表面だけの優しさは要らない。配慮はしても遠慮はしない、障害者雇用の現場。 ー株式会社マイナビパートナーズ 藤本さん・岩間さんインタビュー

障害のあるひととともに働いていると、相手に遠慮してしまい、なかなかうまくマネジメントできない、自分の意見を伝えられないという言葉を伺うことがあります。
 

障害の種類や程度、障害を負った背景などを考えると、障害への配慮が先に思い浮かび、言動や態度に遠慮が発生することは、想像に難くありません。
 

先日の取材記事(「これまでにない特例子会社にする」という意欲 ー株式会社マイナビパートナーズ 藤本さん・岩間さんインタビュー)にてお話を伺った株式会社マイナビパートナーズは「配慮はしても遠慮はしない」というスタンスのもと、障害者雇用の現場でのマネジメントを実践しています。
 

代表の藤本さん、障害者社員の雇用を束ねる岩間さんに、そのマネジメントの姿勢を伺いました。
 

藤本さん、岩間さんの写真

マイナビパートナーズの藤本さん(右)岩間さん(左)


 

高い定着率の背景にあるもの

 

定着率90%以上。精神障害や発達障害がある社員を多く雇用している会社であることを考えると、これは驚くべき数字です。
 

「定着率が高いのは、マネジメントをしているスタッフの質によるところが大きいです。「厳しく優しいメンバーが揃っている」と感じています。また、何人かには無理を言って本社から来てもらいました。本社で働いていた方たちだけに、出身の事業部の事情に詳しく、仕事の指導面や営業面でも助かっています。(藤本さん)」

 

「採用面接で「障害に対する配慮はしても遠慮はしない」と伝えています。そう伝えているからには現場のマネジメントも準じなくてはなりません。正しいことを正しいと言い、間違っていることを間違っていると言うのは愛だと思います。そこで遠慮していたら相手のためにならない。(岩間さん)」

 

優しさと厳しさのバランスは、障害の有無に関わらず、部下への関わりの中で大切なことではないでしょうか。そして、そこには、信頼関係がなければ成り立ちません。
 

「耳が痛いことを相手に言えるひとじゃなければ、この仕事は向いていないかもしれません。表面だけ優しいひとはダメ。「ダメなことはダメ」だと言える姿勢が必要です。(藤本さん)」

 

「自分の任されている仕事に一生懸命だといいですよね。仕事を楽しめているかどうかも大事。その姿勢って相手に伝わるんですよね。そこから信頼関係は始まると思います。(岩間さん)」

 

マイナビパートナーズ
 

応募者の特徴に合わせたマネジメントの工夫

 

先日の記事でも、特例子会社化によって応募してくる求職者の層が変わったという話がありました。応募者の特徴に合わせ、採用後の関わり方を工夫することは、当然の結果と言えるかもしれません。
 

「応募してくる方たちの特徴として、これまでの職場で失敗経験があることが挙げられるかもしれません。それこそ、ここまで3社で働いてきたならば、その3社で失敗続きだったとか。また、初めて障害を開示して働くケース、仕事場にいいイメージをもっていないケースなども挙げられます。(藤本さん)」

 

「障害がある方の中には、先々の生活を考えることができないということも多いんです。将来が見えないというか。3年先、5年先を見据えて一歩踏み出そうとする中で、当社を選んでくれることは嬉しいです。だから、じっくりと関わって、手塩にかけて育てていかなくてはならない。ともに働く中で、成長や変化に気づいたときに、この仕事のやりがいを実感できます。(岩間さん)」

 

障害者雇用における中途入社の方の特徴のひとつとして「失敗経験の多さ」が挙げられることは、なかなか気づきにくいかもしれません。
 

失敗経験が多くなると職場での所在なさが募る、自己肯定感が下がるといった状態が生まれ、仕事への意欲や自信が失われることもあるはずです。そんな中、一歩を踏み出し、働き始めた方々のポジティブな変化を感じることができるのは、マネジメントの醍醐味と言えるでしょう。
 

「初めて面接をしたときと今で、話し方や声のトーンが違うなと感じられたときの嬉しさは、特例子会社ならではかもしれません。この間も、ある女性社員が結婚の報告をしてくれたんですが、「ここに来る前は、結婚なんてとても考えられなかった」と話していました。そういう一言も嬉しいですね。(藤本さん)」

 

マイナビパートナーズ
 

失敗を恐れない、マネジメント側のスタンス

 

「配慮はしても遠慮はしない」というマネジメント側のスタンスは頭で理解していても、なかなか実行に移すのが難しいと感じます。障害者雇用に取り組む企業の現場から「対人関係上のミスが恐い」という声を聞くことがあります。
 

「慣れですよ。究極のところ、相手が健常者だろうと障害者だろうと一緒だと思うんです。ひととして言わなくてはならないことは、言わないとダメ。そこを区別するのは当社のスタンスではありません。(岩間さん)」

 

「たしかに、こちらが言ったことをマイナスに受け止めてしまう方もいます。その結果、体調を崩されることもあるかもしれませんが、都度、こちらの意図を丁寧に説明をし、理解を促すほか無いと考えています。伝える側も受け取る側も共に成長していけばよいのだと思います。(藤本さん)」

 

働く一人ひとりの課題、それは障害が原因の課題もあれば、仕事の習熟度による課題もあるはずですが、それらを相手のペースに合わせて改善に導いていく。伴走スタイルのマネジメントが障害者雇用の重要なテーマなのかもしれません。
 

「ただ、それは実は課題にもつながっていて、それぞれマネジメントスタッフに依存している部分が大きいので、今後は仕組み化をしていかなくてはなりません。現場には負荷やストレスがかかっているはずです。(藤本さん)」

 

マイナビパートナーズ サイト

マイナビパートナーズ サイトのスクリーンショット


 

「これまでにない特例子会社をつくる」という意欲をもつマイナビパートナーズ社。この「これまでにない」という部分は、障害の有無に関わらず、部下に対して真っ当に接することが含まれているのかもしれません。「相手に障害がある、ただ、それだけ」と感じられるくらい、フラットな関わり方を実践しています。
 

「こちら側のマネジメントがうまくいかなければ、それは「ごめんね」だし、ミスをすることだってあります。それは互いに仕方がないことで。ただ、真っ当に、手を抜かずにいればいいと思うのです。私は「お天道様が見ている」、必ず報われるときが来ると思っています。(岩間さん)」

 

お二人の話を聞いていると、現在の障害者雇用の現場の観点からすれば、厳しさ寄りのメッセージが多いような印象を受けます。しかし、一般的なマネジメントの観点からすれば、真っ当なメッセージを投げかけているように感じます。この微妙な隔たりが、障害者雇用の特殊性や難しさにつながっているのかもしれません。
 

部下に対する想いは、優しい振る舞いによって伝わることもあれば、厳しい一言によって伝わることもあります。この使い分けが自然な会社ほど、障害者雇用はうまくいくのではないでしょうか。
 

障害者社員が障害者社員をマネジメントしていく時代にさしかかってきています。企業が大きくなり、組織化が進んでいった先に、マネジメントに対する考え方がどのように発展していくのか。また、取材してみたくなりました。
 

(インタビュー記事:前編)
「これまでにない特例子会社にする」という意欲 ー株式会社マイナビパートナーズ 藤本さん・岩間さんインタビュー
 

(今回の取材先)
株式会社 マイナビパートナーズ
東京都千代田区一ツ橋1-1-1 パレスサイドビル 9F
https://mpt.mynavi.jp/

ライター:森本しおり
 

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