せて使うことで、手だけに集中していた負荷を腕全体でカバーする構造。ワンタッチで10段階の高さに調整可能で、簡単に自分の身体へフィットさせることが出来ます。さらに、全7色のカラーバリエーションを揃えるなど、制作側はおしゃれアイテムとしての利用も提案しています。
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元々は南アフリカで生産されていたそうですが、現在は100%日本製品となり、世界13ヵ国で使用が進んでいます。現段階では、4万円前後という価格、購入はamazon経由なので自費ですし、少々高いかもしれませんが、今後の松葉づえ業界に旋風を起こすアイテムになりそうです。
●「手であが~る(車いすのタイヤを拭くための簡易ジャッキ)」
http://www.resja.or.jp/contest/2015/2015-kai-saiyuusyuu.html
車いすユーザーの困りごとのひとつに「他人の家に訪問しづらい」という問題があります。その理由は車輪の汚れ。自宅であれば、車輪を拭くスペースは確保できますが、他人の家だとなかなかそうもいかず、他人の家に行く際にはかなり気を遣うそうです。
「手であが~る」は車いすの車輪の汚れを拭き取る際に使用するアイテムです。車椅子の片方の車輪を持ち上げてくれ、スペースを取ることなく簡単に車輪(タイヤ)を拭くことが出来ます。このアイテムは、日本リハビリテーション工学協会が行う「福祉機器コンテスト2015」の最優秀賞を受賞したものです。ウェアラブルやアプリといったクールなツールもいいですが、アナログ感のあるアイテムは個人的に大好きです。
(参照先)
石垣市健康福祉まつり|義肢装具工房 LIFE JIG(ライフジグ)のブログ
http://lifejig.ti-da.net/e8198979.html
様々なアイテムは、外出・移動、学校での勉強、会社での仕事といった、障害者が日常生活において困難さを感じる際の解決手段だけではなく、趣味や余暇といった生活をより豊かにする場面において生じる困難さを緩和、解消する一面が生まれてきそうです。そしてこれは障害者を対象としたアイテムではあるものの、障害者以外の一般の人にとっても有益なものになるでしょう。
障害者の生活を便利にするアイテムがたくさん開発されることによって、障害があっても何も変わらず人生を楽しむことができるのであれば、障害を持っていようが関係のない社会が訪れるのかもしれません。その場合、障害を言い訳にせず、前向きに自分の人生を楽しむための覚悟が必要になってくるでしょう。アイテムが登場してから急にいろいろと自分の人生を考えて始めるのはなかなか大変ですので、今からでもそうした心の準備が必要なのかもしれません。
四半期に一度のこの便利アイテムの記事が、障害を抱えている方にとって、何かを考えるきっかけになるようでしたら大変うれしいですし、現在は障害と無縁の方であっても、世の中にある不便さに触れ、何かを思い馳せるきっかけとなれば幸いです。