「これまでにない特例子会社にする」という意欲 ー株式会社マイナビパートナーズ 藤本さん・岩間さんインタビュー

企業が障害者社員を雇用する際、社内の部署に一般社員と同様に障害者社員を配属する、社内の特定の部署に障害者社員を集約する、特例子会社を立ち上げて障害者社員を一括採用するなど、さまざまな手法が考えられます。
 

ただし、どの手法を採用したとしても、成功する企業もあれば、失敗してしまう企業もあります。
 

今回、取材した株式会社マイナビパートナーズは、株式会社マイナビの特例子会社。代表の藤本さん、障害者社員の雇用を束ねる岩間さんは、マイナビ社の社内に障害者社員を集めた部署(オフィスセンター)を立ち上げた後、特例子会社を設立しました。
 

特例子会社を立ち上げた背景、黒字化を進める経営スタンスなどを伺いつつ、お二人が考える「これまでにない特例子会社を作る」というビジョンについて探ってきました。
 

藤本さん、岩間さんの写真

マイナビパートナーズの藤本さん(右)岩間さん(左)


 

実は懐疑的だった特例子会社化

 

特例子会社とは、企業が障害者の雇用を進める上でつくる子会社のこと。株式会社マイナビの特例子会社として2016年9月に株式会社マイナビパートナーズが設立されました。
 

「当社の設立から3年くらい前の2013年のこと、法定雇用率が1.8%から2.0%に上がるタイミングがありました(現在は2.2%)。会社全体の従業員数が増える中で法定雇用率を達成するためには、障害者雇用を今まで以上に積極的に行っていく必要が生まれました。(藤本さん)」

 

「従来通りのやり方だけでは採用数が間に合わなくなり、2014年4月に障害者社員を積極的に採用していく部署のオフィスセンターを立ち上げました。その後、特例子会社を立ち上げたという流れで今に至っています。(岩間さん)」

 

オフィスセンターは会社内の事務作業を一箇所にまとめ、その仕事を障害者社員に任せていくという部署であり、「社内の特例子会社」という表現がしっくりくるかもしれません。障害者雇用を推し進める企業の中にも、同様の部署を立ち上げるケースはあります。
 

しかし、オフィスセンターを立ち上げた後に特例子会社化したのは、何故なのでしょうか。最初から特例子会社化しても良かったのではないかという印象を受けます。
 

「オフィスセンターの設立当初から、常に特例子会社化することを視野に入れて、メリット・デメリットなどを経営陣に伝えていました。ただ、当時は「特例子会社にする必要はない」と伝えていたんです。(藤本さん)」

 

「私も当初は同意見でした。その理由にはキャリアの作り方があります。当時、オフィスセンターで社員育成をした後、マイナビの各事業部で働けるように輩出していくという流れを模索していました。そういった流れのキャリアを作りたいなと思っていて。ただ、特例子会社を作ってしまうと別会社となってしまうので、その流れが断ち切られることを懸念していました。(岩間さん)」

 

特例子会社化に懐疑的だったお二人。それは、キャリアの作り方だけではなく、採用の点においても、その不安を感じていたようです。
 

「特例子会社は嫌だという求職者の方はいらっしゃいますし、その層を取りこぼす可能性を感じていました。採用する側としては応募者が多ければ多いほどありがたいので。(岩間さん)」

 

「元々、オフィスセンターで採用する方は、マイナビの各事業部で採用する方と、少し給与体系が違っていたんです。本当に「社内の特例子会社」のような存在でした。また、当時、応募してくる方には、大きい会社に入って安心したい、障害に配慮してほしいというふたつの共通点があって、そこにはすでに対応できていたので、わざわざ会社を立ち上げる必要性を感じていなかったんですよね。(藤本さん)」

 

マイナビパートナーズ 藤本さん

藤本さん


 

特例子会社のメリット・デメリット

 

マイナビパートナーズの設立後、特例子会社のメリット・デメリットを認識しながら、黒字経営が進められています。それは「子会社」というちょうど良い規模感だからこそ、組織づくりのPDCAを素早く回せていることが一因だと考えていらっしゃいます。
 

「正社員として障害者社員を雇用できるようになったことが大きいです。親会社だと給与体系も違い、いきなり正社員で雇用することへのハードルも高いため、まずは契約社員として雇用します。しかし、当社は、思い切って全員正社員での雇用です。応募者からすると正社員で働くことができ、障害への配慮も厚く受けられる職場です。(藤本さん)」

 

