障害者雇用のプロが語る、合同説明会の歩き方。ー株式会社綜合キャリアトラスト福岡支社の皆さまに聞く。

一般企業で働きたいと考える障害者にとって、企業選びのひとつの機会となるのが合同説明会。地方自治体、ハローワーク、障害者雇用を支援する企業などが主催する合同説明会は各地で定期的に開催されています。
 

ただ、障害者雇用における合同説明会で何を聞けばいいのか、何を伝えればいいのか、何をすればいいのかは、あまり知られていません。
 

知る人ぞ知るノウハウが、ごっそり埋もれているような状況です。
 

昨年度に引き続き、福岡県全体の障害者雇用を推進するための事業に取り組む、株式会社綜合キャリアトラストの福岡支社の皆さまに、求職中の障害者、障害者を雇用したい企業それぞれにとっての、合同説明会の活用方法やメリットについて伺いました。
 

綜合キャリアトラスト
 

合同説明会は「様子を見に行くためだけ」でもいい。

 

数十社が集まる大規模なときもあれば、数社と密にコミュニケーションがとれる座談会形式のようなときもある合同説明会。
 

実際のところ、就職したい!自分に合った企業を見つけたい!と就職に対する意欲が高い人が集まる場なのでしょうか。
 

「合同説明会は面接ではないですし、話を聞いた企業に応募(エントリー)しなくてはいけないこともありません。どんな企業が出ているのかな、どんな仕事があるのかなと、様子を見に行くだけでも十分だと思います。それこそ、家から一歩外に出ようという理由でもいいかもしれません。(大野さん)」

 

「自分と同じような求職中の方の様子、企業の担当者の皆さまの雰囲気などを知るための参加もOKです。周囲を見ながら刺激を受けたり、次の開催までに就職に向けて自分がどういう準備をしておけばいいのかを考えたり、そういう活用方法も大事です。(森さん)」

 

綜合キャリアトラスト
 

障害者雇用の場合、障害の種類や程度、障害を負った経緯などによって、就職活動を始める前に、自身の障害理解や体調管理から進めていかなくてはならない場合があります。
 

自分に合った企業、自分にあった仕事を見つけるまでに、それなりの時間がかかることもしばしば。就職活動の長期化がありえるからこそ、合同説明会を「企業選び」だけではなく「就職活動に臨めるかどうかの状況確認」に活用する機会と捉えることも重要かもしれません。
 

「本音を言えば、合同説明会では何社も回るほうがよくて、待っている時間、並んでいる時間がもったいないので、採用担当者の方が空いているブースがあれば、積極的に行ってほしいです。ただ、それは、自分が何のために来たのかという目的によるところ。企業の話を聞きにきたのであれば、たくさん回ってほしいし、雰囲気を知るためにきたのであれば、そこまでは頑張らなくていいと思います。(大野さん)」

 

「就労移行支援事業所など、働きたい障害者のサポートをしている法人が、企業の人とコミュニケーションを取るための練習として足を運んでいることもあります。障害の種類によっては、合同説明会の雰囲気だけで緊張してしまうなどありますが、気兼ねなく参加してほしいなと思います。(森さん)」

 

綜合キャリアトラスト
株式会社 綜合キャリアトラスト(サイトのスクリーンショット)

 

企業側が聞きたいこと、知りたいこと

 

合同説明会は、企業を選ぶ機会であると同時に、企業側の目線に立てば、少しでも多くの求職者と出会いたい場でもあります。
 

企業と求職者のコミュニケーションの場でもある合同説明会で、企業側が聞きたいこと、知りたいことは、どのような情報なのでしょうか。
 

「企業側が聞きたいことは、本人の障害とどのような配慮が必要なのかという点です。話を聞きながら、想定している現場で働くことが可能か、企業としてどのような準備が必要かを考えます。(大野さん)」

 

「企業側が聞きたいことを準備して合同説明会に参加すれば、企業とのやりとりはスムーズです。また、どういう仕事を任せてもらえるか、任せてもらえそうかといった質問も準備しておくといいです。そこから仕事内容や普段の仕事の様子などを知ることができます。(森さん)」

 

合同説明会で情報交換できていると、その後の面接や選考などでいろいろなことを確認できる関係性が生まれます。言い換えれば、合同説明会で仲良くなっていたほうが、メリットが大きいということです。
 

「その企業で実際に働けるか確認するためにも、企業を見学したい、実習したいという要望が多く、その要望に快く応じてくれる企業も増えてきました。ただ、企業側の本音としては、見学や実習の前に書類選考したい、少なくとも履歴書や職務経歴書などを確認したいという声を聞くことがあります。(大野さん)」

 

合同説明会の後には、顔合わせ、書類選考、面接、見学、実習など、企業によってさまざまな選考の流れがあります。
 

働くことへの意欲が高ければ、合同説明会の後のことを考え、企業側に何を伝えればいいのか、何を聞けばいいのかを整理して臨むほうが効率的です。
 

「私たち福岡支社にもSAKURA福岡天神センターという就労移行支援事業所が併設されていますが、自分ひとりで就職活動を進めていくのはかなりの負荷がかかります。活用できるものは活用したほうがいいと思いますし、プロに任せたほうが楽な部分も多いです。(大野さん)」

 

綜合キャリアトラスト
 

合同説明会への参加に緊張する障害者の方も多いかもしれませんが、それは企業にとっても同じこと。
 

緊張で震えている担当者がいたり、初参加で不安が拭えない企業もあります。企業側もまた、選ばれるかどうか悩みや怖れを感じていることもあるのです。
 

「企業側も障害者雇用に対する自社の意識や取り組みを、合同説明会でいろいろな求職者の方とコミュニケーションを取ることで確認したり、検証したりしています。今のままではダメだと自社の認識を見直す企業もあります。双方にとっていいスタートを切れるように、私たちもバックアップしていきたいです。(大野さん)」

 

障害者を雇用する企業を増やす、障害者が働きやすい企業を増やすという事業を進めているからこそ、その出会いとなる合同説明会の活用方法を具体的に伺うことができました。
 

障害者側も、企業側も、そこまで恐縮しすぎずに、普段の自分たちを伝え合うほうが、ミスマッチが生まれない、お互いにとっていい就職につながるのかもしれません。
 

(今回の取材先)
株式会社 綜合キャリアトラスト 福岡支社
福岡市中央区天神1-9-17 福岡天神フコク生命ビル3階
http://socat.jp/
 

(綜合キャリアトラスト 福岡支社の取り組み)
福岡県障がい者お仕事支援 マッチングサイト
https://fukuokapref-navi.jp/
 

ライター:佐々木一成

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Plus-handicap 取材班