働きやすい職場をつくるために、働く個人ができることは何か?というテーマで、前回は「環境適応」について書きました。組織としてメンバー一人ひとりの存在を承認することは大切だけど、同じように個人も環境適応することが大切という話です。
働きやすい職場づくりのために組織が気を付けるべきことと、個人が気をつけるべきことについて、私はそれぞれ大切な3つのポイントがあると思っています。
組織が気を付けるべきこと
・存在承認
・貢献実感
・成長予感
個人が気を付けるべきこと
・環境適応
・貢献意欲
・ビジョン
今回は「貢献意欲」について書いてみます。
貢献意欲なんてなくても仕事はできる
貢献意欲について考えるとき、まず大切なのは「貢献意欲なんてなくても仕事はできる」という事実です。どれだけ貢献意欲がなくても、貢献しなくても、契約上の時間だけ労働すれば給料をもらうことができるというのが日本の法律です。
給料をもらうだけなら貢献意欲なんていらない。貢献意欲なんてなくても仕事はできる。これは今回のテーマにおいて大切な事実です。
貢献意欲が働きやすさを生む理由
仕事をするうえで必須条件ではない貢献意欲が、なぜ働きやすさに関係があるのでしょうか?
それは、貢献意欲を持って働くことで一緒に働く周囲の人に「こんな仕事のやり方が好きなんだな」「こういう瞬間が仕事での喜びなんだ」と認識されるからです。
人によって貢献の対象は違います。社会、顧客、地域、職場の人たち、特定の誰かなど。誰に対して貢献したいと思っている人なのかを周囲が知ることによってそういう仕事が回ってくるかもしれません。
貢献すれば貢献される「返報性の原理」
貢献意欲が働きやすさを生むもう一つの大きな理由が「返報性の法則」です。
返報性の法則とは、人に何かをしてもらうとお返しをしないといけないと感じる人間の心理です。コンビニでトイレを借りたら100円でもいいから何か買わないといけない気がするとか、おごってくれた人のお願いなら断りにくいとかの、あれです。
ここでのポイントは「相手が貢献してくれていると感じている」こと。当たり前ですが、こちらは貢献したつもりなのに相手はそう思っていなければ、返報性の原理は成り立ちません。
最初の貢献は自己満足でいい
相手が貢献してくれていると感じることが大切、と先ほど書いたことと矛盾しますが、貢献なんていうのは、最初は自己満足で構いません。まずはやってみなければ貢献になるかどうかもわかりません。「これをやったら貢献じゃなくて迷惑と言われたらどうしよう」と思ってやらないのが最悪です。
社会への貢献なら「ちょっとだけ環境に良さそうなことをやってみる」
顧客への貢献なら「お客さんのメリットになることを一つだけ追加提案する」
地域への貢献なら「地域のイベントをできる範囲で手伝う」
最初はそんなことで構わないのです。もしかしたら、相手は「貢献してくれている」とは感じないかもしれません。それでも、続けれていればほとんどの人は気づきます。
自己満足でもいいから貢献すればいいのです。
貢献意欲のない人たちばかりだとどうなるか
貢献意欲なんてなくても仕事はできる。ということは冒頭でも書きました。全員が粛々と決まったことだけをやり続ける。とくにプラスアルファで何かをしようとはしない。そういう組織であっても、今まで問題がなかった組織もあるかもしれません。
そういった組織は、環境が変化しないときは大きな問題はないかもしれませんが、それこそコロナウイルスによる緊急事態宣言のような大きな環境の変化があったときには生き残れない可能性が高いでしょう。
なにせ、みんな言われたことをやるばかりで、環境変化にどう対応すれば社会やお客さんに必要とされるのかわからないわけですから。
貢献は意識ではなく行動で示す
就活の面接で「御社に貢献します!」という発言は誰でもできますが、実際には貢献の意欲を持った人とそうでない人がいます。また、貢献の気持ちは持っていても、周囲にそれがうまく伝わっていない人もいます。
せっかく貢献したいという意識を持っていても、実際に行動して貢献できなければ、返報性の原理などの貢献意欲によるメリットを受けることができません。働きやすい場づくりのために貢献意識を持つことが第一歩ですが、行動して実際に貢献することが何よりも大切です。
だまされたと思って、周囲への小さな貢献から始めてみてください。ちょっとずつですが職場は確実に変わっていきます。