「私も結果的には特例子会社を作ってよかったと思っています。親会社にいたままだと、就業規則や給与体系も全体を見ながら変えていかなくてはいけないのですが、子会社化すれば、状況に合わせて、スピード感をもって変えることができる。現場を見ながら、彼らの働きやすさに対応しやすくなったことは、定着にもつながっていると思います。(岩間さん)」

 

特例子会社は、親会社から独立しているため、従業員数の規模からいえば、中小企業といえます。助成金の受けやすさなどを鑑みると、コスト面でのサポートも大きくなります。その反面、立ち上げ前にデメリットだと感じていた部分がより鮮明になったと感じている部分もあるようです。
 

「特例子会社ができたことで、グループ全体に「障害者は特例子会社で雇うもの」というイメージが染み付いてしまったかもしれません。全部一箇所に集めてしまうというのは、本来のあるべき姿ではありません。比率として、ある程度特例子会社に集まったとしても、キャリアの発展性や多様性を担保するために、親会社も含め、もっと活躍のフィールドが用意されている方がいいはずです。(藤本さん)」

 

「想定通り、応募してくる層が一定数変わったように感じます。安定志向というか、今までの応募者よりも配慮を必要とする方もいらっしゃいます。親会社でも障害者雇用は進めているわけなので、採用基準をどう設定するか、どこに違いを作るのかという問題はありますね。(岩間さん)」

 

働く障害者側も、障害の種類や程度は様々で、どのような仕事をしたいのか、どのようなスタンスで働いているのかも様々です。
 

障害者の勤め先は特例子会社だけではありません。どこで働くか、どこで受け入れるか、その最適解を見出すことが、障害者雇用における新しい課題と言えるかもしれません。
 

マイナビパートナーズ岩間さん

岩間さん


 

「これまでにない特例子会社にする」という意志

 

代表の藤本さんは「イチから会社を作ることが面白い」と特例子会社の経営の楽しさを語っています。そのうえで「これまでにない特例子会社を作りたい」というメッセージを掲げています。
 

「これまでにない特例子会社にチャレンジするための3つの方針があって、その1点目は常に黒字であること、2点目は親会社からだけでなく外から仕事を取ってくること、3点目は障害のある方を経営陣に迎えることです。この3つが揃うと、かなりレアな存在になれるんじゃないかなと思っています。1点目の黒字経営に関してはずっと達成していることなので、これからの残りの2点への取り組みですね。(藤本さん)」

 

「現状はグループ会社からの仕事の依頼がほとんど。もっと外からの仕事を取ってこなくてはなりません。新規事業の立ち上げも含め、考えていく必要があります。(岩間さん)」

 

特例子会社の売上と利益の拡大は簡単ではありません。それは多くの特例子会社が赤字経営から抜け出し切れていない実状にも反映されています。また、障害者社員の経営陣への抜擢も、外部からの登用ではなく、内部からの叩き上げを想定しているもので、非常に興味深い経営方針です。
 

「障害のある方のキャリアとしては、まずは5年以内に課長を目指してもらいたい。ゆくゆくは役員陣になってほしいですし、そのポジションに障害があるメンバーがいたら、働くメンバーの大半が障害者である組織であることを考えると、私とは違うことができると思うんです。そんな未来を妄想しています。(藤本さん)」

 

マイナビパートナーズ サイト

マイナビパートナーズ サイトのスクリーンショット


 

「これまでにない特例子会社にする」という言葉に代表されるように、働く障害者一人ひとりの働きやすさ、キャリアを考えながら、きっちりと黒字経営を果たしているバランス感覚に圧倒されました。
 

障害者雇用は福祉ではなく、ビジネスであるという観点。いろいろなスタンスの障害者雇用の現場があって然るべきですが、しっかりと方向性を打ち出すことは大切です。経営陣の言葉の後ろに、社員の皆さまの仕事への姿勢を垣間見ることもできました。
 

今回のインタビューでは「特例子会社の経営」に焦点を当てて、お話を伺いましたが、次回は「障害者のマネジメント」に関する、お二人の考え方について伺います。ご期待ください。
 

(インタビュー後編:2019年5月20日追加)
表面だけの優しさは要らない。配慮はしても遠慮はしない、障害者雇用の現場。 ー株式会社マイナビパートナーズ 藤本さん・岩間さんインタビュー
 

(今回の取材先)
株式会社 マイナビパートナーズ
東京都千代田区一ツ橋1-1-1 パレスサイドビル 9F
https://mpt.mynavi.jp/
 

ライター:森本しおり

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