職場の人間関係?仕事での成果?どちらで評価を高めるか。契約を打ち切られないための処世術。

ちょっと前、私が働く放課後等デイサービス(※18歳以下の障害のある子どもたちが放課後に通う学童のような場所)で、職員に対する面白い訓示がありました。
 

「職員にはだいたい3つのタイプがいて。1つ目のタイプは子どもを見るひと。2つ目のタイプは作業をするひと。3つ目のタイプは何もしないひと。3つ目の何もしないひとにだけはならないでください。」
 

笑いながら聞いていましたが「なるほど」と腑に落ちました。
 

と同時にこれって「ひとに好かれるタイプ」か「仕事で信頼されるタイプ」かどうかって話だよね、働いていく上で大事な視点だなあと考えさせられました。
 


 

私の職場には典型的な「かわいがられタイプ」のSさんと「何でも任せられるタイプ」のKさんがいます。
 

Sさんは20代前半の男性で、いつもニコニコ~っとしている、ゆるフワ系。どこに行ってもイジられるのが悩みだそうです。ピリピリした空気が苦手で、理不尽な怒られ方をしても、八つ当たりされても、強めにからかわれても、笑い飛ばしています。だから、イジられちゃうんだよ、と思いますが。
 

Sさんのエピソードの中で印象に残っているのは、長年勤めてくれたパートさんの送別会を開いたときのこと。
 

飲み会の途中、となりのひとに「ねぇねぇ!Sさん見て!」とこっそりと耳打ちをされました。Sさんはコクリ、コクリと船を漕ぎだして、眠っていました。「えっ?送別会で寝る?まだ19時なのに?」と私は驚きました。
 

噂している人たちは「でも、かわいい」とか「これで許されるのはSさんだからだよね」とか、しみじみと話していました。
 

たしかにその言葉通り、Sさんが小さいミスをしていても「もう!だらしないんだから~」とか文句を言いつつ、フォローをしています。しかも、心なしか文句を言う姿もうれしそうで、これこそ、かわいがられキャラの境地だなと感じます。
 

一方、Kさんは20代後半の男性で、背が高く、ガッチリとした体で、ちょっと見た目はコワモテ。でも、実際はとても繊細な気遣いのひと。ほとんど仕事のヌケモレもなく、Kさんに仕事を任せるときには安心感が伴います。
 

そんなKさんには必然的に仕事が集まります。いちいち気にしなくても「ちゃんとやってくれるだろう」と信頼できるからです。目立って褒められることがないのがもったいないのですが、自分の仕事の範囲をきっちり守るという当たり前を積み重ねているからこその裏返し。信頼感は積み重なっていきます。
 

仕事で結果を出そうとするから、周囲からは期待される。その期待に応えようとするから、いろいろな仕事が集まる。このサイクルは、職場の中でなくてはならない存在へと引き上げてくれます。仕事が集中しすぎる懸念はありますが。
 


 

どちらのタイプがいいのか、その順番をつけたいわけではありませんが、自分がどちらのタイプを目指しやすいかはハッキリさせておいたほうがいいように感じます。
 

Sさんのようなナチュラルにかわいがられるタイプは天性のもののような気がしますが、その場の雰囲気や、相手の感情を大切にし、同僚との関係性をよくすることを大切にする、いわば「つながり」を重視するタイプのひととは、一緒に働きやすいものです。
 

Kさんは気遣いのひとでもありますが、仕事を優先させ、期日や品質を守る、いわば「仕事の成果」を重視するタイプのひととは、一緒に働きたいものです。
 

「人とのつながり」を重視するのか、「仕事の成果」を重視するのか。もちろん、社風によっては人間関係を重視しないと居場所がなくなるところもありますし、成果を出さなければ居づらくなるところもあるので、一概に自分で決められるわけではないかもしれません。
 

しかし「自分が目指しやすいタイプ」を知り「自分の得意なパターン」を身につけておくと、職場内での居心地の良さが増し、自身の役割が明確になり、職場で必要な戦力となるはずです。
 

自分の性格によって合うタイプは異なるので、どちらに舵を切るべきかはある程度明確になりそうです。その方針を時と場合に応じてガラリと変えるのはよほど器用な人でないとむずかしいでしょう。
 

どちらがいいのかなと周囲をうかがい、決めかねているうちに、傍から見たら3つ目のタイプの「何もしないひと」になっていたりして・・・自分で決めたほうが断然早く、そして結果にもつながるはずです。
 

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この記事を書いた人

森本 しおり

1988年生まれ。「何事も一生懸命」なADHD当事者ライター。
幼い頃から周りになかなか溶け込めず、違和感を持ち続ける。何とか大学までは卒業できたものの、就職後1年でパニック障害を発症し、退職。障害福祉の仕事をしていた27歳のときに「大人の発達障害」当事者であることが判明。以降、少しずつ自分とうまく付き合うコツをつかんでいる。
自身の経験から「道に迷う人に、選択肢を提示するような記事を書きたい」とライター業務を始める。