障害を「わかる」ってどういうこと?―Collable山田小百合さん・湯浅真衣さん×編集長対談

collable対談
 

「妹が僕に映画をつくらせた」
 

知的障害と自閉症を持つ妹・千鶴さんと、その母を一年間撮り続けたドキュメンタリー映画「ちづる」。本作の監督でもあり、千鶴さんの”兄”でもある赤﨑正和さんは本作を撮り終えた後、家族との向き合い方を見つめ直したそうです。
 

本作は赤﨑さんの卒業制作作品として企画。公開前から話題を呼び、公開後もたびたび上映会が行われるほどの話題作。赤﨑さんと同じく「発達障害の家族がいた」と話す湯浅真衣さんがNPO法人Collableの代表山田小百合さんと上映会を企画しました。
 

今回はそんなお二人とPlus-handicapの編集長佐々木が「なぜ、今あらためて『ちづる』の上映会をするのか」について語りました。
 

『ちづる』は、障害のある姉と自分を振り返るための題材だった

 

佐々木:
早速ですが、今回、映画『ちづる』の上映会をすることになったきっかけって何ですか?
 

NPO法人Collable 山田小百合

NPO法人Collableの代表、山田小百合さん


 

山田:
最初のきっかけは、湯浅がCollableに参加したことです。
 

湯浅が通う大学で、Collableとも関係の深い猪瀬先生がCollableへの参加を勧めてくれたそうなんです。でも、なんでインターンで参加してくれたのか?
 

●初めてインターンにチャレンジする私の挑戦|note
https://note.com/mai_kos/n/ncf48dc88e120
 

実は、湯浅のお姉さんは発達障害を持っていたようなんです。
 

湯浅:
わたしの6歳上の姉は先天的にアスペルガー障害、後天的に強迫性障害があるんです。でも、「そういうもの」と受け取っていて、「どう関わればいいのか」を真剣に考えたことがなかったんです。Collableなら発達障害も含めて、自分と違っている人との関わりかたを学べる気がして参加しました。
 

山田:
湯浅と話していて、まだ自分の中で言語化できないモヤモヤがありそうだったんです。
 

まずは自分を振り返れる機会があった方が自信につながりそうだなと考えていたときに、「ちづるがあるじゃないか!」と思いました。
 

佐々木:
なるほど。兄の視点で重度の知的障害の妹を追ったドキュメンタリー映画なので、湯浅さんが自分を振り返る題材としては最適かもしれない。
 

山田さんは、以前Plus-handicapで『ちづる』の上映会をしたときにゲストで来てくれた方ですもんね。
 

山田:
4年位前でしたっけ?
 

佐々木:
そのくらいだったと思います。『ちづる』は、障害を持つ家族にスポットを当てた珍しい映画ですよね。当時、大学生が制作した点でも話題になった映画ですが、知る人ぞ知る作品だったので、少しでも知る人を増やしたいなって考えたんです。
 

湯浅:
『ちづる』を撮影した赤崎さんと私って似ている部分が多いと思ったんです。赤崎さんも撮影中は大学生でしたし、きょうだいが障害を持っていた。私も赤崎さんと同じように「そういうもの」と受け取っていながら、どこかその感覚に違和感も覚えていたんです。
 

「誰にも話せなかった妹の事」のひと言も「そうそう!」「わかる!」って気持ちになりました。
 

佐々木一成
 

佐々木:
湯浅さんが、お姉さんの障害をはっきりと認識したのはいつくらいですか?
 

湯浅:
うーん、小学生のころからなんとなく感じてはいたんですが、顕著に出てくるようになったのは姉が中学3年生、わたしが小学3年生のときです。姉が自分の通学カバンが重すぎて駅に置いて家に帰ってきてしまったんですよ。
 

山田:
えっ! 珍事件!
 

湯浅:
お財布の中身以外は大丈夫だったんですけど、鞄が見付かるまでは教科書なしで過ごしたみたいです。
 

佐々木:
駅から自宅まで遠いんですか?
 

湯浅:
いえ、2分です。20分ぐらいかかるなら「重いから」で置いてくるのも理解はできたんですが……そこから「姉はちょっとふつうとはちがうところがあるのかもしれない」と思い始めました。
 

障害のある姉がいたから、他の人の話を否定せずに聞けるようになった

 

佐々木:
湯浅さんは、当時、お姉さんの障害のことって周りの人に話せました?
 

湯浅:
最初のころは、全然話せなかったです。周りに話せる人はいませんでした。周りに障害のある人がいなかったので「話をしたら、引かれちゃうんじゃないか?」と心配で。
 

佐々木:
たしかに、気軽には話しづらいですよね。話せるようになったのはいつごろから?
 

