おねがい・ありがとう・ごめんなさい。誰でも知ってる3つの言葉が生きづらさを和らげてくれる。

サポートを受けることが上手になれば、生きることが楽になる。
 

施設で働く私が、通所してくる障害のある子どもたちを見ながら感じたことです。上手い子は生きやすそうで、下手な子は生きづらそう。単純にそう見えます。ただ、これは障害児に限った話ではありません。
 

私自身も発達障害、うつ、家族との関係性など、誰かのサポートを受けたほうが良さそうな背景をいくつも抱えていますが、サポートを受けることに対して、抵抗感や劣等感、後ろめたさがあるから、ついつい強がってしまい、サポートを受けることがヘタクソに。生きづらそうという他者からの評価には、首を縦に振ります。
 

ちょっとだけでも上手く生きられるようにならないかな。そんな気持ちから、いろいろなひとに相談してみたところ、サポートを上手く受けるためには3つの言葉を気持ちよく使えるようになればいいと気づきました。自分自身に言い聞かせるためにも、ご紹介したいと思います。
 


 

1. 自分から「おねがい」と頼む。

 

自分が困っている、悩んでいるといったときに、黙ったままでいても相手はなかなか気づいてはくれません。仕事やプライベートで毎日顔を合わせている相手だとしても、察してほしいというほうが難儀な話です。
 

反対に、相手が何を望んでいるのかということもなかなか分かるようにはなりません。表情やしぐさ、行動の変化を頼りに探っているようなものであって、直感的なこと。声かけや手出しをしていいのかは迷いますし、放っておいてほしかったなんて言われたらお手上げです。
 

だからこそ、困っているときには素直に意思表示をするほうがお互いにとって気が楽になります。それも「おねがい」と声に出すことで相手も気づくのです。
 

「これを手伝って」「あれを取ってほしい」など具体的になればなるほど分かりやすく、相手を察する負担も減ります。表情やしぐさで伝える方もいますが、困っていることは分かっても、何を手伝えばいいかは分かりづらいものです。
 

この差は実は大きく、今までの私は後者だったなと感じます。困っているんだけどな、誰が気づいてくれないかなと、雰囲気だけで伝えようとしていました。相手がこちらのことを察し、何に困っているのか仮説立ててくれていたのかと思うと、負担をかけていたと反省します。
 

口では「大丈夫」と言い続けていても、全然大丈夫じゃないことだってあります。素直に「おねがい」と頼めるほうが、よっぽど生きやすく感じられます。
 

2. 笑顔で「ありがとう」を伝える。

 

「おねがい」に対して、相手が何かサポートしてくれたときには、笑顔で「ありがとう」と伝える。これだけで、相手との信頼関係が育まれますし、再び困ったときにもサポートしてくれるかもしれません。
 

私自身、なるべく好き嫌いでは動かないように心がけていますが、関わりやすい相手と関わりづらい相手というのはどうしても生まれてしまいます。笑顔で「ありがとう」と言ってもらえると次からも要望を叶えようとしますし、逆に反応が薄いと「必要なかったのかな」と不安に感じます。
 

この差もまた、今までの私は後者寄りでした。「ありがとう」と伝えていたと思ってはいるものの、笑顔ではなかったかもしれないし、伝えていても小さい声だったかもしれない。相手の心に徒労感を残していたのではないかと反省です。
 

施設に通所してくる子どもたちを見ていても、こちらのサポートを素直に喜んでくれる子どもは接していて嬉しく、楽しくなります。そして、目をキラキラさせながら「おもちゃをとってきて!」なんてお願いされると「しょうがないなあ」と取りに行ってしまいます。大人を使うのが上手いな、こうやって甘えればいいのかと、かえって学ばせてもらっています。
 


 

3. 負担をかけたら「ごめんなさい」と詫びる。

 

実際にサポートをしてもらったときは、多少なりとも相手に負担をかけているということです。立場や責任、仕事などを持ち出されて「やって当然」という態度をとられると、たしかにやるべきことかもしれませんが、あまりいい気持ちはしません。
 

前向きにサポートしてくれる相手もいれば、仕方なくサポートしてくれる相手もいます。どちらの場合でも、相手には負担をかけていることは事実ではあるので「ごめんなさい」という言葉で、自分と相手との間の気持ちに一区切りをつけることは大切です。
 

相手の負担を少なくしようと頑張ることもありますし、その頑張りが相手への思いやりにつながるのかもしれません。私自身はそういうタイプでした。ただ、その頑張りの結果、失敗が重なって、誰かのサポートが急務となった場合のほうがよっぽど負担が大きくなってしまいます。そんなときには「ごめんなさい」が関係性を続けていく上で必要な言葉になります。
 

もしかすると「すみません」という言葉のほうがしっくりくるかもしれません。「すみません、ありがとうございました」という言葉のセットは、単純なテクニック的な話ではなく、サポートを必要とする側にとって、上手に使っていきたい言葉たちです。
 

誰にとっても、サポートを受ける力は必要

 

仕事柄、自分がサポートをする側になって初めて、サポートは受ける側の協力や歩み寄り、指示の具体性があるからこそ成り立つのだと知りました。それは自分の考え方にも変化を及ぼし「困ったときでも、他人の手をわずらわせてはいけない」という考えから「どうやったら、快く手伝ってもらえるかな」に変わっていきました。
 

どんな状況であったとしても、サポートは当たり前に受けられるものではありません。上手に引き出すものです。サポートする側は、どうすればいいのかわからず迷いながら手を差し伸べます。そして、自分のしていることが正しいのか自信がないままに進めているのです。
 

「おねがい」「ありがとう」「ごめんなさい」という3つの言葉を気持ちよく使えるようになることが、サポートを快く受けるための近道です。
 

振り返ってみると、これは小学校で習うようなこと。子どもの頃は簡単にできていたり、やらなければ叱られていたりしていたことが、いつの間にかできなくなっていたんだなと心に響いています。
 

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この記事を書いた人

森本 しおり

1988年生まれ。「何事も一生懸命」なADHD当事者ライター。
幼い頃から周りになかなか溶け込めず、違和感を持ち続ける。何とか大学までは卒業できたものの、就職後1年でパニック障害を発症し、退職。障害福祉の仕事をしていた27歳のときに「大人の発達障害」当事者であることが判明。以降、少しずつ自分とうまく付き合うコツをつかんでいる。
自身の経験から「道に迷う人に、選択肢を提示するような記事を書きたい」とライター業務を始める。