働きづらさを解消するために個人が意識したい3つのこと ①環境適応

働きづらさの原因は組織にあるのか個人にあるのか。
 

この命題について『早期離職白書』なるものを過去に3回発行して自分なりの考えを整理してきました。
 

働きづらさを解消するために組織が意識すべきことは

・存在承認
・貢献実感
・成長予感

という3つで、これが早期離職の三大要因であるという持論を2012年から勝手に提唱しています。
 

多くの方に賛同いただき、企業の経営者や管理職の方向けにもお話しさせていただく機会も増えました。実際に働きづらさを抱えている方々にも、この3つの要因の話をすると非常に共感いただけます。
 

一方、私が三大要因を提唱しはじめた2012年頃と比べると、働きづらさの要因を組織に求める風潮が格段に大きくなり、組織で働く一人ひとりが意識すべきことを棚にあげて組織批判をしているように見えることが多くなりました。
 

インタビューをしていても「確かに自分のいた会社には存在承認がなかった。やっぱりあんな会社はおかしい!」と言う方もちょくちょくいます。
 

そんな、組織に一方的に働きづらさの要因を求める声に、私は違和感を覚えてしまうのです。
 

働きやすい職場づくりのために組織がやるべきことは多い。では、個人がやるべきことは?

 

働きづらさをなくしていくために、組織がやるべきこととしては先ほどあげた存在承認・貢献実感・成長予感の醸成です。では、個人のやるべきことはなんでしょうか?組織に対して働きづらさの解消をただ求めるだけでいいのでしょうか?
 

私はなんとなく、組織に対して「自分が働きづらいのは組織のせいだ」と言っている人たちの多くは、本人起因の働きづらさ要因から目を背けているように思うのです。
 

先ほどの組織がやるべき三大要因と対比するならば、個人が心がけるべきことは次の3つだと思います。

・環境適応 ⇔ 存在承認
・貢献意欲 ⇔ 貢献実感
・ビジョン ⇔ 成長予感

今回は「環境適応」について私の意見を書きます。
 

働きづらさ解消
 

自身の存在を認めてもらうには、場に応じた振る舞いが必要

 

組織の一員として受け入れてもらうためには、組織のルールやマナーに従うことが必要です。
 

例えば、外国出身のメンバーがいたとします。あなたの自宅に招いたときにその人が土足で上がり込んできたらどうでしょうか?1回目なら「日本では玄関で靴を脱ぐんですよ」と教えてあげる人がほとんどでしょう。2,3回繰り返すくらいなら苦笑いしながらも教えてあげると思います。
 

でも、もしそのとき、相手の外国人が
 

「Why Japanese People? 玄関で靴を脱ぐなんてありえない!非効率だ!私の国ではそんなことはしない!いちいち靴を脱いでるから日本の生産性は低いんだ!!!」
 

とか言い出したらどうしますか?
 

あなたはその人と一緒に仕事をしたいと思いますか?私は思いません。どれだけ大きな仕事であったとしても、私はその人との仕事からは降ります。極端な例かもしれませんが、周囲から存在承認されないと言っている人の中には、このような人もいるのです。
 

自分の主張をするのは大切ですが、その場のルールやマナーを守ることも大切です。これが、環境適応です。環境に適応せずに「自分のことを認めろ!」と要求するのはちょっと違うと思うのです。
 

あなたが要求する配慮は、本当に必要な配慮か?それともわがままか?

 

お互いに存在を承認するためには、組織のルール・マナーを守ることが大切と書きましたが、働きづらさを抱える方の中には、様々な事情により、組織のルールを変更してもらわないと働けないという方もいます。そういう方への配慮も存在承認の一つです。
 

ここで大切なのは、組織に対して要求している配慮は本当に必要な配慮なのかどうかです。
 

例えば「保育園の送り迎えがあるので時短勤務で働きたい」という要望は対応が必要な配慮でしょう。では「朝が苦手なので午後出勤にしてほしい」というのはどうでしょうか?組織が配慮すべきことでしょうか?私はそうは思いません。
 

病気や睡眠障害なら話は別ですが、「朝が苦手な自分に配慮をしてくれていない。自分の存在をないがしろにされている」という人がいたとすれば、それはただのわがままです。組織に対して午後からの勤務を要求するのではなく、フレックスタイム制や午後からの出勤が可能な仕事にうつればいいのです。
 

働きづらさ解消
 

環境に適応するためにはお互いに存在を承認すること

 

環境適応といっても、なんでもかんでも周囲の言いなりになるとか、自己主張をしないということではありません。大切なのは「お互いに存在を承認しあいながら、わからない部分は明確にしていくこと」です。
 

存在承認とは、文字通り「その人の存在を承認すること」です。あなたはここにいていいんだよ、職場のメンバーとして認めているよ、受け容れているよ、ということ。存在承認がない状態で起きるのはパワハラ・セクハラ・暴力や暴言、無視などです。
 

個人が環境適応するときには、自分が無意識にハラスメントをしていないか、自分の発言が誰かに対しての暴言・言葉の暴力になっていないかの配慮が必要です。存在承認とは組織のメンバーの一人ひとりが互いにするものであって、誰かが一方的に誰かを承認するものではないのです。
 

同じ職場で働いていても、意外とお互いのことは理解できていないものです。組織でお互いの存在承認を高めるためには、一見理解のできないような主張や要望であっても、なぜそういう主張をしているのか考えること。要望が通らなかった側もふてくされるのではなくて、なぜ自分の要望が通らなかったのか?自分がどんな行動をすれば要望が通ったのかを考えること。
 

そういったお互いのちょっとずつの歩み寄りで、より働きやすい職場は実現するはずです。
 

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この記事を書いた人

井上洋市朗

「なんか格好良さそうだし、給料もいいから」という理由でコンサルティング会社へ入社するも、リストラの手伝いをしてお金をもらうことに嫌気が差し2年足らずで退職。自分と同じように3年以内で辞める若者100人へ直接インタビューを行い、その結果を「早期離職白書」にまとめ発表。現在は株式会社カイラボ代表として組織・人事コンサルティングを行う傍ら、「生きづらい、働きづらい環境を変える方法」についての情報発信を行っている。