思いがけない妊娠が生み出す4つの生きづらさ -Plus-handicap Session #10 レポート-

思いがけない妊娠に悩み、戸惑う方々を支援している「にんしんSOS東京」の代表中島かおりさんをお招きしたイベント「Plus-handicap Session #10 初めて考える?改めて考える?男性視点からも考える妊娠のこと」が1月に開催されました。妊娠は男性も関わるものであるのに、意外と妊娠に関する情報や知識を男性は知りません。
 

Plus-handicapの編集長に「男性保健や性に関する問題を扱っている柳田さんに来てもらわないと困る」と半ば強引に誘われたイベントでしたが、妊娠の中でもトラブルが起こりやすい「思いがけない妊娠」がどのような生きづらさを作り出してしまうものなのか、自分自身の知識を整理する良い時間となりました。
 

自分自身の知識を棚卸ししながら、イベントレポートも兼ねてまとめてみたいと思います。1月のイベントのレポートが4月になってごめんなさい。
 


 

その1 学生が妊娠したら、中退に!?

 

そんなルールがあるわけではありませんが「妊娠→中退」という方向に持って行かれる事例は少なくありません。
 

もちろん、学校によっても先生によっても様々ですので、生徒に寄り添ってくれる先生や一定の理解を持って接してくださる先生もいらっしゃいます。ただ、事が起こったことに慌ててしまい、適切な対応ができないケースを割と聞きます。
 

少し前に報道に出たケースでは、中退まで行かずとも、本人(高校3年生)や保護者の意向に反し、一方的に休学届の提出を学校が迫った事例もありました。なぜ本人の意向が受け入れられないのでしょうか?また、相手側の男性はどうなっているのでしょうか?
 


 

●事実上、次の進学段階を諦めなければいけないことになっている
 

子育てをしながら、学校に通っている高校生の話を聞いたことがあるでしょうか?ほとんど無いと思います。そんな子、ほぼいませんから。
 

中学生が妊娠すれば高校を諦め、高校生が妊娠すれば大学を諦め、大学生が妊娠すれば中退、といった具合に、そんなルールがあるわけでもないのに、事実上、学業や進学を諦めざるを得ないのが現実です。私の周りに中退していない子がいるよという場合もあるかもしれませんが、それはごくごく少数派です。
 

子育てしながら働いている女性は、かつてよりもかなり増えています。大変な思いをしながらも両立されている方がたくさんいらっしゃいます。仕事は子育てと両立できるように環境が整えられようとしているのに、学業は子育てと両立できる環境(というより世間の理解)がないのは、個人的に首を傾げたくなります。
 

●結局、少子化(少なくなる方)に貢献している
 

少子化という現象自体の是非の議論は置いておくとして。年間の出生数はおよそ98万件。一方、年間の中絶件数はおよそ18万件。私は少子化対策という言葉は好きではありませんが、妊娠したら多少困難があったとしても生んで育てられる環境(社会全体での理解や受容という無形のものも含めて)を作っていくことは大事だと思います。予期していなかったとしても妊娠が起こったのです。少子化対策とかいうなら、これはめでたいことだと認識してもいいのではないでしょうか。
 

●男性がフォーカスされない
 

中高生の女性が妊娠した場合、上述の通り、女性は休学や退学、次の進学段階を諦めざるを得ないという状況に追い込まれます。しかし、相手の男性は卒業も進学もできたりします。妊娠は女性だけでは起こらないにも関わらず、起こった後の境遇には明快な男女差が存在しているのです。
 


 

その2 予期しないタイミングの妊娠が虐待のリスクファクターに!?

