ネット上で自分をさらけ出す、ということ。

先日、twitterでいきなり「あの文章は、私へのあてつけですか?!」と怒られた上に、即ブロックされた。正直、かなり混乱した。え、何のことですか?そして、あなたは誰ですか?
 

どうやら誤解だったようで、すぐにブロックを解除してくれて丁寧に謝罪をしてくれたものの「ネットでは、こういうことが起きるのか」という衝撃は残った。
 

逆に、ものすごく好かれることもある。初めましての方に長文のメッセージをいただいて、ありがたいし、うれしい。それでも、少し戸惑ってしまう気持ちもある。
 

たしかに、私は自分のことをさらけ出した文章を書いている。それでも、あなたがどんな人か、私からは見えない。
 

インターネットの文章だけでは、人との距離感の調整がむずかしい。オンライン上のコミュニケーションが増えるにつれて、そのことを実感している。
 

さらけ出す
 

みんな多少なりとも覚えがあると思うけれど、誰かのファンになるとその人を身近に感じたりするはず。ちなみに私は昨夜の夢にYouTuberが出てきて、ふつうに友達として接していた。昔、ドラマを観ていたときには、夢の中でV6の岡田君が恋人だったこともある。
 

毎日、接していると、脳が勝手に親近感を覚えてしまう。タレント、YouTuber、歌手、職業は何でもいい。ただ、発信している人である必要はある。だから、ジャニーズが結婚するたびに、悲しみのあまり出社できない人のニュースが流れるのかもしれない。
 

テレビやネットなどの場合、相手に伝わるのは気持ちではなくて、行動のみだ。ファンレターを出したり、プレゼントを送ったり、イベントに出向いたり、SNSに反応をしたり、何かしらの形でリアクションをしないと、相手には自分の存在すら伝わらない。
 

もし「自分が相手に詳しいだけ」なら、あまり気にならない。昔から知っている人かのように「ああ、この人らしいな~」なんて思いながら、テレビを見ていたりする。私もよくある。
 

でも、よく考えてみると、リアルな世界では片方だけが相手の情報を握っている状況は成立しづらい。たとえば、ジーッと見つめれば視線に気づくだろうし、いつも近くにいることも大体伝わる。「情報を収集している」ということ自体が相手に伝わってしまう。
 

「あんまり知らない人が自分の情報を集めている」と知ったら、ほとんどの人が警戒をすると思う。これは、相手の姿が見えたとしても怖い。自分のことを一方的に知られているというのは、弱点を把握されていることにもつながる。情報は生命線だ。
 

相手の姿が見えないと、余計に想像をしづらい。冒頭のように距離感をぐっとつめてくる人、いきなり攻撃してくる人もいるけれど、これは行動が表面上に出てきている人たちだ。
 

たまに、「前から、文章を読んでいます!」という台詞をサラっと言われたりすると、ドキッとする。この人、どこまで知っているんだろう?その人の自己申告しか、知ることができない。
 

ある意味で、文章、映像、写真、なんでも公開するということは、自分の一部がフリー素材になるということだ。どこでどう加工されるか、相手にどう捉えられているのか、誰のもとへ渡ったのかもわからない。
 

さらけ出す
 

自粛期間に、他の人となかなか会えなくて「コミュニケーションがオンライン上に移行した」人は多いと思う。もともとの知り合いと会う手段をオンラインにした人ばかりじゃないはずだ。「実際に会ったことがある」というのは、やっぱりネットだけのつながりよりも、土台として安定している。
 

一方で、「ネットで出会う」人もけっこう増えているじゃないだろうか。友人、恋人、どんな形でもいい。「ネットが居場所になっている人」はけっこうな数、いると思う。もちろん、ほとんどの場合は少しずつ仲良くなっていく。ネットの向こう側にいるのも、人であることは同じだ。
 

それに加えて、インターネットは広い。自分なんて、その中で言えば砂粒の一つだ。有名人でもあるまいし、何を言ったってそこまで大ごとにはならない。ほとんど炎上にはならない。それもある意味では、事実だけど一回公開してしまった情報は、自分でコントロールすることができない。すべては相手に委ねられている。
 

たまに「まな板の上の鯉ってこんな気分なのか?」と思うことがある。
 

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この記事を書いた人

森本 しおり

1988年生まれ。「何事も一生懸命」なADHD当事者ライター。
幼い頃から周りになかなか溶け込めず、違和感を持ち続ける。何とか大学までは卒業できたものの、就職後1年でパニック障害を発症し、退職。障害福祉の仕事をしていた27歳のときに「大人の発達障害」当事者であることが判明。以降、少しずつ自分とうまく付き合うコツをつかんでいる。
自身の経験から「道に迷う人に、選択肢を提示するような記事を書きたい」とライター業務を始める。