湯浅:
高校1年生の時に友人の1人に打ち明けたことをきっかけにだいぶ打ち明けられるようになりました。
 

家族との関係性で悩みを持っていた友人から「家族がいろいろ大変なんだよね」という話をされたんです。それでわたしも自分も家族の話をしてみました。いまでも「良かったな」と思うのは、真剣に聞いてもらえたことと引かれなかったこと。
 

「わたしが思っているよりも重くない話なのかな?」と思えたんです。
 

佐々木:
「打ち明けても引かれないんだ」は安心感になりますよね。話しやすいと「立ち止まれる」気がします。
 

湯浅真衣

Collableインターン、湯浅真衣さん


 

湯浅:
「立ち止まれる」って良い表現ですね。
 

最初の経験がそんな感じだったせいか、わたしも相手の話を聞くときにはなるべく否定しないようになった気がします。第三者からでは見えないこともありますし、わたしだったら自分の話をそうやって否定されたくないので。
 

佐々木:
それは大事なことですよね。自分のことを否定されたくないのに、他人を否定する人もいますけど(笑)それって、大体自分に跳ね返ってきますし。
 

当事者との接点を持ちづらい人は、どうやったら聞く力を獲得できる?

 

佐々木:
僕は「障害当事者だから、障害者のことをわかるか」というと、全然そうじゃないと思っていて。僕は義足ユーザーだけど、同じ身体障害者の中でも目や耳の不自由な人のことは全然わからないし。知的障害や精神障害の人はもっとわからないです。
 

山田:
たしかに。障害者と広いくくりでは同じでも、本人の困っていることとかは全然ちがったりしますしね。
 

佐々木:
そうなんです。
 

「わかる」とは言えないんですけど「知る努力」はしています。これが派生していくと、LGBTの人とかの心苦しさにも仮説を立てることはできるかなと思っていて。どんな経験や力があれば推察できるようになるのかっていうのはわからないんですが。
 

山田:
うーん、どうしたらいいんでしょう……
 

私も含めて、近くに障害当事者がいる人って、気づいたら障害者のことを大体知った気になっちゃうんですよね。でも、視覚障害のある人とワークショップをやったときに「あ、自分は知的障害の人以外のことは全然知らないんだ!」と気づけたんです。そういう経験を積み重ねることも大事かなと思っています。
 

佐々木:
同じ障害でも一人ひとりで違っていることもある。複数の人に会ってみることで気づけることもあるかもしれませんね。
 

山田:
それに近いですね。目の見えない私の友人にも違いがあって、街で困っているときに横から声をかけて欲しい人とうしろから声をかけて欲しい人がいるんです。
 

それなのに「目の見えない人は横から声をかけてもらうといいってことがわかりました」と言われてしまうと、「ちょっとちがうよなぁ」と思います。その人はそれが良いだけであって、ほかの人は違っていることもあるんですよね。
 

佐々木:
一般化した方がわかりやすいこともあるとは思うんですけどね。この世の中にアスペルガー攻略本とかあれば助かる人はいっぱいいると思うんですが(笑)。
 

山田:
たしかに(笑)。でも、どの人にも共通する攻略方法を見つけ出すのはむずかしくないですか?
 

一般化できるところと、一般化から外れても対応できる、関われるところを持っておくといいですよね。 細かいところをたとえ外したとしても「この人はそうなのね」でいいと思うんです。
 

Plus-handicap対談
 

佐々木:
たとえば、僕は5〜10分の義足体験で「こんなに大変なんだ!」とか「これで走れるってすごいですね!」と言われてもピンと来ない。「そんなんで知ったつもりになられても…」って感じ。それこそ、丸一日の生活を体験してから言ってほしい。
 

ただ、ひとりひとりを個別に知っていくのは必要だとは思うんですけど、どこまでやるのかは考えないといけない。
 

そう考えていくと、どこかで諦めなきゃいけない瞬間は出てきます。「ここまでやった方がいい」と「全体最適な諦め」のラインを引かないといけないんじゃないかな。
 

湯浅:
さっき、山田さんが「近くに障害当事者がいる人って、気づいたら障害者のことを大体知った気になっちゃう」と話していましたよね。
 

わたし自身も姉を知ることで知った気になっていました。さらにその気持ちは、障害者の姉を将来的には支えなきゃ!という想いにつながり、障害者は全員助けるべき存在と感じて認いました。佐々木さんと話して、それが偏見にもなるって気づけました。
 

山田:
そうだよね。湯浅が言うように「障害がある=助けるだけ」って存在じゃないことを意識しておくことも大事なのかも。
 

佐々木:
一般家庭に育っていたら、そもそもその意識を持てる機会が少ないじゃないですか? 自分自身や家族に障害がなければ。でも、それは「障害がある」だけではなく、障害がなくても親子間、きょうだい間では気づく必要があることで。「助けられている」ことも「助けている」こともあるって。
 

湯浅さんも山田さんも、学生のときに自分が助ける側も経験して、同時に自分が助けてもらってきたことにも気づいた。その経験は大切だなと思います。
 

山田:
そうですね。今回の『ちづる』のイベントでは「当事者ではない人」に関わってほしいという想いもあります。
 

 

(イベント開催概要)
ドキュメンタリー映画「ちづる」上映会&トークイベント
ー障害者ときょうだいの多様な関係性、そして、家族について語ることについてー
 

【日時】2020年2月8日(土)14:00-17:00(13:30開場)
【場所】明福寺(東京都港区三田四丁目4番14号)
【定員】40名
【入場料】無料
【申し込み先】
https://collable-mix-003-chizuru.peatix.com/view
 

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