 

乳幼児虐待のニュースを時折目にします。虐待死ともなれば、命が奪われてしまったという悲しい事実に違いありません。虐待死を招いた保護者に非難と制裁が集中するのは分かりますが、実は虐待に関するニュースの中には「親が虐待をして、子どもが命を落とした」という文字だけでは見えてこない別の側面がある場合もあるのです。
 

乳幼児虐待のリスク原因として挙げられるものがいくつかあります。
 

パートナーがいない(あるいは協力が期待できない)環境での出産育児。望んでいないタイミングでの妊娠。そして、10代での妊娠などです。こういった状況にある全員が虐待の加害者になると言っているわけではありませんが、虐待事例をつぶさに見ていくと、これらの状況がいくつか重なると、虐待が起きる可能性が高まることは指摘されています。
 

産後の女性は、出産時の身体的な傷を治している時期であり、また、ホルモン量の変化による精神的な不調(マタニティブルー)が現れる時期で心身ともに負荷がかかっている時期です。そのうえ、子どもからは目を離せない、家事も育児も自分でやらないといけない(パートナーがいたとしても)、仕事が忙しいと遅い時間まで帰宅できず孤立しがち、という状況にあります。
 


 

生まれたばかりのわが子がずっと泣き続けている。でも理由が分からない。どうしたらいいのかも分からない。わが子はかわいいけれど、心身ともにフラフラな状況で慣れない育児に奮闘しています。そのとき「パパ助けて!」とパートナーに助けを求められる環境であれば、助け合うことで変わることがあるかもしれません。
 

しかし、そういったヘルプが期待できず、独りで育てなきゃいけない環境で、思いがけない妊娠で生まれたわが子が泣き止まないのを見て「あんたなんか生まれて来なければよかったのに」と思ってしまったら?
 

泣き続けるわが子に1週間付き合うことができたけれど、眠れもせず夜中も何回も授乳し続けた朦朧とする意識の中で、8日目に手を挙げてしまったとしたら?
 

僕らはその女性のことを責められるでしょうか?誰が被害者で誰が加害者かということをいうつもりはありません。ただ考えておかないといけないのは、母親独りでの育児はめっちゃしんどいということです。
 

その3 結婚している夫婦でもありえる思いがけない妊娠

 

今までとは多少毛色の違う話ですが、双方に生殖能力が備わっている男女がセックスをすれば、年齢が多少高かったとしても妊娠の可能性はあります。子どもが産まれてくることはおめでたいことでもありますが、同時にお金がかかるという現実も生まれます。子どもひとり育てるのに何千万もかかる。これも生きづらさのひとつとも言えるかもしれません。
 

出産を経験し、もう子どもはいいかなあというライフステージに来たら、避妊の選択肢は広がります。ぜひ、産婦人科で相談してみてください。
 


 

その4 妊娠・中絶の記憶は一生残る

 

妊娠や中絶を経験した女性は、医療機関にかかるときの問診の中で、妊娠歴や中絶歴を聞かれた時にYESと答えることになります。中絶を選ぶこと自体のダメージは計り知れないものがありますが、そのダメージは一生ついて回り、折に触れて強制的に思い出させられることになるわけです。
 

例えば、10代のときに男性が妊娠・中絶させてしまった女性が、初めての結婚・初めての出産の時に、病院で過去の妊娠・中絶歴にYESと答えざるを得ない。それは、あまりにもつらくて残酷なことなんじゃないでしょうか?
 

さいごに

 

思いがけない妊娠は女性だけの問題ではありません。また、妊娠に関する知識や情報は男性も同様に有していたほうがいいことだと僕は思います。
 

女性のことを女性も男性も学ぶ、男性のことを男性も女性も学ぶ、といった具合に、自分のことも相手のこともきちんと向き合って知っていく必要があると思います。そのための機会を作って適切に情報を発信していくことがもっと充実する必要があると思うのです。情報発信の活動をしている者として身の引き締まる思いがしました。この手の話題は時にいやらしいもののように扱われることがありますが、本質は健康の話と人間関係・コミュニケーションの話です。本質をしっかりと中心に据えて、これからも発信を続けたいと思います。

 

(Plus-handicapライター 柳田正芳)

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