爪を噛む自傷行為でしか心の不安を取り除けなかった私の今。

子どもの頃、父と母が喧嘩をして家の中に罵声が飛ぶと、私はお腹を壊すことがあった。
 

病院へ行くと「自律神経失調症」と診断され、丸くて白い薬をもらった。何に効くのかは分からなかったが、お腹が痛くなると、その薬をおまじないのように飲んだ。
 

父と母の喧嘩は私にとってすごくストレスだった。そして、お腹を壊す以外に、爪を噛むというクセがついた。
 

イライラするとつい爪を噛んでしまう。爪だけじゃなくて、まわりの皮膚も噛んでしまう。私の手はつねにボロボロだった。
 

爪を噛む
 

いつも深爪で、爪の周りから血が出ているような自分の手が、私は心底嫌いだった。一応女の子だ。手は綺麗な方がいいに決まっている。
 

手の爪や皮膚に噛むところがなくなると、次は足の爪や皮膚をちぎっては噛んだ。
 

また、虫刺されや傷口のカサブタを剥がしてしまうクセもあった。何度カサブタが出来てもむしってしまうので、いつまで経っても治らない。
 

このクセは、大人になっても治らなかった。
 

イライラすると、早くイライラを解消しなければならない!と思い、つい爪を噛んでしまう。大人になってからはタバコもはじめた。ボロボロの手足は相変わらずで、タバコをはじめたことで肌も荒れた。
 

苦悩
 

私は幼い頃から常にストレスがある状態で、それをうまく発散する方法を知らなかった。大声を出すわけでもない、泣くわけでもない、暴れるでもない。ただただ布団に丸まり、耳を塞ぎ、時が経つのを待つだけだった。
 

大人になってからは仕事や人間関係でストレスを抱えるようになった。常に何かにイライラし、キレている状態。「あの人が全然仕事しない」「売上が悪い」など、良くないことが起きるたびにイライラしていた。
 

ストレス解消がうまくできなかったのはあいかわらずで、長年蓄積されたイライラは、とうとう病気となって私の身体を蝕んだ。
 

ある日原因不明の病に襲われた。原因は分からないが、日々のストレスや疲労が関係しているかもしれない、という。
 

幼い頃から貯め続けたイライラは身体の中をちょっとずつ、ちょっとずつ蝕んでいたのだ。
 

病に倒れ、会社を辞めた。自分を大切にしたかった。なるべくストレスフリーな生活をしようと心がけた。爪を噛むクセは治ってなかったが、タバコは辞めた。
 

そこから10年かけて、ストレスとうまく付き合えるようになり、とうとう長年のクセだった爪噛みをやめることができた。
 

長年噛んできたので、爪の形は悪いが、手も足も傷んでいない。ただ、イライラしたり不安になると、カサブタをむしってしまうクセはまだ治っていない。
 

爪を噛んだりむしったりすることは、自分で自分の身体を傷つけているのだから自傷行為と言える。自分で自分を傷つけることでなぜか自分を守ろうとしてきた。
 

そんなやり方は間違ってると頭のどこかで気づいているのに。だけど、正当な方法が分からないから、そうするしかなかった。
 

親のことは恨んでない。むしろ感謝している。だが、幼い頃受けた傷は消えない。
 

染み付いた貧困
 

私は結婚というものにすごく憧れる反面、どこか嫌悪感も抱いている。37歳にもなって独身で、周りから白い目で見られても、どこか「結婚」が恐ろしい。
 

他人と暮らすことは、きっとストレスになる。そのストレスはうまく消化しないと私みたいに子どもに降りかかることにもなる。子どもは「ストレスがある」とは言えない。「つらい」とは言えない。ただただ布団に丸まり耐えるだけの毎日なのだ。
 

不幸な家庭にしたくない。そのためにはまず自分がストレスとうまく付き合えなければならないのではないか。そう思ってきた。
 

自分の親には感謝しているが、ああはなりたくない。私のような苦しい思いをする子どもがいてはならないと思う。
 

自傷行為でしか自分を守ることを知らなかった私は、少しずつストレスとうまく付き合えるようになり、結婚についても前向きに考えられるようになった。
 

こうなるまでとても時間がかかったし、普通の家庭に生まれていれば…と思うこともある。
 

だけど、これが私なのだからしょうがない。
 

もし結婚式を挙げることがあれば、ちゃんとネイルしたい。傷んでない爪に、綺麗なネイルを施して、堂々と。
 

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