やるべきことなんて実はほとんど存在しない。Will・Can・Mustで考える③

昨年より、生きづらさを減らすためのヒントとして、自分のことを「Will・Can・Mustで分けて考える」というフレームワークがあることを紹介してきました。
 

will can must
 

これまでWill・Can・Mustのうち、WillとCanについてはそれぞれ、
 

 

 

という記事でご紹介してきました。
 

ここまでの話しをまとめると、こんな感じです。
 

Will(やりたいこと)については、ないからといって悲観することはない。やりたいことが見つからないなら「やりたくないこと」から考えてみるのもあり。
 

Can(できること)については、できるかできないかというのは、結局自分が決めることだから、自分が「できる」と思えればそれでOK。自分は何もできないと思っている人は、自分への要求水準を勝手に高めているだけだから、自分への要求水準を下げればいいだけ。
 

will can must
 

では、最後のMust(やるべきこと)について考えてみましょう。
 

本当にやるべきことなのか?

 

WillやCanに比べると、Mustは自分ではコントロールできないと思っている人が多いかもしれません。企業研修などでWill・Can・Mustの話しをすると、Mustは企業から与えられた業務命令やノルマだと思っている人もいます。
 

たしかに、Mustには周囲からの期待やノルマなども影響しますが、最終的には自分自身が「やるべきこと」と認識しているかどうかです。自分自身がやるべきことだと納得できていないのに、仕方がないからやっていることは本来「やるべきこと」ですらないのです。
 

そう考えると、今のあなたの仕事はやるべきことですか?上司の言うことに従うのはやるべきことですか?マニュアル通り仕事をするのはやるべきことですか?
 

なんとなく「やるべきこと」と思い込んでいるだけで、実はやるべきことではないケースだって珍しくはないのです。
 

やるべきことをやらなかったらどうなるの?を考える

 

やるべきことなのかどうかわからないときには、「その行為をやらなかったらどうなるか?」を考えてみてください。
 

上司の指示に従わなかったらどうなりますか?
営業ノルマを達成しなかったらどうなりますか?
マニュアル通りに動かなかったらどうなりますか?
 

多くの場合「怒られる」程度ではないでしょうか?
 

冒頭に紹介したように「やりたいことなんてなくても死なない」と私は思っていますが、同じように「やるべきことをやらなかったくらいでは死なない」とも思っています。今の日本でやるべきことをやらないと「死ぬ」という状況は、ほとんどないでしょう。
 

ちなみに、職場での指示を無視してクビになったらお金がなくなって死んでしまうという人もいますが、日本では上司の指示を無視した程度で社員を解雇することはできません。
 

ドラマなんかで「そんなことしたらクビだぞ」と言うシーンがありますが、明確な職務規定違反でもない限りは解雇にはなりません。程度の差によりますが、やるべきことをやらなかった程度でクビにはならないので安心してください。
 

will can must
 

やるべきことのその先の目的を考える

 

やらなくても死にはしないけど、それでも自分が不快な思いするのは嫌という人もいるでしょう。そんな方はやるべきことの目的を考えましょう。
 
 
営業ノルマの目的はなんでしょうか?
仕事のマニュアルの目的はなんでしょうか?
 

例えば、営業ノルマを達成することの目的が上司に評価されることだったとします。では、上司に評価される方法はノルマ達成以外にはないのでしょうか?また、上司に評価される目的はなんでしょう?給料アップでしょうか?だとしたら、給料をアップさせる方法はほかにもありませんか?
 

「手段が目的化してしまう」という言葉がよく使われますが、Will・Can・Mustで考えるときにもWillとMustでは手段の目的化がおこりがちです。
 

特にMust(やるべきこと)を考えるときには「なぜやらなければいけないのか?」を想像してみると、実は他のことが「やるべきこと」であったりします。
 

私の仕事を例にとってご紹介します。私は企業研修を行っていますが、企業研修には自分でカリキュラムやテキストをゼロから作成するタイプのものと、いわゆる研修会社と呼ばれる会社がカリキュラムやテキスト開発を行い、私たち講師がカリキュラムに沿って進行していくタイプのものがあります。
 

このうち、カリキュラムに沿っておこなう研修では、カリキュラム通りに進めることが「やるべきこと」と思われがちですが、違います。研修を講師として任された私がやるべきことは、研修の目的を達成することです。研修の目的は場合によって異なり、知識習得であったり、実務のシミュレーションを通じた気付きの醸成であったり、さまざまです。
 

極端な話、カリキュラムに沿っていなくても、研修の目的が達成できればいいのです。実際、私は本来のカリキュラム内容から脱線して進めることもありますが、今の多くの研修会社さんと良好な関係を維持しています。中には、私が脱線してやりだした内容が今では正式のマニュアルに記載されている例さえあります。
 
 
目先のやるべきことにとらわれるのではなく、やるべきことのその先に何があるのかを考える癖をつけましょう。
 

やるべきことに追われているなら、全部捨てればいい

 

やるべきことの目的なんて考える余裕もないくらい、目の前にやるべきことに追われているんだ!という人もいるかもしれません。
 

そういう方々は、一旦すべてのやるべきことを放棄してみてはどうでしょうか?すべてのと言っても、命にかかわることは最低限で続けた方がいいですが(例えば生命維持のために定期的な通院が必要な場合など)それ以外の「やるべきこと」と思っていることはすべて放棄してみてはどうでしょう?仕事上のタスク、家庭での役割、煩わしい用事などなど。
 

一旦捨ててみると、実はやらなくてもなんとかなることは意外とたくさんあるのです。
 

やるべきことなんて実はほとんど存在せず、自分が勝手につくりだした幻想

 

ここまで、やるべきことの見直しと、最後に捨てる方法をお伝えしてきました。
 

そんな簡単にやるべきことを見直したり放棄したりできないという方もいるかと思います。なぜなら、やるべきことというのは、自分自身が勝手に「やるべき」と思いこんだものだからです。人間の思い込みを直すのは並大抵のことではありません。だから、やるべきことを見直すのは大変で当たり前なのです。
 

ただ、一つ理解していただきたいのは、あなたの人生でやるべきことなんて実はほんの少ししか決まっていません。あとはやりたいかどうかです。やるべきことに追われてしまっている状況は、周囲の環境が変わらなくても、自分自身の気の持ちようで変わるのです。
 

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この記事を書いた人

井上洋市朗

「なんか格好良さそうだし、給料もいいから」という理由でコンサルティング会社へ入社するも、リストラの手伝いをしてお金をもらうことに嫌気が差し2年足らずで退職。自分と同じように3年以内で辞める若者100人へ直接インタビューを行い、その結果を「早期離職白書」にまとめ発表。現在は株式会社カイラボ代表として組織・人事コンサルティングを行う傍ら、「生きづらい、働きづらい環境を変える方法」についての情報発信を行っている。